【山百チャレンジ35座目 櫛形山】甦れ紫の花園!復活のアヤメを訪ねて
こんにちは!山百チャレンジ担当の綾井です。
前回まで北岳/小太郎山を、前編後編の二回にわたって紹介。
その時は既に梅雨入りをしていましたが、雨の隙間を縫うように登山することができました。
そして山梨百名山チャレンジは高温多雨の7月に突入。
なかなか天気の影響で計画通りに山に行けず、悶々と時が過ぎ去っていきましたが
久しぶりに天気の回復と休みが合って、こちらの山へ行く事ができました。
櫛形山(くしがたやま)は、甲府盆地の西側に位置し
南アルプス市と富士川町にまたがる標高2,052mの山です。
名は体を表わす通り、和製の櫛を伏せたような形をしているので、この名前がつきました。
櫛形山はその山体が大きく、形も先ほど記載したように特徴がはっきりとしているので
山梨県内の山からよく見え、山座同定のしやすい存在感の大きな山です。
そして櫛形山の見どころといえば、頂稜部を中心に展開するカラマツやコメツガ、シラビソなどの原生林と
その豊かな原生林の森の中に花開く山野草です。
特に近年の保全活動に寄って、昔の姿を取り戻しつつある「アヤメ」は
櫛形山を代表するといっていい花でしょう。
かつては山全体で2800万本が自生し、東洋一といわれた櫛形山のアヤメは
シカなどの食害により、株数が極端に減少した歴史があります。
アヤメの見頃は7月中旬。
梅雨時期ではありますが、この花を見たくて7月の山行に組み込みました。
👆地図画像 南アルプスNETより引用
櫛形山山頂まではいくつかの登山ルートがありますが
今回は最短で登れる「池の茶屋登山口」から、櫛形山山頂を登り、更にアヤメ平まで足を延ばしました。
櫛形山は北から唐松岳、裸山、奥仙重など、ピークが3-4kmにも渡って連なり
これらを合わせて櫛形山と呼びます。
そして山頂標柱を一般に最高点とされる、奥仙重の北500mほどにあるピークに設置しています。
櫛形山は南アルプス前衛の山とはいえ、その標高では計り知れない
豊かな動植物、そして南アルプスの高峰を間近で望むことができる
展望にも優れた素晴らしい山です。
それでは登山レポ本編をご覧ください!
※本ブログでは地元有志で結成された
「櫛形山を愛する会」のホームページ掲載情報も参考にさせていただきました。
ホームページの内容がとても分かり易くまとめていて、近年の櫛形山の変容も
分かるような内容になっています。
櫛形山の詳細、そして櫛形山への愛がよく分かるホームページですので
行かれる方はこちらをご覧いただく事をお勧めします。👇
【登山レポ①】
池の茶屋林道登山口ー奥仙重ー櫛形山山頂
池の茶屋林道登山口にやってきました。
ここですでに1850mも標高があり、最短・最楽で登れる登山口になります。
何度か訪れている櫛形山ですが、実はこの場所から登るのは初めて。
何なら櫛形山の最高地点も今回が初訪問となります。
富士川町側から長い林道を運転して約一時間半、この長い運転が嫌で今まで来ていませんでしたが
今回は夏バテもあり、迷わずこのルートをセレクト。
山頂標柱のある最高点まで、コースタイムで約1時間。
サクッと登っていきましょう!💪
鹿除けの防護ネットを越えれば、カラマツの林の中に付けられた登山道を登ります。
櫛形山の原生林は主に、櫛形山山頂から裸山、そしてアヤメ平までの間に展開しているが
このルートは標高が高いため、出だしから亜高山帯の森林の中を歩きます。
山梨百名山の中低山では、どうしてもはじめは植林地が多くなりがちですが
池の茶屋登山ルート、初めから気持ちのいい森林浴登山ができます!🙌
歩き出して10分ほどで尾根に出ます。
ここが桜峠と呼ばれる場所で、ここから本格的な登りが始まりますよ。
富士山も📸
梅雨時期の不安定な天気ですが、まずは幸先のいいスタート。
また現れた防護ネットを越えて、防火帯の開けた九十九折の急登を登ります。
この登りを歩いていると、早速お目当ての花を見つけることができました😳
お目当てというのは、もちろんアヤメです。
桜峠周辺の最盛期は過ぎたのか、少し元気のないアヤメでしたが
それでも立派に咲く、美しい花姿を見れて嬉しかったです。
アヤメだけでなく、桜峠からの道中では
カワラナデシコやホタルブクロなど、多くの花が咲いていて
山頂までで一番つらい登りパートも、楽しく登ることができましたね!
九十九折の急登にまたもやゲートが出現し、そしてその先に展望地が出てきます。
南アルプス方面の大展望地でしたが、稜線は雲の中、、😇
晴れていれば、白峰三山や南アルプス南部のエリアまで見渡せるようです。
残念ではありますが今回は花見山行、気持ちを切り替えて進みます!
防火帯が終われば、アップダウンの少ない快適な森林を歩きます。
富士山側は雲が少なく、朝から素晴らしい眺望を維持してくれています。
しかし山梨百名山をこれだけ登って思うのは、山梨百名山の8割近くが富士見の山だなという事。
中低山によくある展望地、そのほとんどが富士山の方向に開けている場合が多いです。
花と展望を見てきましたが、櫛形山は原生の森に注目です。
圧倒的存在感のダケカンバの巨木、樹齢100年は優に超えているでしょう。
サルオガセの付くカラマツ林、原生林の雰囲気をより一層引き立てます。
池の茶屋からの最短ルートでも、櫛形山の見どころである
花と展望と森,それを存分に楽しむことができますね👍
三角点のある、奥仙重に到着です。
山頂標柱の有るピークはここから北に約500mほど、大したアップダウンもありません。
緩やかに下り、そして登った先に見えてきました。
櫛形山(2,052m)到着です!
あっけなかったけど、夏バテだったので助かりました(笑)
GPSログが失われてしまったので、正確な到着時間が分かりませんが
一時間もかからずに到着しました。
山梨百名山の山頂標柱があるこの場所は
残念ながら展望はありませんが、広いスペースがあるため
休憩には適している場所です。
とはいえ疲れるほど歩いておらず、せっかくなら裸山からの展望
そしてアヤメ平のアヤメをゆっくり観賞したかったので
先に進むこととしました。
【登山レポ②】
櫛形山山頂ー裸山ーアヤメ平ー池の茶屋登山口
山頂から10分ほど下れば、伊奈ヶ湖方面への分岐にあたります。
ここからの行程は、展望の素晴らしい裸山へ登り、そしてアヤメ平へ向かいます。
山頂と裸山の間も、サルオガセが垂れ下がっている神秘的な原生林が続きます。
原生林パートではほとんどのカラマツにサルオガセが着いていて、見る人によっては
不気味な印象を持つ方も少なくないでしょう。
昼でも少し薄暗く、苔むしたこの道に、登山者を見張るかの如くカラマツやダケカンバなどの巨木が並びます。
そんな異世界に入り込むような錯覚を覚えるこの森ですが、僕にとってはどの季節も美しい印象が残ります。
原生林を楽しんで歩いている間に、裸山が近づいてきました。
裸山までの間にいくつか分岐がありますが、道標があるので地図さえ持っていれば迷う事は無いでしょう。
明るく開けてくれば、間もなく裸山なんですが
この防護ネットの中には、またアヤメの群生が!😲
アヤメ平よりも近年は裸山周辺に、アヤメが多く群生しているそうです。
標高2000mを越えれば、もうあと僅か
裸山(2,003m)の山頂に到着です。
裸山は好展望のピークですが
残念ながら、今回はフラれましたね。
山頂から西に開けていて、白峰三山(北岳,間ノ岳,農鳥岳)の展望が素晴らしいんです。
👆写真は、数年前の秋に訪れた時の、裸山からの展望です。
梅雨時期は眺望を楽しむチャンスが少ないのですが、そんな時にアヤメが咲くんですよね😅
裸山でもアヤメ鑑賞を楽しみましたが、最後にアヤメ平まで行って
このアヤメ山行を締めくくります。
裸山から下って行けば、また防護ネットが現れます。
このネットの多さには驚かれる方も多いとは思いますが
自治体や地元の有志の会によって、年々ネット設置の箇所を広げており
着実にその効果が表れているようです。
アヤメ平に到着です。
ここには仮設トイレや避難小屋もあります。
「手折られし あやめの花の あわれさよ 君にも命の あるものを」
ここにはアヤメの花の保護を謡った歌碑があり
十数年前までの惨状を、悲しげに伝えています。
完全ではないにしろ、徐々に復活を遂げている紫の花園。
今の状況を克明に記憶するべく、アヤメ平でのアヤメ鑑賞を始めます。
見事、見事なアヤメの群生!
とても主観的な感想ですが、アヤメの凛々しい佇まいと上品な紫の色が
気品ある大人の女性の美しさを感じとりました。
すっかり貴方の虜です、、(笑)
アヤメ平は植生保護の為に木道が設置されており、その両脇がアヤメの群生地になっています。
いまやアヤメ平はアヤメだけでなく、季節に合わせて数多くの花が咲き誇ります。
グンナイフウロやカワラナデシコなどなど
食害から守られたこのお花畑には、アヤメ以外にも鮮やかな花が
春から秋にかけて登山者を迎えてくれます。
ひとしきりこのお花畑を楽しんで進みましたが
この道は主稜線を外れて、池の茶屋登山口まで戻るルートにもなっています。
どうせ南アルプス方面の展望が望めないのは分かっていたので
今回は同じ道を戻り、池の茶屋登山口に帰ることとしました。
やはり往路を辿るルートにしたのは正解でしたね、まだ甲府盆地側の景色も見ることができました。
帰り道ではまた花の保護活動の様子を見ることができました。
櫛形山を愛する会の皆さんは花だけでなく、原生林を守る活動も合わせて行っています。
山に行って、改めてブログを書くという事で調べてみれば
この会の皆様の貢献がほんとによく実感することができました。
初めて櫛形山を訪れた時は、原生林に力強く生き続けている巨木に目を奪われていました。
何度も訪れていると足もとのお花に目がいき、そしてその裏で活動する方たちの動きまで見えるようになりました。
山梨百名山チャレンジはあくまでピークハント、櫛形山一つ取ってもまだまだ見えていないことの方がたくさんあるでしょう。
僕ができる事なんて少ないかもしれませんが、少しでも理解し皆さんにお伝えできるようになるために
2024年も櫛形山へ向かい、次はお気に入りのルートで再訪しようと思います。
櫛形山 登山まとめ
【標準コースタイム(目安) 3時間50分】
池の茶屋登山口ー0:40ー奥仙重ー0:15ー櫛形山山頂ー0:40ー裸山ー0:25ーアヤメ平
アヤメ平ー1:00ー櫛形山山頂ー0:50ー池の茶屋登山口
※池の茶屋登山~櫛形山山頂ピストンの場合は 1時間45分
【アクセス(池の茶屋登山口)】
アプローチはマイカーかタクシーを利用のみ。
丸山林道に進入すれば、狭く、カーブの連続なので安全運転を。
最寄りの高速道路インターチェンジは、中部横断自動車道の「増穂IC」だが
ここから約1時間の道のり。
【アドバイス】
登山レポ本編の池の茶屋登山道は、櫛形山山頂へ至る最短のルート。
登山口には、登山シーズン中に限るが仮設トイレも設置されている。
ルート上に危険個所は無く、山頂までの往復なら体力に自信のない方でも
チャレンジしていただけるだろう。
北尾根登山道や中尾根登山道などを選べば、歩き応えのあるルートになる。
花や森も、各登山道でそれぞれ見どころがあるので、初めて訪れる方でも
ぜひチャレンジしていただきたいルート。