五感が磨かれる「触るのは楽しい」(『土の匂いの子』抜粋)
2024.01.31 02:29
何でもなめて味わうと、頬がゆるむこともあれば、顔をしかめることもある。肌でじかに触れると、喜怒哀楽がまた増える。
木の根につかまってよじ登れば、木肌は1年じゅう手に柔らかい質と温度を保っているとわかる。頬にかかる木の葉には、柔らかいのや硬いのやザラザラしたのや痛いのがあり、鼻水を拭くのに適した葉をえり分けることも覚える。捕まえたバッタは指の間でゴソゴソするのがくすぐったかったり、抵抗感があったり、足の節が指にひっかかったりする。虫でも木の実でも、ぎゅっとつかむと出る汁が指を染めたり、ねばねばしたり。
子ども同士の接触も多ければ多いほど楽しい。言葉のまだ出ないうちや、一人っ子の場合、ほかの子のほっぺたに触ったり、たたいたりして関心を表すことがよくある。まず触って確かめる。触り方で、喜ばれることもあれば、嫌がられることもあると知る。
寒いときに体を寄せあったり、押し合ったり、おしくらまんじゅうをして温まるには、友だちが大勢いたほうが楽しいし、効果も高まる。スキンシップによって気持ちが和む。
幼いうちからルールのあるスポーツはさせたくない。それは、身体接触を違反とする場合が多いためでもある。日常生活で必要のない、おとなが勝手につくった規則によって、子どもたちを振り回したくない。修学旅行で友だちといっしょに風呂に入れなかったり、ちょっと肌が触れ合っただけで不愉快になったり、きれたりする子が増えてきた。そういう子どもたちは、とてもかわいそうに思う。