明けましておめでとうございます。この巻頭言も私が担当して4年目に入りました。今年もよろしくお願いいたします。 昨年の暮れも押し詰まった12月末、ビートルズの「レット・イット・ビー」がネットニュースの記事になっていました。この名曲には、なんとシェークスピアの「ハムレット」が関わっていたというものです。作曲者のポール・マッカトニーによれば、彼が十代で死別した母が後に夢に現れた時に、「let it be」という言葉を彼に伝えたそうです。それは、彼が学生時代に暗唱させられた戯曲「ハムレット」の中で、主人公が何度か発するセリフでした。夢とはいえ、母と再会できて、さらにこの言葉を賜ったことで傑作が生まれたことを懐かしく語るポールでした。 ルネサンスと20世紀の天才二人。彼らを結ぶ不思議な縁(よすが)についての、この記事を読んだ私の脳裏には、やはりシェークスピアがらみの別の曲が浮かんできました。エルガー(20世紀イギリス)の行進曲「威風堂々」です。 このマーチの原題は「Pomp and circumstance」ですが、これもシェークスピアの傑作「オセロ」の中のセリフでした。この古い言葉を直訳すると「盛儀盛宴」や「華麗なる行列」などになるそうですが、今では「威風堂々」という意訳タイトルが定着しています。 1901年作のこの曲は、同年崩御したビクトリア女王の長男として王座に就いたエドワード7世の戴冠式でも演奏されました。新国王は「あの(中間部の)メロディは世界中の人々が聴くことになるだろう。」という「予言」を残しましたが、果たしてそれは見事に的中しました。ちなみにエドワード7世は、カナダのプリンス・オブ・ウェールズ島の名の由来となった国王です。