「TODDLECREEK POST OFFICE」URI SHULEVITZ
ユリ・シュルヴィッツは「よあけ」や「ゆき」などが日本では親しまれているでしょうか。
シュルヴィッツは1935年ポーランドのワルシャワ生まれ、と聞けばその人生の過酷さをすぐに想像してしまいます。
戦火の中、少年期は各地を転々とし、その後イスラエルへ定住したのちアメリカへと渡り、絵本作家としての活動を始めました。
1969年には「空とぶ船と世界一のばか」でコルデコット賞を受賞するなど、長年にわたり多くの作品を出版し80歳になった現在でも未だ現役で、2013年には「ゆうぐれ(日本での出版は2014)」を、2015年には「TROTO and the TRUCKS(未邦訳)」を出版しています。
こちらの作品「TODDLECREEK POST OFFICE」は1990年の作品ですね。
シュルヴィッツの作品というと、光の表現の素晴らしさを思い浮かべる方も多いと思いますが、この作品でも太陽の光の美しさを思う存分に味わえる作品です。
トドルクリークという小さな町に、小さな郵便局がありました。そこにはいつも人が集まり、人々の交流の場にもなっていました。しかしある日、郵便局の検査官がやって来て、小さなこの郵便局は閉鎖することに、、、。
一日の始まりを幸福感に満ちた太陽の光で描き、そしてそれは段々と昼の光に変わっていきます。お話が寂しい展開になるにつれて、徐々に光は夕暮れから夜の光、やがて街灯の光へと変わっていくのです。その光の中に人々の生活があり、人々の往来と去就があります。
陽の光とともに一日が始まり、一日が終わっていくことと、この小さな町の緩やかな栄枯盛衰の感触をシュルヴィッツは見事に同期させ描いています。
美しい夕焼けを見たあとのように、いつまでもそのどこか寂しい余韻が残る絵本です。
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