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金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

国際課税勉強会32(タックスヘイブン対策税制上の適用除外)

2024.01.20 07:14

国際課税一角塾に参加しました。月1回の開催ですがほぼ毎回出席していて、もう3年くらいにはなります。今日は静岡地裁H7.11.9判決(ヤオハン・ファイナンス事件)について報告を聞きました。

香港に持株子会社をもつ日本法人X社に対して、その持株子会社で生じた所得につきタックスヘイブン対策税制により国税が課税したところ、X社がその子会社は持株会社ではない(株式保有業でない)ので、適用除外であると主張して争ったもの。

本件では、この子会社の事業が株式保有業であれば課税が認められるが、そうでない場合は適用除外の可能性が出るという関係になります。主たる事業が何であるかを決めるにあたり、対象事業年度だけの収入内容に基づき判定するのか、それとも後続年度での事業内容の変化も加味するべきかが争点の一つでした。

裁判所は結局、端的に言えば、後続年度の事業内容は関係なく、対象年度の状況だけをみるべきで、その年度では配当収入と株式売却益がほとんどなので、この子会社は対象年度では株式保有業であったとして、適用除外は認められないとしてXの主張を退けました。

仮に後続年度では配当収入より利息収入が大きくなった(金融業になった)としても、対象年度で配当が大きい場合は、その年度は株式保有業とみて課税するという判断。その方が判定は簡単になって明瞭とはいえるにしても、株式保有目的以外の事情がある場合にもその単純な判断でよいのか、という問題を残した事件のようにみえます。