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ZIPANG-8 TOKIO 2020三位一体の労働市場改革の指針【内閣官房】

2024.02.17 19:55


令和6年1月1日午後4時10分頃発生した、
能登半島地震で被害を受けた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。(編集局)


武田信玄の隠し湯 蓼科親湯温泉にてリモートワーク         編集局イメージ



三位一体の労働市場改革の指針


1.基本的考え方

○ 働き方は大きく変化している。「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきた。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用にも門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動できるようにしていくことが、日本企業と日本経済の更なる成長のためにも急務である。


○ これまでの我が国の賃金水準は、長期にわたり低迷してきた(先進国の1人あたり実質賃金の推移を見ると、1991 年から 2021 年にかけて、米国は 1.52 倍、英国は 1.51 倍、フランスとドイツは 1.34 倍に上昇しているのに対して、日本は 1.05 倍)。この間、企業は人に十分な投資を行わず、個人は十分な自己啓発を行わない状況が継続してきた。


○ GXやDXなどの新たな潮流は、必要とされるスキルや労働需要を大きく変化させる。人生 100年時代に入り就労期間が長期化する一方で、様々な産業の勃興・衰退のサイクルが短期間で進む中、誰しもが生涯を通じて新たなスキルの獲得に務める必要がある。他方で、現実には、働く個人の多くが受け身の姿勢で現在の状況に安住しがちであるとの指摘もある。


○ この問題の背景には、年功賃金制などの戦後に形成された雇用システムがある。職務(ジョブ)やこれに要求されるスキルの基準も不明瞭なため、評価・賃金の客観性と透明性が十分確保されておらず、個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいため、エンゲージメントが低いことに加え、転職しにくく、転職したとしても給料アップにつながりにくかった。また、やる気があっても、スキルアップや学ぶ機会へのアクセスの公平性が十分確保されていない。


○ 人口減少による労働供給制約の中で、こうしたシステムを変革し、希望する個人が、雇用形態、年齢、性別、障害の有無を問わず、将来の労働市場の状況やその中での働き方の選択肢を把握しながら、生涯を通じて自らの生き方・働き方を選択でき、自らの意思で、企業内での昇任・昇給や企業外への転職による処遇改善、更にはスタートアップ等への労働移動機会の実現のために主体的に学び、報われる社会を作っていく必要がある。


○ 企業側の変革も待ったなしである。企業が人への十分な投資を行っていない間に、諸外国との賃金格差は拡大し、先進諸国間のみならず、アジアにおける人材獲得競争でも劣後するようになっているおそれがある。グローバル市場で競争している業種・企業を中心に、人材獲得競争の観点からジョブ型の人事制度を導入する企業等も増えつつあるが、そのスピードは十分ではなく、人的資本こそ企業価値向上の鍵との認識の下、変化への対応を急ぎ、人への投資を抜本強化する必要がある。


○ こうした変革においては、働き手と企業の関係も、対等に「選び、選ばれる」関係へと変化する。一人ひとりが主役となって、キャリアは会社から与えられるものから、一人ひとりが自らの意思でキャリアを築き上げる時代へと、官民の連携の下、変えていく必要がある。


○ このため、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化、の三位一体の労働市場改革を行い、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることが急務である。これにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。


○ また、構造的賃上げを行っていくためには、我が国の雇用とGDPの7割を占める地方、中小・小規模企業の対応も鍵となる。三位一体の労働市場改革と並行して、3月 15 日の政労使の意見交換でも基本的な合意があったように、「中小・小規模企業の賃上げには労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である」という考え方を社会全体で共有し、賃上げの原資を確保し、成長と“賃金上昇”の好循環を実現する価格転嫁対策を徹底する必要がある。


○ あわせて、こうした取組と生産性向上支援の取組を通じて、地域の人手不足対策や、働く個人が安心して暮らすことができる最低賃金の引上げを実現する。


○ これらの改革に、官民を挙げて、大胆に取り組むことを通じて、国際的にも競争力のある労働市場を作っていく


2.目標

○ 三位一体の労働市場改革を進めることで、構造的賃上げを通じ、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国毎の経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す。あわせて、性別、年齢等による賃金格差の解消を目指す。


○ また、我が国の場合、これまでは転職前後の賃金を比較すると、転職後に賃金が減少する傾向が見られた。内部労働市場と外部労働市場の形成とそのシームレスな接続により、転職により賃金が増加する者の割合が減少する者の割合を上回ることを目指す。


○ 官民でこれらの進捗状況を確認しつつ、改革の取組を進める。


3.指針の方向性

○ 三位一体の労働市場改革を進めるに当たり、その前提として、在職中からのリ・スキリング支援やコンサルティング・助言機能の強化等を含めて雇用のセーフティネット機能を確保・拡充していくことが重要であり、民間の力も活用しつつ、官民一体となったリ・スキリングやマッチング機能の強化が求められる。その際、以下の3つの視点が重要となる。


① 企業内の人事・賃金制度の改革などにより内部労働市場が活性化されてこそ、外部労働市場、すなわち労働市場全体も活性化する。人的資本こそ企業価値向上の鍵との認識の下、個々の企業の実態に応じて、労使による企業内の人事・賃金制度の見直しを中核に位置付けつつ、労働移動に対する不安感等を徐々に払拭するとともに、人への投資の抜本強化などを通じて仮に転職しても将来戻ってきてもらえるような人材を惹きつける企業を増やしていく。


② 今回の改革は、我が国の雇用慣行の実態が変わりつつある中で、働く個人にとっての雇用の安定性を新たな形で保全しつつ、構造的賃上げを実現しようとするものである。働く個人の立場に立って、円滑な労働移動の確保等を通じ、多様なキャリアや処遇の選択肢の提供を確保する。


③ こうした改革を中小・小規模企業の成長機会にもつなげていく。大企業内の人事制度が柔軟なものになれば、例えば、一定期間の中小・小規模企業への出向や副業・兼業等を通じた経験がスキルとして客観的に認識されるようになり、大企業と中小・小規模企業間の人材交流が活発化し、人手不足に直面する地域の中小・小規模企業の人材支援にもつながる。あわせて労務費等の価格転嫁対策を徹底的に講じることにより、中小・小規模企業の収益確保に万全を期すとともに、賃上げにつなげていく。また、リ・スキリングなどに関する支援の充実により、経済格差が教育格差を生む負のスパイラルを断ち切り、全ての人が生きがいを感じられる社会を作ることにつなげる。


○ 上記の視点を踏まえつつ、以下の改革を三位一体で進めることとする。

① リ・スキリングによる能力向上支援

② 個々の企業の実態に応じた職務給の導入

③ 成長分野への労働移動の円滑化


○ あわせて、多様性の尊重と格差の是正を重点事項として掲げ、最低賃金の引上げ、労務費の適正な転嫁を通じた取引適正化、正規雇用労働者・非正規雇用労働者間等の同一労働・同一賃金制の施行の徹底、中小・小規模企業労働者のリ・スキリングの環境整備、キャリア教育の充実等の取組を一体的に進めることとする。


○ この際、こうした改革には時間を要するものも含まれることから、一定期間ごとに官民でその進捗を確認し、時間軸を共有しながら、計画的に見直しを行っていく。


○ また、改革への対応は、業種別にも大きく異なることが想定されることから、業所管省庁との連携により、きめ細やかに対応を行う。


4.リ・スキリングによる能力向上支援

(1)個人への直接支援の拡充


○ 国の在職者への学び直し支援策は、企業経由が中心となっており、現在、企業経由が 75%(771 億円(人材開発支援助成金、公共職業訓練(在職者訓練)、生産性向上人材育成支援センターの運営費交付金))、個人経由が 25%(237 億円(教育訓練給付))となっている。これについては、働く個人が主体的に選択可能となるよう、5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるようにし、在職者のリ・スキリングの受講者の割合を高めていく。


○ その際、業種を問わず適用可能な科目についてのリ・スキリングが、労働者の中長期的なキャリア形成に有効との先進諸国での経験を踏まえ、民間教育会社が実施するトレーニング・コースや大学が実施する学位授与プログラムなどを含め、業種・企業を問わずスキルの証明が可能な Off-JTでの学び直しに、より重点を置く。


○ 業種・企業を問わず個人が習得したスキルの履歴の可視化を可能とする一助として、デジタル上での資格情報の認証・表示の仕組み(オープンバッジ)の活用の推奨を図る。


○ 雇用保険の教育訓練給付に関しては、高い賃金が獲得できる分野、高いエンプロイアビリティの向上が期待される分野(IT、データアナリティクス、プロジェクトマネジメント、技術研究、営業/マーケティング、経営・企画、観光・物流など)について、リ・スキリングのプログラムを受講する場合の補助率や補助上限について、拡充を検討することとし、具体的な制度設計を行う。


○ 特に今般拡充する部分については、在職者を含め労働者が自身の有するノウハウやスキル、本人の意向に応じて、リ・スキリングプログラムを受ける内容、進め方を、コンサルティングを受けながら適切に選択できるように、ハローワーク、職業訓練校などで、事前に在職者へのコンサルティングとリ・スキリングの内容の妥当性の確認を行うこととする。キャリアコンサルタントの役割の強化を図り、将来的には、民間に在籍するキャリアコンサルタントの一部にも、支援措置の妥当性の確認の役割を担わせる可否の検討を進める。


○ 教育訓練給付の受給に係る手続について、オンラインを活用して受給までの効率化を図る。


○ 企業経由の支援策についても、その中身を見直しつつ、必要なものについては充実させることを検討する。この際、企業内でも訓練機会に乏しい非正規雇用労働者等について、働きながらでも学びやすく、自らの希望に応じたキャリアアップにつながる柔軟な日時や実施方法によるリ・スキリング支援を実施する。フリーランスの方々にも、柔軟で多様な訓練機会を提供する。


○ 2033 年までに日本人学生の海外留学者数 50 万人という新たな目標の実現に向けた取組の中で、最近低調となっている社会人の海外大学院への留学を促進する。その際、在職者には時間的制約があることも考慮し、オンライン留学の取組も進める。


(2)日本企業の人への投資の強化の必要性

○ 日本企業の人への投資(OJT を除く)は、2010 年から 2014 年に対 GDP 比で 0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)などの先進諸国に比べても低い水準にある。かつ、近年、更に低下傾向にある。今後、人口減少により労働供給制約が強まる中、人への投資を行わない企業は、ますます優秀な人材を獲得できなくなり、それは企業価値や競争力の弱体化に直結することを認識しなければならない。


○ 他方で、諸外国の経験を見ると、人への投資を充実した企業においては、離職率の上昇は見られず、むしろ、自分を育てる機会を得られるとして、優秀な人材を惹きつけることが可能となっている。


○ このため、企業自身が、働く個人へのリ・スキリング支援強化を図る必要があることを肝に銘じる必要がある。


(3)「人への投資」施策パッケージのフォローアップと施策見直し

○ 本指針を踏まえ、パッケージの各支援策が労働者にとってより利用しやすいものとなるよう、毎年度パッケージの実施状況をフォローアップし、その結果を翌年度の予算内容へと反映する。


○ あわせて、受講後の処遇改善・社内外への昇進・登用に与える効果について計測し、分析を行い、施策の改善に生かす。


(4)雇用調整助成金の見直し

○ 現在の雇用調整助成金は、教育訓練、出向、休業のいずれかの形態で雇用調整を行うことによる費用を助成する制度である(大企業は 1/2、中小・小規模企業は 2/3 を助成。教育訓練による雇用調整の場合は1人1日あたり 1,200 円を追加支給)。


○ 本制度は、リーマンショック、コロナ禍等の急激な経済情勢の悪化に対する雇用維持策として重要な役割を果たしたが、助成が長期にわたり継続する場合、労働者の職業能力の維持・向上や成長分野への円滑な労働移動を阻害するおそれがあるとの指摘もある。


○ このため、在職者によるリ・スキリングを強化するため、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくするよう、助成率等の見直しを行う。教育訓練・休業による雇用調整の場合、給付期間は1年間で 100 日まで、3年間で 150 日までであるが、例えば 30 日を超えるような雇用調整となる場合には、教育訓練を求めることを原則とし、例外的にその日以降に休業によって雇用調整を行う場合は助成率を引き下げるなどの見直しを検討する。


(5)デジタル分野などの認定講座の拡充

○ デジタル分野へのリ・スキリングを強化するため、専門実践教育訓練について、デジタル関係講座数(179 講座(2023 年4月時点))を、2025 年度末までに 300 講座以上に拡大する。その際、生成AIなど、今後成長が期待され、今の時代に即した分野に関する講座の充実を図る。


(6)給与所得控除におけるリ・スキリング費用の控除の仕組みの柔軟化

○ 給与所得控除におけるリ・スキリング費用の控除の仕組み(特定支出控除)について、勤務先企業だけでなく、キャリアコンサルタントも、そのリ・スキリングが職務に関連する旨の証明を行えるように改正した。新制度の活用状況も見ながら、更なる制度の柔軟化を検討する。


5.個々の企業の実態に応じた職務給の導入

(1)職務給の個々の企業の実態に合った導入


○ 職務給の個々の企業の実態に合った導入等による構造的賃上げを通じ、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国毎の経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す。


○ 今後年内に、職務給(ジョブ型人事)の日本企業の人材確保の上での目的、ジョブの整理・括り方、これらに基づく人材の配置・育成・評価方法、ポスティング制度、リ・スキリングの方法、従業員のパフォーマンス改善計画(PIP)、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係、休暇制度などについて、事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うために参考となるよう、多様なモデルを示す。この際、個々の企業の実態は異なるので、企業の実態に合った改革が行えるよう、自由度を持ったものとする。中小・小規模企業等の導入事例も紹介する。


また、ジョブ型人事(職務給)の導入を行う場合においても、順次導入、あるいは、その適用に当たっても、スキルだけでなく個々人のパフォーマンスや適格性を勘案することも、あり得ることを併せて示す。


○ 以下、本指針においても、いくつかの導入事例を示すが、さらに多様なモデルを示すため、既述のとおり、年内に、個々の企業が具体的に参考にできるよう、事例集を、民間企業実務者を中心とした分科会で取りまとめる

(2)給与制度・雇用制度の透明性の確保

○ 給与制度・雇用制度の考え方、状況を資本市場や労働市場に対して可視化するため、情報開示を引き続き進める。


○ また、企業が有価証券報告書や統合報告書等に記載を行う際に参考となる「人的資本可視化指針」(昨年8月策定)についても、本指針の内容を踏まえ、年内に改訂する。


(3)いくつかの導入事例

○ 職務給(ジョブ型人事)を導入している企業の導入事例をいくつか示す。


○ 職務給(ジョブ型人事)の導入目的「海外マーケットが拡大する中、グローバルな社会・顧客のニーズを探索し、その課題を解決するサービス・ソリューションを提供するためには、①ジョブ型を通じた組織・個人双方の成長志向の人財マネジメント、②ジョブディスクリプション(職務記述書)を活用した社内外からの人財配置・採用、③ジョブを活用したリ・スキリング、が必要。」【電機メーカーH 社】


「IT企業から DX 企業に変わる手段として、事業戦略に基づいた組織デザインを実現するためには、年功的人事制度から脱却し、最適な人材をアサインできるジョブ型へと移行することが必要。」【電機メーカーF 社】


「グローバルに勝てる組織を確立するためには、ジョブ型を通じて、①優秀な外部人材に対するアピール、②人材育成における専門性強化へのシフト、③キャリアプランの選択肢の可視化を通じた社員の自律的なキャリア形成促進、が必要。」【化粧品メーカーS 社】


○ 人材の配置・育成・評価方法

「個別のジョブディスクリプションを全社員に公開し、そのジョブに対して『現職者及び(社内外の)候補者・希望者の中で誰を配置するか』、『最適な人財として配置する具体的・客観的な理由は何か』を議論し、適任者を配置するそのポジションに必要なスキルを明確化・公表することで、①社員自らが必要なスキル・経験と現状とのギャップに気づき、②上司と相談しながらそのギャップを埋めるためのリ・スキリングの計画を策定し、③本人の意思でリ・スキリングを実行する。また、デジタル等の職種において認定制度を設けることで、社員本人が継続的に学ぶ意識を醸成する。


人(職能)に紐づく国内独自の報酬制度から、管理職については、国内外のグループ共通のジョブ(職務)に紐づく報酬制度へと移行し、そのジョブの内容や遂行状況(成果・行動)に応じて処遇を決定する。」【電機メーカーH 社】


「年功序列の人事制度を見直し、全従業員を職種・役割の括りでマッピングした上で、個別のポジションごとに詳細に作成したジョブディスクリプションに基づき、ポスティング制度も活用しながら、ジョブに対して最適な人材配置を行っている。


社員が自らのキャリアやリ・スキリングの内容について相談できる体制(上司との 1on1 ミーティング、キャリアコーディネーターの設置)を整備した。また、リ・スキリングの方法についても、階層別の一律な研修中心から、自身の特性や目指すジョブに応じて内容を選択できる、オンデマンド型の教育中心へと転換を行った。


職能ベースの報酬体系を見直し、管理職についてはそのジョブに紐づく報酬を個人の報酬にも反映する。一般社員については外部労働市場の報酬水準をベンチマークの上、職責ごとに従来よりも細かな給与レンジを設定し、社員の貢献・行動に基づく評価が報酬に反映されやすい仕組みとしている。」【電機メーカーF 社】


「職種間をまたぐ会社主導の一律の定期異動ではなく、基本的には同一の職種の中で専門性強化の観点を重視して人事異動を行い、職種間の異動にはポスティング制度を用いる。将来経営層を希望する人材には、自らポスティングに手上げして複数の職種を経験することを期待する。


それぞれのジョブ(職務)に求められるスキル・専門性を明確にした上で、管理職・総合職全員を対象としたキャリアワークショップ、目標設定・評価プロセスを通じ、社員各人に中長期的なキャリアプランを策定させ、それに基づきリ・スキリングを行う。上司はキャリアプランの策定を支援する。


そのジョブ(職務)に期待される成果・行動に対応する個人目標を、上司と相談の上で事前に設定し、その達成度に応じて社員各人の評価を決定し、処遇に反映させる。」【化粧品メーカーS 社】


○ ポスティング制度

「ジョブディスクリプションによって、募集ポジションに求められる職務の内容、職務に必要となるスキルを明示し、グループ内公募と経験者採用を同時募集する。社内人財に対しては、その人財のスキル・資格・経験・キャリア希望を本人同意の範囲で事前に可視化し、ジョブディスクリプションに照らして、マッチングを行う。」【電機メーカーH 社】


「ポスティングによる異動・幹部社員昇格を主軸に据え新任課長ポジションは全て上司の推薦ではなくポスティングにより登用する、ポスティングの対象をグローバル全体に拡大するなど、ポスティング制度を大幅強化した結果、3年間で国内社員の4分の1がポスティングに応募。合格しなかった社員には、どの点が足りなかったかを必ずフィードバックし、本人のキャリア形成へと生かしてもらっている。」【電機メーカーF 社】


「空きポストができたところで、随時社内でポスティングを通じた人材募集を行い、社内の職種間での労働移動も含めて、社員本人の意思に基づく人事異動を行う。」【化粧品メーカーS社】


○ 職務給(ジョブ型人事)の導入方法

「ジョブを定義(ジョブディスクリプションを作成)するに当たっては、グローバルに活動する外部の人材コンサルティング会社が保有する、グローバルに標準化されたジョブの定義を参照し、それを自社向けにアレンジすることで、速やかな移行が可能となった。」
【電機メーカーH社、電機メーカーF 社、化粧品メーカーS 社】


○ 順次導入

「2014 年から管理職に導入。2020 年、全職種・全階層のジョブディスクリプションを作成。2022 年7月から全社員に導入。」【電機メーカーH 社】


「2020 年度から管理職に導入。2022 年度から一般職に導入。」【電機メーカーF 社】


「2015 年から管理職に導入。2021 年から一般職に導入。」【化粧品メーカーS 社】


○ パフォーマンスや行動の適格性を勘案する例

「『自身や他者のために正しいことを迷わず行う』、『迅速に行動し、成功に向けて失敗から学ぶ』、『顧客に共感し、協働してイノベーションを創出する』、『敬意を持って、積極的に発言し、他者の意見を真摯に聞く』、『自身や他者、組織の成長を貪欲に求める』などパフォーマンスや行動の適格性の評価を踏まえる。」【電機メーカーH 社】


「社会や企業の潜在的なニーズあるいは本質的な課題を的確に捉え、チームや関連部署と連携しながら、課題を解決する革新技術の研究開発を主体的に推進する役割を期待。」
【電機メーカーF 社】


「『自ら課題を定義/提案し、解決策の実行まで責任もって取り組める』、『幅広く知識/経験を吸収し、プロフェッショナルとして専門性を高める意欲がある』。」
【化粧品メーカーS 社】


6.成長分野への労働移動の円滑化

(1)失業給付制度の見直し


○ 自らの選択による労働移動の円滑化という観点から失業給付制度を見ると、自己都合で離職する場合は、求職申込後2か月ないし3か月は失業給付を受給できないと、会社都合で離職する場合と異なる要件となっている。失業給付の申請時点から遡って例えば1年以内にリ・スキリングに取り組んでいた場合などについて会社都合の場合と同じ扱いとするなど、自己都合の場合の要件を緩和する方向で具体的設計を行う。


(2)退職所得課税制度等の見直し

○ 退職所得課税については、勤続 20 年を境に、勤続1年あたりの控除額が 40 万円から 70 万円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘がある。制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。


○ 個人が掛金を拠出・運用し、転職時に年金資産を持ち運びできる iDeCo(個人型確定拠出年金)について、拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げについて、2024 年の

公的年金の財政検証に併せて結論を得る。


(3)自己都合退職に対する障壁の除去

○ 民間企業の例でも、一部の企業の自己都合退職の場合の退職金の減額、勤続年数・年齢が一定基準以下であれば退職金を不支給、といった労働慣行の見直しが必要になりうる。


○ その背景の一つに、厚生労働省が定める「モデル就業規則」において、退職金の勤続年数による制限、自己都合退職者に対する会社都合退職者と異なる取り扱いが例示されていることが影響しているとの指摘があることから、このモデル就業規則を改正する。


(4)求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化

○ 成長分野への円滑な労働移動のため、求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を加工して集約し、共有して、キャリアコンサルタント(現在 6.4 万人)が、その基礎的情報に基づき、働く方々のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制を整備する。


○ このため、

① ハローワークの保有する「求人・求職情報」を加工して集約し、

② 民間人材会社の保有する「求人情報」のうち、職種・地域ごとに、求人件数・(求人の)賃金動向・必要となるスキルについて、求人情報を匿名化して集約することとし、その方法については、人材サービス産業協議会の場において検討を行う。

③ 民間の協議会・ハローワーク等に情報を集約し、一定の要件を満たすキャリアコンサルタントに基礎的情報を提供することとする。

④ 官においては、ハローワークにおいて、キャリアコンサルティング部門の体制強化などのコンサルティング機能を強化し、在職時からの継続的な相談支援の充実を図る。


○ これらにより、デンマークなどにおけるフレキシキュリティの一環で行われている取組のように、官民で働く一定の要件を満たすキャリアコンサルタントが、職種・地域ごとに、キャリアアップを考える在職者や求職者に対して、転職やキャリアアップに関して客観的なデータに基づいた助言・コンサルを行うことが可能となる。

※ デンマークでは、政府が、賃金、求人といった客観的な指標を民間から集め、各職種の見通しを、緑・黄・赤といった形で半年ごとに明示。デンマークのケースワーカーはこれを参考に、良い職業に移動できるように労働者を指導する。失業給付等の補助金の支給にあたっても、ケースワーカーのコンサルを受ける。ケースワーカーの経歴は様々だが、IT 技術を有し、指導についてのリ・スキリングを受けた者が選ばれている。


○ 公共職業訓練制度については、申請のオンライン化やハローワークの就職データの活用による民間教育訓練事業者の業務の効率化を推進するとともに、現場の民間教育訓練事業者からの意見を直接聴取する仕組みの導入等を速やかに実現する。


○ また、ハローワークにおいて推薦する職種について、転職前後の賃金を捕捉・比較する方法を検討する。その上で、転職前後の賃金上昇可能性やその後の熟練度に応じた更なる上昇可能性まで考慮に入れた推薦が行われるよう、制度の運営改善を行う。


○ なお、求職者が中小・小規模企業を選択肢の一つとして検討できるように、個々の中小・小規模企業の強みや魅力についての定性的情報をキャリアコンサルタントが求職者に対し効果的に提供する方途について検討を行う。


(5)副業・兼業の奨励

○ 成長分野への円滑な労働移動を図るための端緒としても、副業・兼業を奨励する。このため、副業・兼業人材を受け入れる企業又は送り出す企業への支援など、労働者個人が新たなキャリアに安心して移行できるようにするためのトライアル環境を整備する。


(6)厚生労働省関係の情報インフラ整備

○ 厚生労働省が運営する職場情報提供サイト(しょくばらぼ)の機能強化と利用促進を図る。また、日本版 O-NET(job tag)の機能強化と多様な属性の利用者に対する利便性の向上を図

る。


7.多様性の尊重と格差の是正

(1)最低賃金


○ 最低賃金について、昨年は過去最高の引上げ額となったが、今年は、全国加重平均 1,000 円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論をいただく。


○ また、地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる。


○ 今夏以降は、1,000 円達成後の最低賃金引上げの方針についても、新しい資本主義実現会議で、議論を行う。


(2)中小・小規模企業等の賃上げに向けた環境整備等

○ 中小・小規模企業の賃上げには、成長と“賃金上昇”の好循環を実現する価格転嫁対策や生産性向上支援が不可欠であり、こうした取組を通じて、地域の人手不足や国際的な人材獲得競争に勝てるようにする。


○ 適切な価格転嫁対策や下請取引の適正化の推進

中小・小規模企業の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠であり、物価上昇に負けない、適切な賃上げ原資の確保を含めて、適正な価格転嫁の慣行をサプライチェーン全体で定着させていく必要がある。このため、より一層、転嫁対策、下請取引の適正化に取り組むとともに、特に労務費の転嫁状況について、政府は、公正取引委員会の協力の下、業界ごとに実態調査を行った上で、これを踏まえて、労務費の転嫁の在り方について指針を年内にまとめる。また、業界団体にも、自主行動計画の改定・徹底を求める。


○ 中小・小規模企業の生産性向上支援策の推進

中小・小規模企業等の賃上げ実現に向けて、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇や、ものづくり補助金、事業再構築補助金等を通じた生産性向上などへの支援の一層の強化に取り組む。その際、赤字法人においても賃上げを促進するため、課題を整理した上で、税制を含めて更なる施策を検討する。


また、自動車産業において行われている「ミカタ」プロジェクト等を参考に、サプライヤーの人材に対するリ・スキリング実施とこれらの中小・小規模企業向け補助金による一体的な支援の他分野への横展開を図る。


○ 中小・小規模企業が従業員をリ・スキリングに送り出す場合、個人の主体的なリ・スキリングであっても、賃金助成などの支援策の拡充を検討する。


(3)同一労働・同一賃金制の施行の徹底

○ 同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を禁止する同一労働・同一賃金制の施行後も、正規雇用労働者・非正規雇用労働者間には、時給ベースで 600円程度の賃金格差が存在する。


○ 同一労働・同一賃金制の施行は全国 47 か所の都道府県労働局が実施している。全国に 321署ある労働基準監督署には指導・助言の権限がない。同一労働・同一賃金の施行強化を図るため、昨年 12 月から、労働基準監督署でも調査の試行を行い、問題企業について、労働局に報告させることとした。


○ 600 円程度の賃金格差が非合理的であると結論はできないが、本年3月から本格実施された労働基準監督署による上記調査の賃金格差是正への効果を見て、年内に順次フォローアップし、その後の進め方を検討する。この際、必要に応じ、関係機関の体制の強化を検討する。


○ 同一労働・同一賃金制は、現在のガイドラインでは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の比較で、非正規雇用労働者の待遇改善を行うものとなっているが、職務限定社員、勤務地限定社員、時間限定社員にも考え方を広げていくことで再検討を行う。なお、同一労働・同一賃金制は、外国人を含めて適用されることに改めて留意する。


(4)女性活躍推進法の開示義務化のフォローアップ

○ 男女の賃金差異について、女性活躍推進法の開示義務化(労働者 301 人以上の事業主を対象に昨年7月施行)の対象拡大(労働者 101 人から 300 人までの事業主)の可否についての方向性を得るため、開示義務化の施行後の状況をフォローアップする。


(5)キャリア教育の充実

○ 小学校・中学校・高等学校の総合的学習の時間におけるキャリア教育を充実させるべく、実施方法・事例を周知する。また、これらの学校における教育課程外の取組も含め、起業家教育の充実を図る。


○ 大学においても、キャリア教育の充実を図るためのカリキュラムの拡充を進める。


○ 大学、高等専門学校等における人材育成の充実とキャリア意識の向上を図るため、企業等での実務の経験を有する者の積極的な採用や、企業等から招聘する実務家教員を大幅に拡充する。講師には、スタートアップや中小・小規模企業の経営者も招聘する。


○ また、大学や高等専門学校等において、企業活動と一体的な教育研究を促進することにより、研究の社会実装と世界で戦う上で必要な高度人材育成を両輪で進める。


○ 企業が大学等の高等教育機関に共同講座を設置して人材育成を行う取組への支援を強化する。


(6)外国人労働者との共生の推進

○ 技能実習制度等の見直しについて、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の議論等を踏まえ、具体化に向けて検討を行う。


○ また、外国人の子弟についても、その教育環境の整備を進める。


8.国家公務員の育成・評価に関する仕組みの改革

○ 企業の労働市場改革を進めるためには、「まず隗より始めよ」の精神で、国家公務員の育成や評価に関する仕組みもアップデートするとともに、こうした動きを地方公務員や独立行政法人等にも波及させていくことが必要である。


○ キャリアパスや求められるスキルについても、時代に合わせた再検討が必要である。社会問題の複雑化や技術の高度化に伴い、国家公務員には高いスキルや専門性が求められるようになってきている。こうした専門性も踏まえたキャリアパスを意識させる機会の設定や、制度の立案や現場における一定の経験のような国家公務員がキャリアを積むにつれて備えていく能力の整理など、キャリア形成を支援する取組を行っていく。


○ 高いスキル・専門性が求められる中では、これに応じたスキルアップを、一人ひとりの国家公務員が行動に移さなければ意味がない。現在、座学が中心となっている研修を、例えば参加型の形式のものを増加させるなどの必要なアップデートを行うとともに、それぞれの職責において必要とされる研修を受講するよう受講管理を厳格化する。


なお、国家公務員の職歴、身に付けているスキル・専門性、達成した成果や経験値の管理の在り方について、検討を進める。


                            令 和 5 年 5 月 1 6 日
                            新 しい 資本主義実現会 議

                            内閣官房:出典


当記事は、前号の「働き方改革2023」の関連資料になっておりますので併せてご覧下さい。


鎹八咫烏 記
石川県 いしかわ観光特使
伊勢「斎宮」明和町観光大使


協力(敬称略)

内閣官房

紅山子(こうざんし)


※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。



アーカイブ リンク記事をご覧ください。


テレワーク


ZIPANG-8 TOKIO 2020 「働き方改革2023」を公表! ーNTTコム オンラインー
https://tokyo2020-8.themedia.jp/posts/51763615



武田信玄の隠し湯「蓼科 親湯温泉」

不動明王が鎮座する親湯の源泉 星降るガーデン



武田信玄の隠し湯

戦国時代、武田信玄が戦で傷ついた兵士たちをこの温泉に入れたところ、たちまち、傷が治ったと伝えられています。ガーデンの右奥の不動明王に守られている大岩は、親湯の源泉です。源泉の開湯は、坂上田村麻呂が発見したとか平安時代にまで遡るといわれ、いにしえより、こんこんと湧く温泉は、永い間人々の心身を癒してきました。

この付近には武田信玄にまつわる伝説も多く、 信玄棒道や、信玄が滝に打たれて戦略を練ったという大滝など、歴史に思いを馳せながら、 その言い伝えを見て回るのも一興です。


3万冊の蔵書の一部になります

3万冊の蔵書のLibrary Loungeで若かりし頃夢中になった書物に想いを馳せ、渓流露天風呂で星を見ながら過ぎし日を心豊かに振り返る贅沢を、是非ご堪能ください。



蓼科親湯温泉 星空と雪見の渓流露天風呂


開湯400年?とも1200年?とも言われる温泉場。

殊に有名な話として、戦国時代には、武田信玄が隠し湯として利用したと伝えられ、更に大正、昭和には多くの文人、歌人が執筆や保養を兼ねてこの親湯温泉に足を運んでいたようです。

また、戦時中には帝国海軍の傷病院として 負傷した兵士の療養施設になったことも…。

さらには、当時あったと謂われる温泉プールはオリンピック選手が夏場以外でも 練習できる貴重なプールとして利用された歴史もあるとのことです。

このように親湯温泉の歴史は古く、時代によって多くの人々に 様々な形で愛されてきた温泉なのですね。

さて、これから、具体的に親湯温泉の歴史を紐解きながら ご紹介して参りましょう。


(詳細は下記のURLよりご覧ください。)


ZIPANG-4 TOKIO 2020武田信玄隠し湯【蓼科 親湯温泉】臨時休校支援 “子供無料のリモートワークプラン”を提供(その1)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7848883



蓼科親湯温泉 周辺の見どころ

蓼科親湯温泉のまわりには、ちょっと頑張れば徒歩でいける見どころがたくさんあります。 健康のためにも少し歩いて自然を満喫したら、ホテルでのんびり温泉と読書三昧。


蓼科湖 新緑

徒歩で30分の蓼科湖へバードウォッチングに。八ヶ岳が一望できる、1周約1キロの散策するには手ごろな湖だ。 湖畔にはショップやレストランもあり、お手洗いにも困らない。


蓼科山歌

思ひこひ生の緒かけし蓼科に老のこもりを許せ山衹

朝露にわがこひ来れば山衹のお花畑は雲垣もなく

久方の天の遥けく朗かに山は晴れたり花原の上に

秋草は千草が原と咲き盛り山猶蒼し八重しばの山

信濃には八十の高山ありと云えど女の神山の蓼科我れは

吾庵をいづくにせんと思ひつつ見つつもとほる天の花原

空近く独りいほりて秋の夜の澄み極まれる虫の音に泣く

山深み世に遠けれや虫のねも数多は鳴かず月はさせども

淋しさの極みに堪て天地に寄する命をつくづくと思ふ

草の葉の露なるわれや群山を我が見る山といほり居るかも

蓼科を愛した歌人

伊藤左千夫が蓼科親湯温泉にて詠んだ10首です 


宿とは情報交換の場であり、地域文化の発信の場である!


珠玉の良本の揃う~蓼科 親湯温泉~「ライブラリーラウンジ」で、時を忘れてくつろぐ。



貸切露天風呂「一の湯」

木の浴槽の外側の框の一部が中央で切りかいてあります。オーバーフローした湯が手前の洗い場や浴槽の框に溢れ濡れたままの状態にならないように、お客様が湯に入られる際に滑って転んだりする可能性があり、怪我をされないようにとの宿の心遣いなのです。


温泉宿によっては、オーバーフローしないように外側の框のすぐ下の側板に框の厚み分くらいの開口部を設けて排水している所もあります。


また、木の浴槽を一番美しく見せるコツ(ケースバイケースですが)は、この写真のように框の幅と厚みが3対1の比率になるように施工するというのが基本と言われています。


ZIPANG-4 TOKIO 2020武田信玄隠し湯【蓼科 親湯温泉】宿とは情報交換の場であり、地域文化の発信の場である(その2)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7855472



秋の蓼科 親湯温泉~紅葉のプロムナード~森の妖精たちも冬支度・・・季節は巡る~


明治から昭和初期にかけて、多くの文化人が集い“蓼科文学”を作り上げた一大文学保養地・蓼科。

蓼科親湯温泉は、多くの歌人や作家がぬる湯に浸かり、文学談義を繰り広げた文化人の常宿でした。蓼科の自然の美しさを愛で、感嘆し、多くの作品が生まれましたが、それと同じ位に、またこの蓼科という舞台で恋のはかなさ、美しさ、哀しさを作品に謳い上げてもおります。文人、歌人たちのそんなエピソードをご紹介いたします。

青森 太宰治銅像


太宰 治の新婚旅行

太宰を散歩に誘っても蛇がこわいといって、着いたきり宿に籠って酒、酒である。
これでは蓼科に来た甲斐がない  『回想の太宰治』津島 美和子


井伏鱒二の媒酌で美知子と再婚し、自堕落な生活を立て直そうとした30歳の太宰治。
太宰と美知子は、結婚後間もない八十八夜に信州に出かけ、諏訪、蓼科を訪れました。


1泊目の諏訪で、太宰は酒をとり寄せて乱酔し、26歳の美知子は「テーブルクロスを汚したりして宿の人の手前恥ずかしかった」としています。その翌日、蓼科に着いた太宰は、さらに酒を求め、美知子は「この人にとって自然あるいは風景は、何なのだろう。…おのれの心象風景の中にのみ生きているのだろうか」と、盲目の人と旅するような寂しさを覚えました。


それでも、太宰は美知子とこれまでとは比べものにならないほど、穏やかで安定した生活を送り、多くの作品を著します。


いよいよ3度目の心中のとき、太宰は「美知様 お前を誰よりも愛していました」と遺書を残しました。若い愛人と玉川上水に入水した太宰は、39歳で帰らぬ人となりました。


蓼科親湯温泉を訪れた作家の写真や作品を見ることが出来ます。


蓼科の出湯の谷間末遠く雪の御岳今日さやに見ゆ 篠原志都児

信濃には八十の郡山ありといえど女の神山の蓼科われは 伊藤左千夫


島木赤彦、斎藤茂吉、土屋文明、高浜虚子、柳原白蓮、瀬戸内寂聴をはじめとした多くの文人歌人達が蓼科親湯温泉の歌や俳句を残してゆきます。

太宰治が新婚旅行で蓼科親湯温泉を選んだのもこの様な素地があったからなのかもしれません。

世界的な映画監督小津安二郎監督が、蓼科に別荘を持ち創作に勤しんだことは有名な話であり、小津監督の日記を集めた“蓼科日記抄”には蓼科親湯温泉の記述が17箇所にも及んでいます。


(詳細は下記のURLよりご覧ください。)


ZIPANG-4 TOKIO 2020大正十五年創業の古き良き宿の魂とは「全ての人に深き癒やしと一杯の楽しさを!」(その3)~太宰治 信濃から津軽へ~
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7867960



風林火山を思い起こさせる蓼科湖の風景・・・


風林火山

疾(はや)きこと風の如く

徐(しず)かなること林の如く

侵掠(しんりゃく)すること火の如く

動(うご)かざること山の如し


客室「蓼科倶楽部」とは

蓼科親湯と関わりの深い10人の文人達をイメージして創った個性的なお部屋。クラッシックモダンなインテリアの中でお寛ぎ頂けます。

※2019年1月21日より当館は、全館禁煙になっておりますのでご注意下さい。


蓼科親湯温泉 蓼科俱楽部1


蓼科親湯温泉 蓼科俱楽部4


蓼科親湯温泉 蓼科俱楽部6


明治、大正期のクラシックでいながらモダンな印象を与える設え


山紫水明の里

美しい山と清らかな清流、北杜(ほくと)はまさに山紫水明の里なのです


豊かな大自然に囲まれた八ヶ岳南麓 標高1,000m前後に位置する小淵沢高原。目の前には雄大な南アルプス連峰や富士山も望めます。


夏でも湿度が低く涼しく、昔からお馬さんを育てるのに適した地域でした。現在では山梨県馬術競技を中心に数多くの乗馬クラブがあり「馬のまち」としても知られております。


冬には八ヶ岳ブルーと言われる真っ青な空と雪をまとった山々とのコントラストは絶景です。夜にはキリっと澄んだ空気の中、満天の星空に包まれます。


武田信玄が軍用道として作ったとされる信玄棒道・八ヶ岳の峰々に磨かれた清冽な湧水・森の中にたたずむ美術館、一周400m野外スケートリンク・高濃度ミネラル成分を含んだ延命の湯・美味しい高原野菜などなど小淵沢には思わず寄り道したくなる場所がいっぱいです。


(詳細は下記のURLよりご覧ください。)


ZIPANG-4 TOKIO 2020武田信玄の棒道と蓼科 親湯温泉「2026年 蓼科 親湯温泉100周年に向けて!」(その4)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7884955



※現在、2250件余の記事掲載、下記のサイトからご覧ください。


ZIPANG-7 TOKIO 2020 (VOL-7)
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