めんどくさい。
嫌ならやめればいい。めんどくさいならやらなきゃいい。
そうやって降りるのは簡単なことで、誰にでもできる。めんどくさくてやめるのは誰にでもできることだから、めんどくさいけどやめなければ誰にもできないことができるとも言える。
アパレルOEM製造は中間業者として案外楽な立ち位置だと思われていることが多い。
実際、時代背景もあって最近までは割と案件を右から左へ受け流すムーディーな奴らも多めに残っているから、そういう印象が勝っても不思議じゃない。
中間業者が物理的に手を動かして物を組み立てるわけでもなければ、着想をデザインに落とし込むこともしないから、僕のブログでは何度も取り上げているように、不要論があることは承知している。
そういった世論で煽りを受けずとも、介在不要と判断されるムーデイー業者があるとしたら、時間が篩にかけてくれるから全く心配はいらない。
そして不運にもムーディー業者と商いを共にしてしまって、あまりの無能さに不要論を声高に叫ぶ製造現場も、実際にこの立ち位置でやってみれば、それがいかにめんどくさい仕事をしているか理解し、いつの間にか中間業者を頼る製造へと回帰することも多い。
そう、OEMはちゃんとやるとめっちゃめんどくさい。
粒度の粗いオファーを具体化し、現場に依頼する。数量的なハードルがあってもクライアントの先のお客様まで考えて商品化を目指し、現場に頭を下げながら形にしていく。バラバラと集まってくる材料をまとめて間違いのないように発送し、上がってきてミスがあってはいけないから早めに生産し、出来上がってしまった物の請求が来ても指定納品日までは納品できないことが多いため、長らく資金を眠らせる。そして利鞘を削って他社と競合し、仕入資金が寝る日数と金利分を勘定できない営業は薄利多売で着地は赤字なんてこともザラである。
こういう裏側を知ってると、原価なんちゃらとか言って業界を切ってしまう同業SNS侍は全く信用できない。エセ侍である。
それでもやめない人たちは、本当に必要とされていき、めんどくさいから降りてった(または降ろされた)奴らと違い、凄まじい体力をつけていく。もちろん法外な値段の削り合いには積極的に参加しない。それは大手商社がやること。戦う土俵が違う。
体感だけど、きちんと対価を払ってくれるお客様のケアは、楽にやろうとしてるうちはできないと思ってる。だからめんどくさいと現場から思われるようなケアでもしっかり対応できるようになっていれば、自然に良いお客様しか残らない。
めんどくさいと愚痴を言わないわけじゃない。
しっかり時間をかけて打ち合わせを重ね、解像度を上げて丁寧に完パケで職出ししても、モノが上がってみれば製造現場が間違えていて、魂が抜ける時もある。人間だもの、間違いはある。ただしこっちも人間なので、感情が揺れないでもない。
実際僕はこの後2時間近く、立つ気力を失ってスイカゲームを課金して始めてしまった。
悩んでも仕方ない、後ろ向きな考えは物事を前に進めることはない、そういったポジティブシンキングで苦境を打破する局面の方が当然多いが、しょーもな案件が重なれば重なるほどに、やはり精神は削られるものだ。スイカゲームの課金くらいは許してあげてほしい。
ただ、先述の通り、めんどくさいを重ね続けていくほどに強くなる。お客様からも仕入先様からも必要とされる立ち位置に行ける。
そして納品物が店頭に並び、どこかでその成果物を着用し喜んでいる人たちの笑顔(と粗利)が、続けていくモチベーション(と原資)になる。SNSでキラキラしてなくても、しっかりと人様のお役に立てる。
目的を見失うとめんどくさいだけで終わってしまう。
めんどくさいけどやる意味を自分が理解しておくと、めんどくさいを重ねていけるようになる。
そろそろ春夏商品が立ち上がるね。楽しみだね。