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雷霆を告げる音

Bar/alternative[コイン]

2018.11.09 13:28

今日は物静かな客が多い、

そんな日はレコードでジャズを流すに限る。音量は大きすぎず、世界観を崩してはいけない。


狭い店内だ、異音がしたらすぐに分かる。

チャリン、ジャラジャラ、

カタンカタン、ジャリジャリ。

明らかに複数枚のコインをテーブルに投げては回収する人間がいる。


こんな状況でよく出来るなと、

少しガッカリした。


あと一度同じことをしようものなら注意しなければならない、だがそれは必要なかったらしい。

コインを投げる彼は、私のいるカウンターに来た。


彼は自分自身がマジシャンみたいなもので、

コインマジックの練習をしていたことを謝罪した。

だがそれは口実だったのだろう、

カウンター席に座る2人の男女と私を含めて、目の前で即興で手品を見せてくれた。


手の平にコインが5枚、

彼がそれを握りすぐに開くとコインがない、

無いかと思えば指を鳴らす様な動作で1枚出した、1枚を見せながら2枚、3枚と次々出す。


全部出すと、カウンターに全部投げてみせた。


その中から1枚を人差し指で抑えながら、

私のほうのテーブルの際から落ちない様にとったかのように見えたが、そのコインはなかった。


それはとても鮮やかで、30秒に満たないパフォーマンスだった。


すると彼は、

「一つ僕と、賭けをしませんか?

僕のコインが左右のどちらの手にあるか当てるゲームです、

皆さまが当てれば一杯奢ります、僕が欺けたら、この指輪を一週間預かってもらいたいのですが?どうですか?」と言い出した。


それは賭けというのか?高価そうな指輪を預かるだけのゲーム、

当てても負けても損はしない。

胡散臭いし私はごめんだ、この話を降りた。


男女はそれを快諾し、

ゲームを始めてた、

そのゲームの結果は目に見えているだろう。


私はそれを見ているだけだった。


それでは今日のお話が楽しめたなら、次のお酒を頼んでいただければ嬉しいです。