やいゆえよ
2024.02.25 07:25
やっと見つけたかと思えば、手がかりでもないスカばかりで頭が痛い。いつまでもつかめない原の動向は、さながら山で獣を追うようだった。人の影の多い街中ならばいっそう、さぞ隠れる場所は多かろう。謹慎はじきに解けるはずだったが、それを待たずに原は自宅から消えた。
居ないと分かっているその部屋に、俺は何度も足を運んだ。寒さから逃げて来はしないか、空腹に耐えかねて戻りはしないかと。期待は的を外し続け、貯蔵されていた食物は腐敗した。捨てようとつかんだ芋が手の中で崩れてから、胸が悪い。原は、生きているだろうか。
ユキ子お嬢が引く糸は黄泉への道しるべだ。あれの母親もそうだった。かつて組長に添い、寝所に巣を張った毒婦。蜜の匂いは脳をぐずぐずに溶かして、抗おうなどと思えもしなかった。組長も毒の強さを知っていたのだろう。男共に代償を指で払わせたのは、温情だ。今でも切られた面が疼く。
遠方へ離された母親の下に、お嬢は送られている。場所を知るのは限られた人間だけだ。原がたどり着けるとも思えないが、姿を見せなくてもあの匂いは、あまりに違いすぎる。しかし、大きく動いて母親の家宅が騒ぎになってはいけない。
夜明けに訃報が入らぬよう、毎晩祈ることしかできないでいる。夢を見るのは愚かなことだ。虚像を追う足はやがて疲れに朽ち、霞だけを入れた臓器は灰になって崩れるだろう。もしかしたら、そのままどこかで絶えるほうが、原の為なのかもしれないのだ。