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A recollection with you

birthday

2024.01.19 15:00

自分で言うのは恥ずかしいけど、今日は私の誕生日。

気づいた、って言葉がぴったりの彼は、いますごく慌ててる。

平静装うくらいわけないはずなのに、こうまでされると笑っちゃうよ。


「おおっと」

「よーーし」

??

何がよーーしか分からないけれど、整ったみたい。


「詩歩。冷蔵庫、開けていいよ」

「はーい」


大きな白い箱。これだけ目立ってて気づかないと思ってる方がおかしいんだけど、

中身は本当に知らない。開けるワクワク感はある。

そーっとカウンターに置く。ゆっくり開けてみると、大好きなザッハトルテだった。


「ハッピーバースデー」

さっきまでの慌てた様子とは裏腹に、落ち着いた声で言う。

そして、とても優しい目でこちらを見てくる。


おもむろにお皿を用意し始めたので、私は飲み物の準備をする。

ココアをつくることにした。チョコにチョコって、なんてきっと言わないだろうし。


丸テーブルには、ザッハトルテとお皿とフォーク。

2人で席についてから、ケーキカットしていく。今日のザッハトルテはいつもと違った。

杏のジャムがクリームのように、ケーキの上に乗っている。見た目にもかわいい。

こういうささやかな特別感が好きなことを、彼は知っている。


一口。

チョコレートの苦味を追いかけるように、杏の甘酸っぱさが口に広がる。

きっと私は、幸せそうな顔をしてる。


「美味しい〜」

「良かった。作った甲斐あったよ」

「まあ、大きな箱でケーキのこと分かってましたけどね」

「いや、あれだけ堂々と置いといて、バレないは、流石にないって苦笑」

「えっ、じゃあ、慌てたふりだったんですか?」

「そうかもしれないよ〜」


ちょっと膨れてみる。ニヤッとしたけれど、お構いなし。

いつものこと、といえば、いつものことだ。


「それから、はい」

「ありがとうございます」


彼が差し出した小さな包みを丁寧に受け取る。

中身は、木製の櫛だった。どこか、アニメで見たような…

すぐには思い出せなかったけど、良い意味だった気がする。


「大事に使いますね。ありがとうございます」

「どういたしまして」


私、どんな顔してたんだろう。ちゃんと嬉しいの、伝わってたかな。

「ちゃんと分かってるよ」と彼が察したかのように言った。


ケーキの残りは今夜また食べることにして、冷蔵庫に入れた。