オンライン読書会 シーズン6 第2回の報告と第3回の予告
こんにちは。
オンライン読書会 シーズン6『言葉とは何か』第2回(2023年12月21日@Google Meet)の報告をします。
メンターは、東京大学人文社会系研究科基礎文化専攻言語学研究室 博士課程の佐藤らな さんです。
今回読むのは、『言葉とは何か』(丸山圭三郎著、ちくま学芸文庫)の64ページ~72ページ。
参加者の中の希望者が交代で音読していきました。
まず、前回のおさらいです。
世界は海辺の砂地のようなもの、そこに言葉の網を広げ、区切っていく。
それぞれの言語社会で、区切り方が異なる。
そうやって、新しい区切り線が重なっていく。
今回はソシュールの用語として知られる「ランガージュ」「ラング」「パロール」について学びました。
「ランガージュ」 langage は、人間のもつ普遍的な言語能力。
「ラング」 langue は、個々の言語共同体で用いられている多種多様な国語体。
赤ちゃんは、ランガージュを持って生まれてくるので、日本語というラングで周囲が刺激を与えれば、日本語を話すようになります。
ここのポイントは、ソシュールより前の学者のように、各言語が民族固有の精神から成る、といったふうにロマンティックに考えず、各言語は各社会で作り上げられたもの、とドライに捉えていることです。
ベタな表現ですが、ラングは、だいたい文法と語彙、と考えてよさそうです。
さて、「パロール」 parole は、特定の話し手によって発せられた具体的音声の連続。
面白いのは、ラングとパロールが相互依存の関係にあることです。
私が今書いている言葉(パロール)をあなた(読み手)に理解してもらうためにはラング(文法と語彙)が必要ですが、ラングがラングであるためには、パロールが必要です。
文法というと永久不変のように思えますが、メンターの佐藤さんによると「使う人が増えるとそういう文法ができる」そうです。
佐藤さんは、日本語の形容動詞と名詞の連続性について研究しています。
例えば「天使すぎるアイドル」や「めっちゃ大阪」のように、名詞なのに程度性を持つ表現ってありますよね。
それらは、はじめは奇をてらった変な表現(パロール)だったかもしれませんが、使う人が増えてくると、それがやがて文法(ラング)となり、そういう表現(パロール)がさらに増えていく、ということかなと思います。
そういう表現を、年末年始で探しましょう、という宿題が出ました。
「マルティネと相互依存の話でラングとパロールの関係性がよく分かりました!面白かったです!ありがとうございましたm」
という感想が出ました。
最後に、メンターおすすめの本の紹介です。
『言葉の誕生を科学する』(小川 洋子・岡ノ谷 一夫著、河出文庫)
『ことばと思考』(今井 むつみ著、岩波新書)
『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』(ガイ・ドイッチャー著、椋田 直子訳、ハヤカワ文庫NF)
『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著、前田 まゆみ訳、創元社刊)
第3回(1月11日20:00-21:00)は、Ⅱ言葉とは何か 4言葉の構造(ちくま学芸文庫でp73-81)を読みます。
申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。
参加費は無料、事前に本を読んでおく必要はありませんので、お気軽にご参加ください。