機能性消化管疾患:事務局便り#1
- 消化管とは
- 器質性と機能性の消化管疾患
*動画とブログの中身は同じです。
1.消化管とは
消化管は名前の通り、口から肛門までを繋ぐ1本の管で、成人では約9mあります。
消化管の内側は細かなヒダで覆われていて、全てのヒダを伸ばすと、テニスコート1面半になると言われています。
それだけ大きな臓器が、私たちの体の中にきちんと納まり、栄養の吸収や排泄に加えて、いろいろな神経や、免疫、ホルモンなどの働きを管理しています。
とくに腸管を管理する腸管神経叢は脳やせき髄に次いで多いといわれ、腸が第二の脳と言われるゆえんになっています。
「第二の脳」としての腸の働きなどは、集英社プラスー知の水先案内人に脳腸相関というタイトルで連載しておりますので、詳しいことが知りたいときはそちらも参照ください。
なお、少しマニアックな内容となっています。
2.器質性と機能性の消化管疾患
消化管の病気は大きく2つ、器質性と機能性に分けられます。
一つは「器質性」と呼ばれるもので、これは消化管の組織や構造に何かしらの問題がある状態を指します。
例えば、消化器に炎症が起こるクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患や、胃の粘膜が傷つく胃潰瘍、消化管のがんなどが含まれます。
これらの病気は、血液検査やCTスキャン、内視鏡検査などで異常が見つかりやすいのが特徴です。
もう一方は「機能性」と呼ばれるもので、これは消化管の動きや働きが正常でない状態を指します。
例えば、胃が食べたものをうまく消化できなくなったり、腸が正常に動かなくなったりすると、検査で異常が見つからなくても、症状が続くことがあります。
過敏性腸症候群が機能性消化管疾患の代表的な例であり、他にも、胃の不快感や食後の痛みや張りが続く機能性ディスペプシアなどがあります。
機能性の病気は器質性と違って、一般的な検査では異常は指摘されないことがほとんどです。
病院で検査をしても異常が見つからず、薬を飲んでも症状が改善されない場合、「なぜこんな症状が出るのか?」や「なにか見落とされているのではないか?」と不安に感じるかもしれません。
ここで注意してほしいのは、「検査で異常が見つからない」というのは、一般的に行われている検査では異常が見つからない、ということで、「病気がない」ということではありません。
たとえば、過敏性腸症候群の人の腸内細菌を遺伝子検査で調べれば、病気がない人と比べて腸内細菌の種類や量に差があることも報告されています。
今回一つだけ覚えてもらうとすれば、機能性の病気は、検査で異常がないと言われても、けして気のせいではない、病気の一つであるということです。
なお、図から気付かれたかもしれませんが、消化管の病気は器質性と機能性のどちらかにきちんと分けられるわけではありません。
時には検査では異常が見つからず、最初は機能性の問題として診断されても、後で再度検査をすると実際には器質的な問題が見つかることがあります。
逆に、器質性の病気が治っても症状が改善しない場合、元々、機能性の病気も持っていたか、途中で発症した可能性があります。
そのため、一度病気と診断されても、治療がうまくいかない場合は、再度検査を受けることが大切です。
次回は、機能性消化管疾患の一つである「過敏性腸症候群」の診断基準について簡単に説明します。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
IBSすっきりプロジェクト中央事務局
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集英社プラス-知の水先案内人(https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/)で【脳腸相関】を連載中です。