梅春の季節
梅春商品、という言葉をご存知でしょうか。
これはファッション業界で使われる専門用語で、12月末頃から2月頃の期間に店頭に並ぶファッション衣類のことです。私はこの「梅春」という言葉を、とても美しいと感じます。
年末から2月は、一年で最も寒い時期です。にも関わらず、年が明けるや否や暦は新「春」を告げます。体が感じる季節と暦の季節にほんの少しズレを感じる時期は、ファッションにも工夫が必要なわけです。真冬の暗い色合いは重すぎるけれど、まだ薄手の生地を着るには寒すぎる。そこで、梅春物の登場です。寒い冬と暖かい春をつなぐ装いなのです。素材は冬仕様ですが、色は春を表現します。寒さに耐えうる暖かい素材で作られているけれど、春を感じさせる明るい色合いなのです。
近年、インターネットでは一年中、春夏秋冬の衣類にお目に掛かれるし、簡単に購入が可能です。だから、随分機会は減ってしまったけれど(それに不平はないのだけれど)、実際にお店に出かけて行くことなしにファッションが創り出す季節感と空間を体感することは、本来はできないのではと私は思っています。
デパートやショッピングモールにて。落ち着いた黒、こっくりとした茶色で満ちていた衣類のコーナーが、年明けと共に春の訪れを知らせる、明るい白や軽やかなパステルの色合いであふれかえる瞬間!!季節が巡っている!と実感して、心から嬉しくなります。
希望を感じさせる春。
空と海と雲が躍動する夏。
黄金の実りをもたらす秋。
雪景色が静かに映える冬。
ファッションが表現してくれる季節がどれも大好きです。そして、四つの季節を繋ぐ梅春のような短い期間。季節の移り変わりをも繊細に表現するそれは、本当に素敵です。
当県は雪になると、今朝のお天気ニュースで聞きました。なんせ、今は一年中で一番凍える季節ですものね。が、同時にこの寒い寒い冬の中に、かすかに浮き立つ春の気配を感じます。そう、ファッションを通して!
今日はあったかいウール生地の、ふんわり明るい白のニットを着て、授業に出かけましょう。