【コラム】5節マッチレポート スコアレスの収穫
第5節マッチレポート
スコアレスの収穫。
トヨタヴェルブリッツは1月14日、花園ラグビー場で花園近鉄ライナーズ(花園L)と対戦し、47-14で勝利。通算成績を3勝2敗とし、第5節終了時点で5位につけている。
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前後半で7トライ、終わってみれば差は開いたが、収穫は得点のない時間帯にあった。
2日前に発表されたスタメンは開幕節からのSHアーロン・スミス、SOボーデン・バレットのニュージーランド代表コンビ。一方、花園LのSHウィル・ゲニア、SOクウェイド・クーパーのHB団はオーストラリア代表。合わせたキャップ数はトヨタの248に対し、花園Lは186。9番10番の「ブレディスローカップ対決」に期待が集まったが、試合当日、バレットの体調不良により、10番はティアーン・ファルコンに。開幕節で活躍したFB丸山凜太朗がケガから復帰、急きょリザーブ入りした。
幕開けはドラマティックだった。開始2分、敵陣10㍍付近でボールを持ったCTBシオサイア・フィフィタが相手防御を突き抜け、ショートキック。古巣相手に自ら抑え先制トライを決めた。
「ゲームプランがうまくはまった」とNO8姫野和樹キャプテン。トヨタはラインアウトを軸にゲームを組み立て、獲得率で上回って主導権を握る。その後も11分にCTBチャーリー・ローレンスがトライするなど、前半で4トライを奪い、28-14で折り返した。
花園Lは今季から、2003年のW杯で日本代表監督を務めた向井昭吾氏がヘッドコーチに就任。ディフェンスからチームの立て直しを図っている。今季未勝利も前述のHB団に加えてFL野中翔平キャプテン、LO村田毅ら、経験豊富なプレーヤーが今節初めて揃い、対策は練られていた。
「流れ的に、前半のスコアはあれくらいかなと。トヨタさんは後半、得点が少ないのでフィットネス勝負に持ち込もうと」(向井HC)
相手は残り40分に勝負を賭けてきた。後半、トヨタは何度か相手ゴール前に攻め込むも、ミスで自陣に戻されるなど我慢の時間が続く。花園Lもトヨタのミスから攻め込むが、自らの反則でフィニッシュまで持ち込めない。両チーム、無得点で時間は流れた。
22分、流れを一気に変えるプレーが生まれた。相手WTBに自陣深く攻め込まれたが、BKが戻って止めてCTBフィフィタボールに絡む。ペナルティを得るやいなやSH福田健太が速攻、FLピーターステフ・デュトイにボールを渡す。それまでも獅子奮迅の活躍だったデュトイは大きく抜け出すと右足で大きくキック。転がったボールをWTB髙橋汰地が拾い上げ、後半初めてのトライ。スコアを35-14と動かした。
「FW的には何フェイズも続いてしんどかったと思うけど、ああいうところで流れを変えることを心掛けていた。(速攻は)裏が空いていたので。僕はピーターがつかまってもオフロードでボールをもらえるコースにいた。そういう意味では、落ち着いてゲームコントロールができた」(福田健太)
福田は前半15分、アーロン・スミスの退場により急きょピッチへ。出場のタイミングは早まったが「試合に出るまで、近鉄のブレイクダウンの勢いを感じていたので、自分のやることは明確でした」
姫野和樹キャプテンも言う。
「ラグビーは全部がうまくいくスポーツじゃない。うまくいかないときに、どこまで我慢できるかが重要。今日は後半、チームとしてコネクションすることで、自分たちのペースに変えることができた。そこは良かったかなと」
スコアボードが動かない時間も、チームは地に足のついた戦いを続けていた。これからも同じような時間帯はやってくる。スコアレスの21分間がこの試合の収穫だろう。
これでカンファレンスBとの対戦はひと通り終了。バイウイークを挟んで交流戦が始まる。初戦は第5節終了時点で全勝の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)を、今季初の豊田スタジアムで迎え撃つ(1月27日)。
「フィジカルな試合になる。バイウイークでまずフィジカルを整える」(ベン・へリングHC)
「昔からトヨタとBL東京はフィジカルでやりあってきた。そこは自分たちの土俵でもある。心身ともにリラックスして迎えたい」(姫野和樹キャプテン)
前身のトップリーグ時代から、トヨタと東芝(現BL東京)は一歩も引かない肉弾戦を繰り広げてきた間柄。次戦は、優勝争いに踏みとどまるためにも大切な一戦となる。
花園ラグビー場の観客は9032人。パッセンジャーと呼ばれる花園Lファンの愛情のこもった声援は、大きな後押しとなっていた。今度はVOLTSが、豊田スタジアムで声援を送る番だ。
写真説明
① 開始2分、CTBシオサイア・フィフィタが先制トライ
② 今季初先発。安定したキックを見せたSOティアーン・ファルコン
③ 後半30分にトライも奪ったSH福田健太
④ 足技も使えるFW。FLピーターステフ・デュトイ