ブレックファスト・イン・ア・カフェ
あなたには、朝ごはんを喫茶店で食べる習慣はありますか?
実は私は大人になるまで、喫茶店にモーニングという朝食があることと、そこで朝の食事をする人がいることを知りませんでした。朝食は家で食べるものだと思いこんでいたからです。
10年以上前、喫茶店文化を持つ、とある県出身の方と友人になり、彼女が「子供の頃から、朝食は家族で近所のカフェに食べに行くのが習慣だったの。」と教えてくれた時には、本当に驚きました。その県では珍しくないことだそうです。ところ変われば文化や習慣も変わるものなのですね。
ここ最近では、当県でもフランチャイズの有名なカフェや喫茶店が増えました。そばを通りかかると、モーニングをしながら(モーニングをする、という表現が正しいのか分かりませんが)勉強をしたり、読書をしている人たちが窓越しに見えます。
近頃では私自身も「朝活」と称して、仕事の合間を縫って、カフェのモーニングの時間に友人と会うことが度々あります。お互いにそれなりに多忙な生活を余儀なくされている人と、朝の時間にサクッとおしゃべりするのは、その日1日のちょっとしたエネルギーになります。
少し前ですが、とある喫茶店に初めて訪れました。そこは有名店でもなく、チェーン店でもなく、昔から開店されているローカルなお店です。自宅から車で数分の距離にありながら、これまでに横を通り過ぎるだけの場所でした。私が高校生の頃からその喫茶店の看板を知っていたのだけれど、お店の中に入ったことは一度もなかったのです。
からんからんと軽やかなベルの音がする扉を開けて入ると、照明がやや薄暗い、レトロな内装の店内は穏やかさに満ちていました。長く経営されていらっしゃるのでしょう、年配のご夫妻らしきおふたりがカウンターの向こう側に見えます。コポコポとコーヒーメーカーが作動する音。フライパンで何かを炒める音。壁には、柱時計と大きな木の板。板にはメニューが白いペンキで書きつけられています。
店内の1人がけのテーブル席が二つ埋まっていました。1人は、主婦風の女性。ちょっと朝ご飯を食べにきたよという風情です。もう1人はネクタイを少し緩めて新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる、初老の男性。
きっとどちらも常連さんなのでしょう。
懐かしい、というほど喫茶店の文化を知らないけれど、不思議に懐かしさを感じてしまいました。きっとここは、昔からずうっと変わらない、喧騒とか慌ただしさとかからは程遠い、ゆったりと時間が流れている空間なのでしょう。ちょっと別世界みたいです。
初めて訪れた私でも、常連さんに混じって、静かで穏やかな朝の時間を楽しむことができました。
喫茶店の文化、モーニングの習慣ってすごくいいなと、この頃では思っています。