【コラム】第4節マッチレポート
残り40分のシナリオ。
トヨタヴェルブリッツは1月6日、リーグワン第4節で埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)と熊谷ラグビー場で対戦、前半を27-8とリードで折り返したが、後半に逆転され、27-43で敗戦。通算成績を2勝2敗とした。
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「前後半ではっきりとパフォーマンスが分かれた試合だった」(ベン・へリングHC)
リーグワン初代王者、トップリーグ優勝5回の埼玉WKとの一戦。チームののびしろと、課題が明確になった80分だった。
順光で風上の前半は完璧な試合運び。SOボーデン・バレットのキックでエリアを支配。FWが中盤でピック&ゴーを仕掛け、相手を接点で押し込んでから、外のスペースにボールを運ぶ。
最初のトライは開始3分。キックカウンターから、CTBシオサイア・フィフィタが抜け、LOトム・ロビンソンが力強く前進、最後はFBディック・ウィルソンからタッチライン際でボールをもらったWTBヴィリアメ・ツイドラキがインゴールへ。チーム全員の力とスピードが過不足なく融合したトライだった。
その後も、ツイドラキが2トライ、SHアーロン・スミスがトライを重ね、前半を27-8で折り返す。前半のゲインメーターはトヨタが315、埼玉WKが177。ミスタックルも相手が14でトヨタが6。この試合に向けて、十分な準備をしてきたことは数字にも表れていた。
だが後半は様相が一変する。埼玉WKは、前半苦しめられたキックに対処するためFBに野口竜司を投入。最後尾にキック処理に長けた選手が入ったことで、キックを起点に生まれていたトヨタのアタックが封じられ、逆にキックカウンターで勢いを取り戻される。
後半、最初に奪われたトライも、野口のキックキャッチから連続攻撃で攻め込まれ、エリアで後退した直後だった。
前半、トヨタが圧倒したブレイクダウンだったが、埼玉WKは防御も修正。
「前半はディフェンスのノミネートが遅かった。そこを早くしようと。そうするとサポートタックラーが明確になる。そこがいちばん大きかった」とHO坂手淳史主将。
トヨタは守備に回る時間が続く。12分、25分とトライを奪われ、27-29と逆転を許す。最終的に2トライを追加され、最終スコアは27-43。
後半は無得点に終わったが、5点さ差に迫られてから、25分に勝ち越しを許すまでの10分余りは、ゴールラインを背にした時間。18分、フェイズを重ねてHO堀江翔太がインゴールに飛び込んだ際も、WTBツイドラキとSOバレットが咄嗟に身体を差し込みグラウンディングを阻止。全員が身体を張ったディフェンスは次につながるものだ。
試合後、相手のFB野口は「バレットは最初のキック(3分)を僕がクリーンキャッチしたことで、次(10分)は蹴り方を変えてきた。そういうことを選べるのがすごい」と舌を巻いた。細部に高いレベルの攻防が詰まった80分だった。
後半の埼玉WKの強さはトヨタ側も熟知していた。姫野キャプテンも「相手は必ず立て直してくる。ハーフタイムには“前半40分は忘れて、もう一度パッション、エナジーで自分たちの土俵に引き込むんだ”と。伝えたメッセージとしては正しかった」と言いつつ、「自陣で攻めすぎて、こぼれ球を拾われた」と戦術面での課題を挙げた。
後半6分にピッチに入った埼玉WKの重鎮・HO堀江は言う。
「相手は、絶対うちに勝とうと、(事前の分析と)違うことをやってくる。そうなったとき、どう対処するか。自分ひとりで何とかするのではなく、チームとして動くことが大事」
前半40分のシナリオは完全に遂行できた。後半は相手の方が、より明確なシナリオを持っていた。戦い方として、見習うべきお手本だった。
姫野キャプテンは次回の対戦に向け、やるべきことを「一貫性を持ってやり続けること。波を作らず、やるべきことにフォーカスして、プロセスに集中し続ける」と言う。
「この悔しさを忘れずに一貫性を持ってやり続ける」
後半32分、自らのパスをインターセプトされトライを許したSHアーロン・スミスは「これもラグビー」と言いながらも、「後半、私自身パフォーマンスが落ちた。私個人がもっとレベルを上げないと」と、自らの研鑽を課題に挙げた。
「ポジティブな部分もあります。自分たちのラグビーを遂行できれば、どんな相手に対しても危険なアタックができると証明した。これからはチーム全体で強くなっていかないと」(スミス)
姫野キャプテンも「試合を通して、もっといいチームに仕上げられると感じた」とのびしろを体感する。
次は80分の明確なシナリオを描きあげて、ホストゲームで野武士を迎え撃つ。
① 前半14分、CTBシオサイア・フィフィタがインゴールにボールを持ち込んだが、TMOでその前にオフサイドがありノートライに
② 前節、初先発でPOMに選ばれた小池隆成はLOで先発
③ 今季初先発、3トライと気を吐いたWTBヴィリアメ・ツイドラキ
④ 様々なキックを使いわけ、世界最高峰の技術を見せたSOボーデン・バレット