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大きな鳳凰に会いに・・・

2018.10.01 08:13

 皆様いかがお過ごしでしょうか、今年の夏はキツかったですね。こんなに台風が多いのも初めてですが、急に秋めいてきました。こんな時こそ体調の管理にご要心くださいね。


 葛飾北斎、蔵元、風情ある街並みと栗。そして地域の方の通常の生活感。小布施には穏やかな時間が流れておりました。

 長野県小布施町へは6年前に友人の見舞いで訪れたのですが、街を見る時間もなくそのまま帰りました。「いつかまた来たいな」っと、ゆっくり訪れたい場所でした。

 長野鉄道長野駅から地下鉄に乗ります。小布施まで特急で25分。いくつかの駅をすぎると地上に出て、風景も田畑などが見えて心が落ち着く眺めとなり、これから巡る街にワクワクいたします。

 小布施駅に到着して、趣のある少しクラシカルなホームを降りると、雄大な山々が見えます。「わー、すごい!山が大きくてキレイだな」。と、雪がかぶる美しい山並みに感動します。

 小布施駅は長野電鉄沿線の中でも景色が良いことで有名だそうで飯綱山、戸隠山、黒姫山、斑尾山妙高山の北信五岳の、山並みが出迎えてくれます。いずれもスキー場で耳にした事がありますね。

 駅舎を出ると、駅前は特に観光化されておらず、普段の生活の為にある駅と言う雰囲気で、落ち着いています。なぜだか、どこか懐かしい・・・。

 父方母方とも、祖父母の家が浦和だった私ですが「田舎のおばあちゃんの家に来るのって、こんな感じなのかなぁ?」そんな気分を味わえました。

 駅の案内所でレンタル自転車を借ります。りんごやぶどう畑、小布施と言えば有名な栗の畑が広がり、ちょうど栗の花の時季。間近で栗の花を見るのは初めてで、「こんな長い花から何で丸い毬栗になるのだろう?」と、そんな事を考えながら走ると、初夏の風が心地よく流れています。果実畑の間に民家が現れますが塀のないお家が多く、青々とした生垣や、石で組まれた垣にはキレイな草花が植えられ、観光で行った人たちを楽しませてくれているようです。

 大きな道路を渡って更に進むと、ぶどう畑に突如、福島正則公霊廟と言う石碑が建っています。「福島正則?確か中国地方の武将だよな?なんで小布施?」と気になりましたが、「まっ、時間があったら回ろう」と思っていました。

 のどかな道を進み、いよいよ葛飾北斎の大鳳凰画がある岩松院へ。すると参道に福島正則霊廟と書かれた小布施町教育委員会の看板が建っていました。このお寺が福島正則と関係があったのですね。

 漫画チックで可愛い仁王様がいらっしゃる仁王門をくぐり石段を上ると、本堂の大きな屋根が現れます。早速、本堂内へ。静かな境内とはうって変わり、けっこうな観光客でいっぱいです。

 本堂の中央の天井に大きな鳳凰の絵が現れます。「すごい鳳凰だな!」と、 畳分あると言う絵は迫力があり、八方睨みの鳳凰と言うそうで、どの角度から見ても鳳凰と目が合うように描かれているそうです。典雅でいつまでも見ていたくなりました。あまりの美しさに写真を撮りたくなりますが、もちろん堂内撮影禁止です。その代わりに大鳳凰図を織った美しい朱印帳を授与して頂きました。

 北斎は83歳から小布施に4度訪れたそうで、4度目の滞在に約1年をかけて天井に大鳳凰図を描きました。

 朱や藍など顔料を膠水で溶いた絵具で彩色されており、この絵が描かれてから、約160年以上経っていますが、塗り替えは1度も行ってないそうです。ですがその鮮やかさがとても印象的でした。

 この大鳳凰図は北斎が88歳から89歳にかけての作品だそうで、翌年江戸に戻り90歳で亡くなります。

 本堂を出て案内板に従い、福島正則の霊廟へ。自然石を積み上げた石段は、高さもまちまちで、手すりを使わないと、少し恐いくらいです。

 霊廟に参り後ろを向くと、山々の稜線が重なり、その手前に街が広がります。寺の大きな屋根とその高さを越える檜などが、里の景色を作っているようで「あー、いいな」と、ボーッと見とれました。

 今度は本堂の裏の池に向かいます。このお寺は小林一茶も縁があり、あの有名な俳句「やせ蛙 負けるな一茶 是にあり」を詠んだ池です。

 山肌に岩を配し、躑躅等が植えられ、その質素さに「禅宗のお寺らしい池だな」と思いました。鏡のような水面から、黄色く可愛いらしい河骨の花が咲いています。

 春になると、この池にアズマヒキガエルと言うカエルがが産卵に集まり、メスが少ないために奪い合いとなり、合戦となるそうです。蛙たちは3~5年で、またこの池に戻って来るので、「必ずかえる福蛙」とも呼ばれているそうです。

「この小さな池で詠んだんだ」と、この日にここに来るまで、知りませんでした。まるで有名人にでも会ったような気分で、とても感動いたしました。

 岩松院を出て、サイクリング再開。畑には花々が植えられ、小林一茶に因んだと思われる、多くの方が詠まれた句碑が建っています。その風景に渡る風が心地よく、爽快です。山の麓をすすみ、街にでますが、次回書かせていただきます。


※このニュースレターは2018年10月1日号です。