三善晃 交響四部作のご紹介
今回、かんまーむじーく のおがた代表の渡辺伸治氏が三善晃さんの交響四部作をご紹介されておられ、とても興味を惹かれましたので、ここに紹介いたします。
【かんまーむじーく のおがた代表の渡辺伸治氏の投稿】
ここ数年、この時期に襟を正して聴く楽曲があります。
三善晃さんの交響四部作です。三善さんは少年期に疎開先で機銃掃射に遭い、目の前で友人が肉の塊となって散る様を目の当たりにしました。生き残った自分に「贖罪」を感じて、戦争を題材にした楽曲を多く残したのです。中でもこの交響4部作は思いが最も強いものです。
私がこの曲を知るきっかけとなったのは、終戦から70年の2015年7月の九州交響楽団の定期演奏会でした。「戦争・平和」のテーマを掲げ、三善さんの交響4部作から「夏の錯乱」と「焉歌・波摘み」の2曲を取り上げたのです(指揮 下野竜也さん)。
「夏の錯乱」は夏の朝の日常が突然の原爆投下で破られ、街が火の海と化していく惨状を描いたものです。咆哮するオーケストラ、まるで臓腑をえぐられるようでした。
一方の「焉歌・波摘み」は沖縄の疎開児童を乗せた対馬丸の悲劇です。「焉歌」とは海中に消えていった子供たちが最期に耳に響かせただろう子守歌で、それが曲中に哀しく奏でられるのです。そして「波摘み」は子供たちの声を花を摘むように何とか拾い上げたいという作曲者の思いです。
眼前に惨状が映し出されるような痛ましい音響の渦、その中に置かれた私は思考が停止し一つの「物体」となっていました。
そしてその後にバッハのコラール「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」が演奏されました。その透明感に溢れた優しい響きに抱擁され、タイトル通りに説かれるよう。涙が滝の様に溢れ出ていたのです。
休憩時のロビーでは涙を拭っている人を沢山見かけ、ある方の「人間に対する絶対的な信頼」という言葉を思い出し、救われるようでした。
戦争を風化させないために3つの記念日があり、この時期には放送では特別番組やドラマなどが組まれます。
私は三善晃さんのこの楽曲を聴くことで戦争の悲惨さを知り・感じることも一つの在り方と思っています。泣くことしかできませんが。
毎年夏、全国のオーケストラの演奏会でこの曲をぜひ取り上げてほしいと願うばかりです。