Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

ルモうさぎブログ

九州エキゾチック動物臨床研究会セミナー

2024.02.08 10:05

先日、福岡にてウサギの勉強をしてきました。


学会では、ウサギだけではなく、文鳥やブタについても勉強しました。私は、鳥とブタの診察はしたことはなかったのですが、講演は基礎的な内容も多く、とても勉強になりました。


ブタについて興味深かった内容は、オスブタの陰茎はS字状の形をしており、尿道結石を発症した場合にカテーテルを入れることが難しいという内容です。結石の予防や治療として内服薬を使用すべきのようです。

ちなみに犬、猫、ウサギでは、ペニスから簡単にカテーテルを通すことができます。

(余談ですが、ウサギの場合ですと、尿道壁に憩室(隙間)を形成しそこに石がはまり込むため、尿道結石が原因で尿閉(おしっこがでなくなる)ことはほかの動物と比べて少ないです。が、石が詰まって尿閉になってしまった症例も出会ったことがあります…。ウサギの尿はカルシウムの含有量が多いため、白いおしっこを出しているうさぎさんは、食べ物の中に含まれるカルシウムの摂取量を抑えなければなりません。そもそも石が形成されないように、モニターしていくべきです)





ウサギの講演の内容は、「急性胃拡張」でした。

ウサギの急性胃拡張とは…。

文字通り、急性的に胃が拡張していく病態です。


お正月に3件、ウサギさんの急性胃拡張の治療をしたことがあります。

うさぎさんにとって何か普段とは違うことが起こった場合にストレスを感じ、胃のうっ滞を生じることで食渣や毛球が胃の中に停滞し(詰まり)、さらに唾液が胃内に流入し、嘔吐できずにどんどんたまっていくことによって、急性胃拡張を発症します。


重度のケースでは、飼い主様自身も触ってわかるほど、ウサギさんの胃は張って硬く、おなかを床につけて動けない状態となります。


診断は、レントゲン検査にて、胃の拡張を認めます。






胃が、最後肋骨を超えて、大きく拡張しています。目玉焼き状に、中心にガスが貯留しています。

造影剤で白く写っている場所が胃です。(尾側の白い陰影は膀胱結石です。)


本来の胃はこのように、腹壁とは接しておらず、小さく収まっています。

(ちなみにこの症例も膀胱内にカルシウム尿がたまっています)





急性胃拡張は死亡することもある病態です。

今回の講演は、治療方針についてデスカッション形式で行われました。

そのテーマは、「急性胃拡張の治療方針は内科か外科か」。


内科というのは、胃内容物をカテーテルで抜去後、内科的に胃うっ滞の治療を行っていくことです。

外科というのは、開腹し、胃切開後内容物を取り除くことです。


治療のガイドラインはなく、獣医師によって治療の方針は異なります。


私は、外科手術は行わず、酸素下で静脈点滴を流したのちに、胃内容物を麻酔下で抜去し、投薬を行っていきます。

やはり、急性胃拡張を発症してから時間が経った症例は、残念ながら亡くなってしまったこともありましたが、何とか生き残ってくれたうさぎさんたちも多くいます。


外科に関して、急性胃拡張という全身状態が悪い中で麻酔をかけて開腹することは体への負担が大きいということや、詰まった内容物も投薬によって柔らかくなり流れていくことも多いため、私の選択肢にはありませんでした。


しかし、すべての症例を来院したその日に外科手術を行っている獣医師の方もいらっしゃいました。


もしくは、内科がだめなら外科をやるという方もいらっしゃいましたが、急性胃拡張を発症しているケースですと全身状態はどんどん悪化していくことも多いため、難しい選択です…


統計的に治療成績のデータがとられているわけではないため、どれが正しいというのはありませんし、獣医師の経験やスキルにもよると思います。


今回の講演では、ほかの方の治療方針や成績なども聞けて、私の治療の選択肢の幅が広がったと思います。



ブタを診察したことはありませんが、エキゾチック病院では、100kgを超えるブタさんも診察に来られることがあるようで、診察台には乗せられませんね…泣。ご講演された先生も腰が悪くなったとのことでした。