私のシベリウス①序章
明けましておめでとうございます。
色々思うところの多い年明けでしたが、今の自分が出来ることを精一杯やっていこうと考えております。
今年もよろしくお願いいたします。
さて、私が2018年以来通い、応援している福岡・直方谷尾美術館室内楽定期演奏会。
その魅力(注1)に惹かれ、いつの間にか応援HPの運営や会報誌の編集長を始めとした運営のお手伝いをしているこの会。先にも書きましたとおり、中津川に異動後もどうしても離れられず、その状態を継続してしまいました。
そして本題に入りますが、この2月の定期演奏会でシベリウスの弦楽四重奏曲「内なる声」が演奏されることから、その会報誌2024年1月号に下記のような文面を掲載いたしました。
#知っておこう ~ シベリウスについて by シベリウス愛40数年の編集長
当夜のトリを飾る北欧・フィンランドの作曲家シベリウスの一般的な認知度は、交響詩「フィンランディア」(注2)を書いた人?よくクラシックを聴かれる方でも、ヴァイオリン協奏曲(注3)とか、交響曲第2番(注4)は聴いたことがあるかな?程度のもの。
「ベートーヴェン以降、最大の交響曲作曲家(注5)」とも称される作曲家なのに、何故?
同時代の著名な作曲家(注6)は、5歳上のマーラー(注7)と1歳上のリヒャルト・シュトラウス(注8)。共にウィーンで活躍した名指揮者で、その作品は伝えたいことがすぐにわかり、明快な響きで聴き映えの良さも抜群。
一方、シベリウスは「大自然を感じさせる楽想、精霊の舞いのような透明で繊細な音楽」と言われたりしますが、交響曲第4番以降の曲は一聴しただけではピンとこないことが多いのも事実。
でも、評論家 吉田秀和さんの名言「ブルックナーは特別な作曲家。どの作曲家もみんな違うけど、それでもブルックナーは特別」は、シベリウスにも当てはまる言葉(注9)。
その数々の作品が一生お付き合いが出来る逸品揃いであることは保証いたします。詳細はHPにて。
ということで、最後の「HPにて」のリンク先がこの頁となりますが、シリーズ「私のシベリウス」と題して、詳細を下記リンク先に掲載していきますので、よろしくお願いいたします。
【私のシベリウス】
① 序章:本頁
② ようこそ!ここ~シベリウスの世界~へ
- 1.本文:こちら
- 2.聴くコツと作品分類:こちら
- 3.おススメの曲:こちら
(a)(大音量で聴く必要のない)親しみやすい魅力持ったシベリウス
(b) 一度ハマったら抜けられないファンタジーの世界へ誘うシベリウス
(c) ハマる人はハマるかも?の尖った魅力のシベリウス
- 4.おススメの曲おかわり+α:こちら
(a)こんな作品もいかが?ハマる人もいるかも?のシベリウス
(b)シベリウスの交響曲、世界共通No.1
(c)聴き比べ:交響詩「タピオラ」
(d)+α:語るシベリウス、作曲家、指揮者
③ シベリウスの「年表(参考資料一覧も掲載)」:こちら
④ 余談ですが、「私がシベリウスにハマったキッカケ」について:こちら
尚、会報誌に書いた文章の詳細については、下記(注2)~(注9)をご覧くださいませ。
(注1)直方谷尾美術館室内楽定期演奏会の魅力、それは演奏会の質の高さ。
ただそれは、単に演奏そのもののレベルが高いだけではなく(とは言え、日本を代表するクァルテット・エクセルシオを始めとした選りすぐりの演奏者が凝りに凝ったプログラムを披露するので、これだけでも凄いことですが)、直方谷尾美術館の豊かな響き、時期毎に変わる展示品に囲まれる中、100人強の観客と演奏家との距離が極めて近く、演奏者の息遣いや緊張感がダイレクトに伝わるというホールでは味わえない醍醐味、素晴らしい演奏の後に生まれる一瞬の間、それがホッと緩んだ後、沸き起こる温かい拍手、更にはそんなお客さん達が演奏会場の設営を自主的にお手伝いされている姿やボランティアの方々が運営に携わられている姿、パンフレットも全て含めた総合的なもの。
一度お越しになられれば、すぐにわかることですが、なかなか文章で伝えるのは難しい。。。ちなみに、下記が私が運営している応援HPです。少しはその雰囲気を感じていただければ、幸いです。
(注2)交響詩《フィンランディア》は、映画「ダイ・ハード2」でも効果的に使われた明るく力強い未来を予見させる音楽。それもそのはず、故国フィンランドが帝政ロシアからの独立運動で盛り上がる最中に書かれた愛国心を呼び起こすような曲。と言っても、ピンと来ない方はピンと来ないと思います。一聴瞭然、下記youtubeをどうぞ。(映画「ダイ・ハード2」で使われたのは、3分20秒辺りから)
また、これは合唱付きの版ですが、昨年私が追いかけた山田和樹さん※の指揮、東急ジルベスターコンサートでの劇的な演奏ですので、併せてどうぞ。
※山田和樹さんと言えば、この本はとても面白いので、併せてご紹介まで。
(注3)ヴァイオリン協奏曲と言えば「ともかく甘ったるい曲が多い」と書くと、怒られるのでしょうか?でも、シベリウスのヴァイオリン協奏曲は甘過ぎず渋過ぎずといういい塩梅の名曲。これも一聴瞭然ですので、下記youtubeをどうぞ。
尚、この演奏のソロ・ヴァイオリニストは庄司紗矢香さん。まさにライヴならではの一期一会、実に感動的な演奏をラハフ・シャニさんが指揮したイスラエル・フィルと築き上げておられますので、是非お聴きくださいませ。
(注4)交響曲第2番はシベリウスの中で最も演奏されている交響曲だけあって、シベリウスらしさと伝統的なドイツ音楽の流れの中でわかりやすい名曲。それだけに、ドイツ風のどっしりがっしりした演奏も多く、昔ながらの趣も相俟って、それはそれで聴き応えもあるのですが、ここではシベリウスらしさを前面に出した現代的な演奏の一つの例として、エサ=ペッカ・サロネンさんの弱音を大切にした繊細で清冽な演奏を下記youtube※でどうぞ。
※このリンクは、曲の途中から始まりますので、申し訳ございませんが、少し巻き戻してからお聴きくださいませ。
(注5)シベリウスが「ベートーヴェン以降、最大の交響曲作曲家」と称されている?シューベルトは?ブラームスは?シューマン、メンデルスゾーンにドヴォルザークやチャイコフスキーだっているし、何よりブルックナー、マーラーを差し置いて、それは暴言だ!と思われた方も多いのではないでしょうか?
これは有名な英国のシベリウス研究家 セシル・グレイさんの言葉ですが、「その全ての交響曲が全く新しい作風への挑戦によって生まれた全然違う曲であり、そんなムチャなことをしたのはベートーヴェン以降、シベリウスしかいない」ということではないかと考えております。
(注6)シベリウスと同時代の「著名な」作曲家として、マーラーとリヒャルト・シュトラウスを挙げてみました※1が、「マーラーはともかく、リヒャルト・シュトラウスって一般的には有名ではないよ?」との指摘にショックを受けました。
でも言われてみれば、音楽評論家 片山杜秀さん※2がラジオで、「リヒャルト・シュトラウスは、映画『2001年宇宙の旅』で使われた冒頭の『ツァラトゥストラはかく語りき』で初めて一般的に認知された」ようなこともおっしゃっておられましたか。。。
※1 ここでは触れませんでしたが、3歳年上にドビュッシーもいるという凄い時代です。
※2 片山さんは知る人ぞ知る、日本の誇るべきクラシックおたく。その著書が下記本を始め、これまで考えもしなかった視点を教えていただけるので、実に面白い。
まずは、片山さんがパーソナリティを務めておられるNHK-FM「クラシックの迷宮(下記)」を是非一度お聴きくださいませ。ハマる人とハマらない人に完全に分かれると思いますが、あの熱い語り口調に私は完全にハマっています。
(注7)マーラーは、今でこそ一般的知名度も高い作曲家だと思いますが、よくよく考えてみれば、1971年に公開された映画「ベニスに死す」で交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」(下記)が使用されたことがそのキッカケ。
でも、その長過ぎる交響曲はレコードの時代には「1曲聴くだけでも大変」と不人気。ようやく長時間録音が可能なCD時代になってから、多く録音されるようになり、人気が出た作曲家。考えてみれば、「やがて私の時代が来る」という名言を残した方でもありました。詳細は下記でどうぞ。
(注8)リヒャルト・シュトラウスは、先に挙げた映画だけでは一般的に有名にはなれなかったかもしれませんが、上手いオーケストラ(以下「オケ」と表記)のコンサートに行けば聴ける可能性が高い作曲家の一人。曰く、アルプス登山から家庭での営みまで何でもオケで描写出来てしまうようなオーケストレーション(管弦楽法)の天才の一人で、例えば、輝かしく明快な交響詩「ドン・ファン(下記)」を最初に演奏すれば、それだけでそのオケの実力を誇示出来るから。
この作曲家の詳細は下記でどうぞ。
(注9)会報誌では行数の関係上、「評論家 吉田秀和さんの名言『~ブルックナーは特別』」とだけ書きましたが、『 』の部分に言葉を補足し、私なりに意訳するとこうなります。
「ブルックナーは一聴しただけでは全然わからないけど、それでもこの人と思う人にはブルックナーを何度も聴くことを薦める。何故なら、ブルックナーは特別な作曲家だから。どんな作曲家もみんな違うのは当たり前だけど、それでもブルックナーは特別な存在。ブルックナーほど人知を超えた普遍なもの=ブルックナーにとっては『神』の存在を感じさせてくれる作曲家はいないから」
ちなみに、ブルックナーの交響曲は長大で延々同じメロディーが繰り返されるのですが、その曲の中に入り込めると厳かな気持ちになり、まさにその「祈り」そのもののような気になります。尚、私は吉田さんのこの言葉に後押しされ、今では立派なブルックナー信者でもあります。
そしてそんな私が思うことは、これはシベリウスにも当てはまる言葉。
曰く「シベリウスは一聴しただけでは全然わからないけど、それでもこの人と思う人にはシベリウスを何度も聴くことを薦める。何故なら、シベリウスは特別な作曲家だから。どんな作曲家もみんな違うのは当たり前だけど、それでもシベリウスは特別な存在。シベリウスほど人知を超えた普遍なもの=シベリウスにとっては『英雄であり、神々であり、大自然そのもの』の存在を感じさせてくれる作曲家はいないから」となります。
ちなみに、ブルックナーとシベリウス(注10)を再生音源で聴く上での大切な共通点が一つあります。それは出来得る限り大音量~pppがちゃんと聴こえるように~で鳴らし、ともかくその響きに浸ることです。
シベリウスの音楽は一聴しただけではわかりにくく、ともかく耳馴染みが悪いですが、懲りずに何度も体感している内に、いつしかそれが掛けがえのないものになっているものと信じております。
(注10)【おまけ】ブルックナーとシベリウスを並べることに違和感を覚えた方へ
クラシック界では珍しく、ファンとアンチが多数存在した大指揮者と日本の大評論家と言えば、誰かわかりますね?そう、ヘルベルト・フォン・カラヤンさんと宇野功芳さんです。私は彼らのファンでもアンチでもありませんが、偶然にも、ブルックナーとシベリウスを並べて語っている記事がありましたので、ご参考まで。
それにしても逆に、選りによって彼らをこうして並べることになろうとは。。。実に興味深く、面白い。
カラヤンさん曰く「シベリウスはブルックナーと本質的なところで同じ感覚がある。シベリウスに魅力を感じる理由は、彼が他との比較を絶した独自の作曲家だから※」(15/11モーストリークラシック山崎浩太郎さんの記事から抜粋・意訳)
宇野さん曰く「ブルックナーの交響曲が演奏によって傷つきやすいことは誰でも知っているが、それに輪をかけたのがシベリウスで、濃厚、雄弁、壮大、力みなどが出れば、たちどころに音楽は崩壊してしまう」(95/3レコード芸術)
※更に全くの余談になりますが、上述したカラヤンさんの続く言葉も興味深いので、併せてどうぞ。
「シベリウスは地学で言う”迷い石”のように自在で気まま。あるべき場所を守り、それぞれに巨大で、違う時代を生きている。しかもどこからやってきたのか、誰も知らない。だから、どうのこうのと、いらぬ質問はしない方がいいし、結論も出ない」(15/11モーストリークラシック山崎浩太郎さんの記事から抜粋・意訳)
【私のシベリウス】
①序章:本頁
②ようこそ!ここ~シベリウスの世界~へ
- 1.本文:こちら
- 2.聴くコツと作品分類:こちら
- 3.おススメの曲:こちら
(a)(大音量で聴く必要のない)親しみやすい魅力持ったシベリウス
(b) 一度ハマったら抜けられないファンタジーの世界へ誘うシベリウス
(c) ハマる人はハマるかも?の尖った魅力のシベリウス
- 4.おススメの曲おかわり+α:こちら
(a)こんな作品もいかが?ハマる人もいるかも?のシベリウス
(b)シベリウスの交響曲、世界共通No.1
(c)聴き比べ:交響詩「タピオラ」
(d)+α:語るシベリウス、作曲家、指揮者
③年表(参考資料一覧も掲載):こちら
④私がハマったキッカケ:こちら