「深刻なテーマだが爽やかな青春群像劇を描きたい」 錦織一清演出・出演の舞台『あゝ同期の桜』 東京取材会
錦織一清主宰アンクル・シナモンの自主公演第二弾となる舞台『あゝ同期の桜』が、2024年3月に東京日本橋・三越劇場、京都・南座にて上演されることが決定し、2月8日(木)に東京取材会が行われ、演出・出演の錦織一清をはじめ、出演の渋谷天笑、高橋虎之介、渡口和志、吉田和正、室 将也、釜谷海来、新井元輝の8人が登壇した。
本作は、海軍飛行予備学生14期会による遺稿集「あゝ同期の桜 帰らざる青春手記」をベースに書かれた榎本滋民の原作をもとに上田浩寛が脚本を手掛けた。錦織一清は2015年、2016年に続いて本作は3回目の演出となるほか、今回初めて出演も果たす。
取材会ではまず錦織一清が、
「この作品は第14期生が飛び立つ前に家族や友人に当てた遺書のようなものをまとめた榎本滋民さんの書籍をもとにしており、深いテーマになっていますが、大事なのはその中でも若い人たちが明るく生きたというところで、その青春群像を描きたい。今、僕らが平和に暮らしてるのは、どういう方たちのおかげかというのを見つめ直すいい機会にもなるのではないかと思う。ミュージカルのようなエンターテインメントではないかもしれませんが、見ごたえのある作品になると思います」とあいさつ。
また、自身の役柄については
「これは現代から回想シーンに入ってくる芝居になっていて、前回やらせていただいたときにはおばあちゃんと孫が靖国神社を参拝するシーンから現代に引き込んでいくというシステムになっていたのですが、あれから9年経って時代も変わってしまった。なのでストーリーテラーじゃないけれど、その部分の橋渡しという役目を僕が担おうかなと思っています。もちろん本編の中でも重要なところでちょっと出たりしますが」と語った。
2015年の初演にも特攻隊員役で出演した渋谷天笑は、今回の豊島中佐という役柄について
「責任重大ですね。最後の飛び立つところは僕のセリフで見送るので、これはやっぱり気を引き締めないといけない。そしてセリフの中に『みんなを死地に送り出す以上、私も死んでいる』っていうセリフがあるんですね。これがすごく重いセリフだなと思っております。 本当に頑張りたいと思います」と本作への意気込みを語った。
最後に再び錦織一清が
「資料を見ると成績がオール5をとるような優秀な人たちが飛び立っていってしまい、頭脳という面でも日本の将来的な損失は大きかったのではないかと思いました。もちろん深刻な問題ですけれど、僕の中では反米・反戦で描こうというつもりはあまりなくて、澄み渡ったような、その中でも楽しいこともあったであろう青春群像劇をつくろうと思っています。爽やかにつくらないと桜になった英霊の方たちに申し訳ないなと思っています。ちょうど上演するのは靖国に桜が咲こうかという3月の桜の時期ですから、そういう方にも微笑ましく見ていただけるような作品にしたいですね」と締めくくった。
【公演概要】
〇タイトル:『あゝ同期の桜』
〇原作:榎本滋民
〇脚本:上田浩寛
〇演出:錦織⼀清
〇出演:渋谷天笑 岡本悠紀
新井元輝 片岡保海 高橋虎之介 渡口和志 室 将也 釜谷海来 吉田和正
小澤真利奈 惣田紗莉渚
髙汐 巴
錦織一清
〇主催・製作:株式会社アンクル・シナモン
<東京公演>
■場所:東京日本橋・三越劇場
(東京都中央区日本橋室町1丁目4−1 日本橋三越本店 本館6階)
■日程:
3月9日(土)
開場:11時30分 / 開演:12時30分
開場:15時30分 / 開演:16時30分
3月10日(日)
開場:11時30分 / 開演:12時30分
開場:15時30分 / 開演:16時30分
3月11日(月)休演
3月12日(火)
開場:13時 / 開演:14時
開場:17時15分 / 開演:18時15分
3月13日(水)
開場:13時 / 開演:14時
開場:17時15分 / 開演:18時15分
3月14日(木)休演
3月15日(金)
開場:13時 / 開演:14時
3月16日(土)
開場:11時30分 / 開演:12時30分
開場:15時30分 / 開演:16時30分
3月17日(日)
開場:11時30分 / 開演:12時30分
開場:15時30分 / 開演:16時30分
<京都公演>
■場所:京都・南座
(京都市東山区四条大橋東詰)
■日程:
3月30日(土)
開場:17時 / 開演:18時
3月31日(日)
開場:11時 / 開演:12時
開場:15時 / 開演:16時
<ストーリー>
学徒動員が全学生に適用され、昭和十九年二月一日に特に優秀なる官立私立の大学生が、第十四期海軍飛行予備学生として、霞ヶ浦の海軍航空隊に配属された。その中には、官立大学成績主席の諸木、全日本で柔道空手の大会で優勝した神崎、飛行機乗りに憧れる工学部秀才原、実家の寺を継ぐ塚本、哲学者を目指す中沢、親孝行なクリスチャン西、皆夫々に将来に夢見ていた青年がいた。
軍事教練は、通常は四年かけて卒業するところを四ヵ月での速成士官教習で、体力知力共に、日々お国のためにと歯を食いしばって、精神論が強調され、先輩や上官からは、自省しろと鉄拳制裁の毎日。厳しい訓練を終え、各見習い士官は、方々の基地に配属され、戦局が思わしくない状況で、徐々に前線へと配属されていき、同期の者が次々と命を落としていく。
その中で、昭和二十年春、桜舞い散る季節、鹿児島の最前線基地鹿屋に十四期の士官たちが配属されてきた。つまり、操縦できる人間を最後の決戦に備えてのこと。昨年秋に行われた神風航空隊の活躍は、そこで戦死した人間が軍神とあがめられており、集まった面々は自分たちの出撃命令がいつ下されるか待機していた。そんな折、許嫁や両親が訪ねてきたり、地元の女学校の生徒たちが、お餅を作ってくれたりと、穏やかな青春の時間を過ごすこともあった。
いよいよ、特攻の日。悠久の大義に生きるべく笑って死地に赴いていく若者たち・・。震えながら、指導してきた豊島中佐や参謀たちが敬礼したまま見送るのであった。