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いわぶち動物病院

1歳半で子宮癌になってしまったウサギ、10歳まで避妊手術をしなかったけど、それまで癌にならなかったウサギ

2024.01.23 11:44

うさちゃんは避妊手術を実施しなければ、かなり若くても子宮腺癌になる、ということを今までにも記載していますが、かなり特殊な例にかち合ったので、そちらを紹介したいと思います。



半年程前の話ですが、1歳半で元気が無く、食欲も無くなったうさちゃんが来院しました。


メスではありますが、年齢的に季節の変化によるストレスでの食欲不振をまず疑いました。


ですが、触診をした途端、下腹部と上腹部に二つ、大きな硬い物が触れました。


エコー検査をしてみると、両方共腫瘍。

状況から、子宮腺癌が大きくなって、さらに肝臓近くまで転移した瘤の2つの巨大な癌があることがわかりました。


1歳半なんて若さで転移も起こしている癌!?

正直、信じられませんでした。

今まで、大体2歳くらいまでは子宮癌になる心配はまず無い、と思い込んでいたためです。


お腹の中の瘤は体の大きさと比べてあまりにも大きいため、まともに動けないことから、切除しても治ることは無いことを承知で、減量手術と言って、少しでも体を楽にするための手術をすることにしました。


切除をした癌は、大きいだけでなく、小さく転移していて、接着剤の様に腸全体を背中(お腹の中側の背中です)に貼り付けていました。

腸は平べったく変型していたため、これではエサも食べられないだろうと思ったのを覚えています。


また、さらに驚くことがありました。

2つだけでなく、もう一つの瘤が横隔膜にくっついていたんです。

取ろうとすれば横隔膜が破れたり、胃の周りの血管が裂けたりすると思い、最後の瘤は切除を見合わせました。


減量手術で少しでも食べられる様にしてあげたかったのですが、そういう訳にもいきませんでした。

ですが、その後2ヶ月生きてくれたと飼い主さんが伝えに来てくれました。

状況からいって、お腹の中の大半を占める瘤が2つ無くなったので、食べることはできなくとも(胃腸が圧迫されてお腹が減らない)、少しでも楽になってくれたのだと思います。



一方で、避妊手術をせずに10歳と長生きしたうさちゃんの話です。

基本的に、避妊手術をしなかった雌ウサギの平均寿命は5歳ほど、実際ほとんどのうさちゃんが子宮腺癌で死亡します。


10歳で避妊手術をしてなくて、元気食欲が無くなったと聞いて、最初から怪しいな(子宮癌がありそう)、と思っていました。


実際に触診をしてみると、子宮の辺りだけではなく、上腹部の方にも固い瘤のような物が感じられ、エコーで検査をしてみると、やはり広範囲に腫瘍が転移していました。


腫瘍が出来てしまってかわいそう、と思うかもしれませんが、この子の場合、とても運が良いタイプに当たります。

避妊手術を行わなかった雌ウサギの場合、まず10歳まで生きていられることは無いからですし、

上記の様に、非常に稀ではありますが、2歳にもならずに子宮癌になってしまう子もいる訳です。


では、何故うさちゃんの場合、若い内に子宮腺癌になってしまうかというと、ウサギという動物が、人間以上にずっと発情し続けていることから、子宮にダメージを受け続けているために若齢で癌になるそうです。


結構有名な話で、ネットで検索すると、すぐにウサギの子宮癌のことが出てくるのですが、来院した際に知らない人も結構いて、すぐに手術をした方が良いことを伝えても、すでに癌が転移していたり、避妊手術をするのが可哀想、と言う方もいらっしゃいます。


実際にお腹中に子宮癌が転移した状態を見た場合、お腹がボコボコになり、餌も食べられない方が余程可哀想だと思います。

というか、避妊手術をしようと言われた段階でやっておけば良かったと後悔する人がほとんどです。


昔のうさちゃんの手術の場合、ウサギの気管は非常に狭く、気管チューブを入れることができない、ということが普通で、ほとんどの病院では専用マスクでの麻酔、酸素吸入を行っていましたが、現在ではウサギ用気管チューブ「V-gel」がありますので、危険性を大きく減らすことができています。

上が猫用、下がウサギ用になります。

ほとんど小さい子用しか使うことがありませんが、念の為4キロ用なども用意してあります。


以前までは2歳くらいまでには避妊手術をしておいた方が良い、と説明していましたが、上記の様な例もあることがわかったため、後悔してももう遅い、という事にならないよう、1歳(もう大人です)くらいに実施しておくと良いかと思います。