『協同学習入門ー基本の理解と51の工夫』杉江修治 2011年 ナカニシヤ出版
今の時代、これだけアクティブラーニングだとか主体的・対話的で深い学びだとか言われている状況でありますから、いわゆる「一方向的な講義型授業」(この言葉自体にいろいろ思うことはありますがとりあえず)一辺倒で授業を行う先生は徐々に減ってきているのではないのかなと(肌感覚では)思います。けれど、協同的な学習というのは、なかなかデザインが難しいと感じる方がいるのも事実かと思います(実際に難しいんですけれど)。
本書は、まさに協同学習のバイブルになるものだと思います。この本を読む意義は、自分の中で大きく3つあります。
1点目は、「協同」の意味や意義を深く学ぶことができます。そして、そのことが教育観の揺さぶりにも繋がるかと思います。
2点目は、協同学習の様々なバリエーション(種類)を知ることができます。
・及川平治の「分団学習」
・塩田芳久が整理して理論化した「バズ学習方式」
・マカレンコが理論化した「集団主義教育」
・スレイヴィンが開発した「生徒チーム学習(Student Team Learning)」
・アロンソンらが中心となって開発したジグソー法(Jigsaw)
・シャラン夫妻が推進した「グループ研究法(Group Investigation)」
・ジョンソン兄弟が開発した「協力学習法(Learning Together)」
・ヒルが考案した「LTD(Learning through discussion)」
など、「アクティブラーニング」という言葉が広がるはるか前から、綿々と受け継がれてきた実践の歴史的背景や特徴などを知ることができます。現在普及されている実践の多くは、これらの方法が背景にあるといっていいと思いますので、これらを学ぶ意義はあると思います。
3点目は、まさにこの本の副題にある通りですが、協同学習をデザインする上で重要な51個の工夫が書かれていることです。課題の表現方法や学習過程の工夫、座席レイアウトの工夫、評価の工夫など、非常に大切で基本的なことが書かれています。
今行なっている実践を、急に全て改善するのはなかなか難しい(1度に51個も意識したらパンクすると思います笑)ので、一つ一つ本書を参考にして長期的に改善して行くのがオススメです。私も本書を読んで自分の実践を見直すいい機会になりました。
(Takuya)