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行雲流水

【未来童話】牢屋のこども

2024.01.24 17:40

ある晩のことでした。

こどもは細く明るく輝く月が不思議に感じ、その月を眺めに散歩に出かけました。

そして、ある道の地面が盛り上がっていることに気付きます。

何かが出てくると予感したこどもは、その場をじっと見ていました。

地面はやがて盛り上がり、崩れ、中から腕が生え、長い髪が出て、とうとう女の子が出てきました。

「ゾンビ!」

「違うわ! 人間よ」

「どこから来たの?」

「檻のある場所からよ」

ここのすぐ近くには確かに刑務所がありました。

「じゃあ、あなたは悪い人?」

「悪いことなんて一度もしたことない。でも、生まれてきたのは悪いことかもしれないわ」

「どうして?」

「だって牢屋の中で生まれたんだもの!」

子供はビックリしました。

「逃げ出してもいいの?」

「私が生まれたことは友達しか知らないから、いいのよ」

「友達?」

「私がここから出るのを手伝ってくれたのよ」

「その友達は、悪い人?」

「私にとっては良い人」

「ふーん」

「ねえ、私、外の世界は知らないの。道案内してくれる?」

「いーよ」

「ラッキー」

こどもの散歩のお供が増えました。

長い髪の女の子です。

こどもは、たまに走ったりしていろんな場所を女の子に教えました。

美味しいオムライスが出るお店、カレーが食べられるお店、ゲームができるお店、服を洗濯できるお店、一つ一つに女の子はおどろきました。

そして、未来にそのお店に行く自分を想像しました。

「行く当てはあるの?」

「ママの知り合いが近くまで来てるんだって。私その人を見つけなくちゃいけないの」

「ママがいるの?」

「そう、ママはまだ檻の中。しばらくしたら会いましょうって約束したの」

「よかった」

「あなたはママいるの?」

「うん。いま家で寝てるかも」

「あら、お揃いね」

ある程度の道案内をこどもから聞いた女の子は、ママの知り合いの待つ場所へ向かいました。こどももそれについていきます。

そろそろ散歩も終わりです。

子供は、少しの間つむがれたこの冒険にワクワクしていました。

「檻の中はどうだった」

「つまんない所だった。昼はずっと一人で過ごして、大人にバレないように息を潜めるの。夜になってもみんな疲れててイライラしたりすぐ寝たり。でも皆幸せを求めてた」

「檻の中は幸せじゃないの?」

「ママは幸せって言ってたかも。でも私はあそこじゃ幸せになれないよ。外に出て、ママと一緒にいろんなことがしたいわ!

今から幸せになるの ああ楽しみ!」

髪の長い女の子が向かった先には、一台の車が停まっていました。

女の子が近づくとランプがついて、こどもは足を止めました。ここでお別れをしようと思ったのです。

「じゃあね、ゾンビさん。元気でね」

「さよなら物“づき”さん! また会えたら遊びましょ」

「うん」

二人手を振って、女の子が車に入るのを見届けて、こどもはお家に帰りました。

空に細く明るく輝く月が、まだ出ているうちの、ある晩のことでありました。


のべるぶというディスコード内で行われた「童話や絵本になるものを投稿しようの会」で投稿したものです。

朗読になるように書きましたが、人と相談して複数人劇にしてもかまいません。