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ZIPANG-2 TOKIO 2020~これが、最後の完全公開~ 「~旧奈良監獄~美しさと機能性を兼ね備えた日本最古の刑務所建築(前編)」

2018.11.10 19:15

このたびの平成30年 7月豪雨、9月台風並びに北海道大地震により、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。 



奈良赤レンガFESTIVALでは、明治の名建築見学会をはじめ、山下洋輔氏によるミニコンサートなど様々なイベントを開催します。ぜひお越しください。


美しさと機能性を兼ね備えた日本最古の刑務所建築

旧奈良監獄は、明治五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の一つとして、1908年(明治41年)7月、当時司法省に勤め、数多くの刑務所や裁判所の設計を手がけた山下啓次郎氏の設計によって建てられました。建設の大半は受刑者の労働によって作り上げられ、使用されたれんがも構内に窯を築いて自給されたと伝えられています。 現代でも美しく重厚なイメージを残すロマネスク様式の赤れんが建築は、随所に当時の先進的な技術や意匠が取り入れられ、赤れんが造りの塀で囲まれる、およそ10万6千㎡の敷地の中央には、「ハビランド・システム」と言われる放射状に伸びた収容棟が配置されています。 2017年(平成29年)3月まで、百有余年に亘り刑務所としての機能を果たし、日本最古の刑務所建築としてその全貌を残した旧奈良監獄は、同年2月に、重要文化財に指定されています。


旧奈良監獄航空写真

旧奈良監獄図面

1、表門

アーチ型の入り口と、両脇に円塔を備えるロマネスク様式の表門。れんが造2階建で、両脇の円塔は特徴的なドーム型の屋根を有します。

写真は上から順に「円筒」「ロンバルト帯」「壁面:イギリス積み」

円塔

ドーム型の屋根は雨風で腐食しないようモルタルで覆われ、上部に優雅な装飾が施されています。円塔内には階段があり、表門内部の2階へと繋がっています。窓にはめられた鉄格子は建設当時のものがそのまま残っています。

ロンバルド帯

表門の上部はロマネスク建築に見られるロンバルド帯で装飾されています。この歯型の装飾は、敷地内の他の建物にも随所で使われている特徴的な意匠です。

壁面

れんがは長手だけの段、小口だけの段と一段おきに積むイギリス積み。門や窓の周りは、砥石で磨かれた白い花崗岩によって装飾が施されています。


2、入口〜庁舎

赤れんが造2階建で桟瓦葺(さんがわらぶき)の屋根をかけ、中央に青緑色の尖塔を有します。屋根は木造トラス。1階、2階の床組みは木造となっています。

尖塔

庁舎の中央には、青緑色で銅板造りの屋根が特徴的な尖塔が配置されています。尖塔の上部には避雷針が設置されました。2階の上部には花崗岩の装飾が美しい円窓が見られます。

窓は背が高く、半円アーチ窓と櫛形窓が左右対称に並びます。窓の上部は楔形のれんがをアーチ状に配置することで、荷重に耐えられる構造になっています。

倉庫

表門から庁舎へ続く庭の左右に建設された赤れんが造りの倉庫。出入口のひさし持ち送りには、敷地内の他の建物にも共通する白い円形の装飾が施されています。

若草理容室

倉庫の手前の白い建物は、理容科訓練の一環で受刑者が一般市民の散髪を行なっていた若草理容室。


3、中央監視所

2階建の放射線状に広がる5つの収容棟の中心に、大きなホールがあり、見張台が置かれています。1階の天井は吹き抜けで、2階の見張台からも1階の様子を見通すことができます。

天井

木枠を放射状に折り上げた木組天井で、高窓からは柔らかい光が差し込みます。

ハビランド・システム

見張台を要に放射状に収容棟を並べることで、中央監視所から、5つの収容棟が一望できるようになっていました。


4、収容棟

れんが造2階建。第1〜4寮の単独室と第5寮の共同室で合計約500の居室があります。1階奥には受刑者が工場に行く際に持ち物検査する検身場があります。

天井

天井には明かり取りの大きな天窓が取り付けられています。1階の天井は一部吹き抜けになっており、2階からの光が1階まで届きます。

人が多く歩く場所には耐摩耗性に優る花崗岩が使用されました。


5、居室

西欧諸国にならって採用された単独室。雨風が吹き込む1.5畳ほどの座敷牢に数人収容されていた江戸時代と比べて、居住性が大きく改善されました。

 扉

建設当時から使われている木製の重厚な扉。監視窓や食器口が設けられています。部屋の内側にはノブがなく、たとえ施錠されていなくても内側から扉を開けることはできません。


6、運動場

敷地の南西側に位置する広大な運動場。「自力更生」の石像を前に、毎朝、受刑者の朝礼が行われていました。

れんが

受刑者が組を作り競い合って焼いたれんが。運動場から実習場へと続く道の床には、受刑者の組の印が見えるようにれんがが敷かれています。

れんが造の塀と建て増したコンクリートの塀が敷地全体を囲みます。かつて使用されていた見張所の窪みが現在でも2箇所残っています 。


 ハビランド・システムとは

旧奈良監獄をはじめとした明治五大監獄の内部構造は、ジョン・ハビランド(1792-1852)の「ハビランド・システム」を取り入れています。多くの刑務所を設計したハビランドですが、1825年にフィラデルフィアのイースタン州立刑務所の設計において、このシステムを確立させたと言われています。イースタン州立刑務所は、旧奈良監獄と同じように、監守が立つ監視所を全体の中心に据え、複数の収容棟が放射状に伸びています。この放射状の構造により、監視所に立つ看守の目は常に全方位の収容棟に行き届くようになっているのです。


実際に日本が「ハビランド・システム」と出会ったのは、シンガポールでのことです。イギリス植民地時代のシンガポールに建てられた刑務所を見た明治政府の刑部省囚獄権正、小原重哉(1834-1902)はこうしたシステムを「監獄則」「監獄則図式」へまとめ、 太政官布告として頒布しました。これが今日の日本における「監獄」文化のはじまりと言われています。


中央監視所 


単独室

旧奈良監獄には、トイレや給水設備などが整った単独室が用意されました。複数の犯罪者を同室に収監することは、省スペースを見込める一方で、悪い影響を受けあうことが懸念されます。また、プライバシーの観点からもこうした単独室を採用し、受刑者の人権に配慮した設計になったものと考えられます


開催概要

会期 2018年11月23日(金) ~ 11月25日(日)

開館時間 10:00~17:00 (最終入場:16:00まで) 23日(金)は、13:00から開催となります。

会場 旧奈良監獄 〒630-8102 奈良県奈良市般若寺町18 会場に駐車場はございません。バスをご利用ください。(会場までのバスは増便運行されます)

アクセス JR奈良駅西口11番のりば・近鉄奈良駅2番のりばから奈良交通バス「般若寺」下車。徒歩3分。 イベント期間中,近鉄高の原駅から旧奈良監獄まで無料シャトルバスを運行します。 乗車の際にイベントチケットを呈示ください。

入場料 (税込) 一般1000円 小中高生500円

入場、見学会参加には前売りチケットが必要です。 当日券の販売はありません。

小学生は保護者同伴の上、保護者1名につき3名まで。

見学会は明治時代の監獄の建物をそのままの状態でご見学いただくため,段差や階段が多く危険な場所もございます。そのため,未就学児の見学会への参加はご遠慮いただいております。

各回とも申込先着順で定員になり次第、締め切らせていただきます。

チケットの転売は禁じられています。

キャンセル待ちは受け付けておりません。

見学会は明治時代の監獄の建物をそのままの状態で見学いただくため,バリアフリー化等の改修前であり,段差や階段が多く危険な場所もございます。

旧奈良監獄内で車椅子を使用することができないため,車椅子で入ることはできません。

本イベントの入場料は,文化財保護法第172条第5項において準用する第47条の2第3項の規定に基づく,重要文化財の公開に伴う観覧料として徴収させていただいております。いただいた入場料は,本イベントの開催のための警備等の費用に充てられるほか,重要文化財である旧奈良監獄の保存及び活用のために使用させていただきます。

お問い合わせ
奈良赤レンガフェスティバル事務局
TEL: 0120-300-424 (受付時間 10:00~17:00 / 土・日・祝除く)
 e-mail:akarenga@ad.asakonet.co.jp


主催:法務省、旧奈良監獄保存活用株式会社

共催:奈良市、奈良市教育委員会

後援:奈良県

協賛: 株式会社小学館集英社プロダクション、株式会社東急コミュニティー、奈良交通株式会社、株式会社良品計画、KNT-CTホールディングス株式会社、清水建設株式会社 後援 千房株式会社、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会、一般財団法人プロジェクションマッピング協会、吉本興業株式会社、公益財団法人矯正協会 


緊急のお知らせ: 完全公開 三日間限りのチャンスです ‼️

これが最後の完全公開とのことです。なかなか見ることのできない特殊な用途の建築構造物。
すべてが西洋化へと向かう明治初期、レンガ造りの建築美を、明治150年記念のこの機会に是非お見逃しなく! 


鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使


協力(順不同・敬称略)

環境省〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351

内閣官房 「明治150年」関連施策推進室
〒100-8970 東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎4号館8階
TEL:03-5253-2111(代表)


参考

監獄の近代化に尽力した山下啓次郎


旧奈良監獄を含む、明治五大監獄を設計したのが司法技師であった山下啓次郎です。

1868年(慶応3年)に現在の鹿児島市に生まれた山下は、帝国大学造家学科(現在の東京大学工学部建築学科)を卒業後、警視庁に入り、巣鴨監獄建設に携わることになります。

巣鴨監獄建設は、当時の行政施設の見本を作るような作業であり、その後日本各地で次々と建設された監獄の配置計画、建築計画に大きな影響を残しました。

巣鴨監獄を担当した警視庁技師の山下は1897年(明治30年)5月、司法技師に転じ、司法省営繕の業務に携わることになります。 山下は、旧奈良監獄の着工前に欧米約8カ国を歴訪し、 約30の監獄建築を視察しました。その知見を活かし、帰国後に明治五大監獄をはじめ、数多くの裁判所、監獄の建設に関与したことで知られています。

特に五大監獄のうちの千葉、奈良、 鹿児島については自身が設計を担当したと推測されており、旧奈良監獄については、本人の履歴控えに、1899 年(明治32年)の時点で「奈良県知事ノ嘱託ニ依リ同県監獄設計ヲ立ツ」とあり、視察以前の段階で旧奈良監獄の建設に関与していたことがうかがえます。

明治五大監獄設計から退官する昭和3年まで司法省営繕課長の職につき、司法省建築全般に指導力を示しました。

今回ミニコンサートを開催する山下洋輔氏(ジャズピアニスト・執筆家)は山下啓次郎氏の孫にあたります。


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