女優 橋本愛 さん
橋本愛さんがエレベーターに乗るとその瞬間周囲が黙ってしまう。若い女優さんだがファッションモデルっぽいスタイルとツヤツヤの黒髪でかなりの存在感がある。そして一言で「きれい」とうなずける女優である。バンクーバーに到着した彼女を待ち構えていたマスコミの中には、無断でムービー・カメラを持ち込もうとする姿もあった。映画『ここは退屈迎えに来て』のワールド・プレミア初日レッド・カーペットの前日、橋本さんはインタビューに応じてくれた。
橋本愛さんはベルリン国際映画祭でも数本の映画が同時招待されたことがある。様々な映画に出演しているが、ジャンルについては作品や作家のテーマなどに自分から興味を持ったり、心から共感することで作品づくりに入り込む。自分が惹かれることを常に大事にしているようだ。
正直に演じている
可愛くメルヘンチックなのにホラーもできる『アジアのクリステン・スチュワート』と時々マスコミで比較される彼女だが、「えー?」という声で笑い、役を演じる時はその瞬間の自分の「正直な声」に素直に対応していると答えた。例えばこれには惹かれないと思ったことはできるだけ自分から与えない、また自分はすごく好きだがリスクがあると思ったときは「好き」という気持ちを大事にして他の環境を整えてから役のしたいことを「やらさせてあげたい」と語る。今回の映画の「私」のような一人の平凡な女性役でもホラー役でも何でもやりたいと話す。「基本的に私は飽き症で、同じことをずっと続けられないから 」と笑った。
映画の中ではアットホームな雰囲気だったり、完璧な宇宙から来た『金星女性』だった橋本さん。役作りをしているのでなく役になりきっているように見えるのだがという質問にふと顔を上げ、「それが役者さんの理想だと思うんですけど…」と前置きし、「でもなっている、と自分で思ったことはめったにないです」と謙虚に話した。作品の中で、自分で見ている自分と人から見られている自分が全然違う時があり、自分の感覚は全く頼りにならないと思ったことがある。また漫画の役づくりは、読者の中に表情とか声のイメージが植え付けられているためプレッシャーになると思うとまじめに答えてくれた。
初めて来たバンクーバーは、海が近くて大きな公園があり、緑、水、高層ビルなど贅沢なぐらい何でもある街だった。いろいろな要素を感じながらぜひゆっくり歩いてみたいと語った。深々とお辞儀をして歩く後ろ姿は、日本の大物女優到来を感じさせた。
プラダのドレスがとっても似合って素敵でした。