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いわぶち動物病院

肥満細胞腫に関して、もっと詳しく

2024.02.02 00:31

肥満細胞腫というのは肥満細胞

(太っているから出来る訳では無く、初めて発見された時に太い細胞に見えたから肥満細胞と名付けられました)

という体の中に少量存在している物が腫瘍化した癌です。

基本的には血管やリンパ管に存在しており、必要な時に皮膚などの代表に移動します。


細胞内にヒスタミン顆粒をたくさん持っており、飼い主さんが瘤があると思って揉んだり、痒みを示して本人が掻いてしまうとヒスタミン顆粒を放出して腫れて大きくなったり、痒みが酷くなったりします。

その際にステロイドを使用すると一時的に小さくなるので、飼い主さんが治って来ていると勘違いすることがあるため、ステロイドでは根本的な解決にはならないことも説明するのですが、切除が必要なことを伝えても、もう取りきれないほどに大きくなってから再来院する方もいたりします。


良性から悪性まであるのですが、外見上では判別できず、病理検査(パラフィンという蝋の様なものを染み込ませて固くして、数マイクロレベルに薄く切って顕微鏡で細胞の状態を確認する検査方法です)を行なうことで、やっと悪性か良性かを判別できます。


ただし、病理検査でも特殊な染色方法が必要で、銀を使用した染色を行うと、細胞の中に黒い顆粒が見えてきます。


その顆粒の数で悪性、良性を見極めるのですが、アメリカなどではしっかりとしたプロトコールがあるのですが、日本では個人の技術力に任されていて、診断する人によって、本来悪性なのが良性と診断されたり、良性なのが悪性と診断されたりする、厄介な腫瘍です。


厄介さは診断だけではなく、腫瘍自体にも適用されます。


良性であれば、切除すれば再発せずに簡単に治癒しますが、悪性の場合、瘤が見えないタコの足の様に、悪性の細胞を四方に長く伸ばしており、瘤だけを取っても伸びた先の細胞が残っているために、すぐに再発をしてしまいます。


そういう場合、抗がん剤による治療を行なうのですが、リンパ腫などとは異なり、効果が薄いのが普通です。


ただし、肥満細胞腫に特異的に効果がある、以前にも記載したグリベックという抗がん剤が、肥満細胞腫の40%に特効があることが判明しています。

一方でグリベックは効かない肥満細胞腫には一切効果がありません。

その肥満細胞腫がc-kit遺伝子を持っているかどうかで効果が極端に変化します。


このように、中々厄介な腫瘍なのです。


より詳しい情報として、以下のアドレスを確認すると良いでしょう。


https://www.vetmed.hokudai.ac.jp/VMTH/content/files/department/oncology/HUVTH-1_MCT.pdf