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坂本雅彦ホームページ

2027年横浜園芸万国博覧会について

2024.02.26 08:10

万博よりハンバーグが好き。

 昨今、大阪万博の開催について疑義を唱える声が聞かれた。会場整備と建設費が大幅に膨れ上がったからである。国、自治体、地元企業も苦し紛れの予算措置を行い、現在も急ピッチで会場の整備とパビリオンの建設が進んでいる。チケットも並行して販売を開始している。大阪万博の主催はオリンピックと違い政府である。協会の名誉総裁は秋篠宮殿下である。目前に迫ったタイミングで開催を中止することは国家の威信に関わるし、殿下の面目を汚してしまうような気がしてならない。よって、迷わず行けよ、行けばわかるさ、と言わざるを得ない。

 そうした中でもう一つ心配な万博が予定されている。横浜市で開催予定の国際園芸博覧会2027である。博覧会国際事務局(BIE)にてA1ランクとして承認された最も規模の大きい万博である。万博と言っても大阪で予定されているような通常の万博ではなく特別博と言われる特別に認定を受けた万博である。過去には1990年に「大阪花の万博」が開催されている。会場の予定地となっている旧上瀬谷通信施設は、横浜市の郊外部(旭区・瀬谷区)に位置し、2015年に米軍から返還された約242haの広大な土地である。2027年国際園芸博覧会はこの土地が米軍から返還されたことによって、跡地利用のアイデアの一環として計画されたことに端を発している。

 70年ぶりに返還されたこの土地のエリアは用途が制限されており、宅地開発や都市開発には向けられない。そこで万博を誘致し、国・横浜市・民間で費用を案分しエリアの整備を進めて、後に民間テーマパークの誘致を図ることにしたのだ。言い方は悪いが、税金を投入できる理由付けとして万博の開催を目論んだと言っても過言ではないだろう。

 横浜市は農業振興地区、観光賑わい地区、物流地区、公園防災地区の4エリアに分けて土地区画整理事業をしようとしているがまだ承認はされていない。面積的に一番大きく中心になる予定の観光賑わい地区がテーマパークの誘致予定とされている。

 開催は6カ月間、集客予定は1000万人から1600万人を予定している。予算は会場整備と建設費で320億円、運営費が360億円を予定している。本当にこれで収まるのだろうか。衆議院国交委員会では予算が増えても補填はしないと明言している。では、補填しないことで開催が行き詰まったら誰が責任を取ると言うのか。国は適切な助言をするだけだという。まるで他人事のような口ぶりである。そもそも国際園芸博覧会の開催に対する盛り上がりも知名度も感じられない。バブル景気真只中に開催された「大阪花の万博」には2000万人の来場者があったことを引き合いに現実的な計画だと言うが本当にそうだろうか。当時に比べ娯楽施設や大規模イベントの開催は増えている。1990年のデータと比較して採算を諮るのは危険であろう。蛇足ではあるが、コロナ禍明けの建築資材や建築労務費は急激に高騰している。本当に320億円で会場を完成させることが出来るのだろうか。2023年10月からカタールのドーハで開催されているA1ランクの万博である国際園芸博覧会の来場者数見込みは300万人である。日本は大国だからドーハの5倍もの来場者があるということか。想定が甘いような気がする。日本もドーハの国際園芸博覧会に公式参加しているが出展予算は2000万円に過ぎない。博覧会参加国による大きな予算措置は期待できないということ。

 開催のコンセプトには「2030年の目標ゴール達成を目指す持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取り組みをより確実にするとともに、2050年のカーボンニュートラル実現すること見据えた環境社会の構築」としている。脱炭素と地球環境に紐づけることは最近の流行りである。環境問題に絡めると予算が措置されやすい、政府の承認が受けられやすいという傾向が年々強まっているように感じる。現状は小川が流れるただの原っぱである。環境問題を唱えるのであればそのままにしておくのが一番有効であるはずだ。アスファルトを剥すわけでもビルを撤去するわけでもない。現状は都会に隣接した広大な草原である。

 さて、万博という公的な催事を開催することで広大な草原を開発し整備する。その跡地であれば整備に係る事業投資も軽減されているので民間事業としてテーマパークの誘致が可能となるのではないかという目論見のもとでスタートした計画であると思うが、その目論見は既に頓挫しているのではないか。当初、跡地にテーマパークの出店を検討していた相鉄グループが計画を断念したという。では相鉄グループの後継としてテーマパークとしての出店を見込める企業はあるのだろうか。あったとしても出店計画の確度はどのくらいなのか。テーマパークの具体的な計画は巷には聞こえてきていない。つまり、現状では具現性は期待できない状態にあるのではないか。最終的な目的がとん挫したと状態で単なるお膳立てのようにも思える園芸万博を開催する必要が本当にあるのだろうか。

 さらにもう一点、大きな問題が指摘されている。最寄駅と会場予定地が遠いということ。最寄駅の瀬谷駅から会場予定地までは大凡2.2キロメートル。徒歩ではあまりに遠い。っ国交委員会での政府参考人の説明では駐車場は3000台だという。大阪花の博覧会では9000台の駐車場を用意したとうから3000台では不足感は否めない。もっと大きな問題は横浜シーサイドライン社が鉄道の延伸を断念したことである。瀬谷駅から地下に2キロ掘作し新駅を設置する計画であったが中止となっている。1000万人から1600万人の来場を見込み、その後にテーマパークの開業を目指しているにも関わらず鉄道の整備が為されない。しかも、シーサイドライン社は横浜市が60%を出資している第三セクターである。横浜市が三分の一を投資して開催する国際的催事であり、跡地利用も大規模な事業が予測されているにも関わらずたった2キロメートルの延伸を断れている。由々しき事態である。

 万博開催、テーマパーク誘致、鉄道延伸という3本柱で進められるはずの計画のうち既にテーマパーク誘致と鉄道延伸の2つがとん挫してしまっている。国交省の参考人は最寄駅からのシャトルバスによるピストン送迎とバス専用レーンを整備することで補うとしているがそんなことが可能なのだろうか。半年間で1000万人から1600万人が来場する予定である。その三分の一がバスを最寄駅からのバスを利用したとしても休日には数万人の輸送体制を用意する必要がある。一体何台のバスが必要になるのだろう。バス渋滞が発生し輸送体制が崩壊するのではないだろうか。

 万博は国の威信にかけたイベントである。一度、BIEの承認を受けてしまっている以上、開催するのが当然ではある。しかし、当該予定の国際園芸博2027に関しては恥を忍んででも中止することが賢明だと考える。幸いにして、未だ話題性も少なく、知名度も低い。居間ならギリギリ中止することも可能なタイミングなのではないだろうか。少なくともこのまま強行することリスクが高すぎる。延期するか計画内容を再考することくらいは必須だと思う。土地は使わなければならない、税金は使わなければならない、などという時間と空白を埋めるだけの発想は止めよう。必要に迫られてする、それが事業の第一義であらねばならない。

 私の頭をかすめるのは長崎のハウステンボスのケースである。開業当初の長崎オランダ村は10年で経営破綻(負債総額約2200億円)。その後、食のテーマパーク「キャスビリッジ」が開業したが半年で倒産、その後、ハウステンボスと改称して運営されるが経営不振が続き2010年には税優遇付でHISに譲渡される。HISは2022年には香港の投資会社に全株式を譲渡している。結局、不動産や暖簾も含めてすべて外資のものになってしまっている。税金を繰り返し投入してきての末路が外資の所有物である。外資の手に渡る前にHISが所有したといえど長崎県も西海市も100%の減資を行っているし、佐世保市も固定資産税を10年間免除している。つまり、佐世保市も50億円近くを支給しているということだ。長崎オランダ村を廃墟にしないために自治体はどれだけ無駄に税金を使う羽目になったのか忘れてはならない。当該の横浜市で計画される国際園芸博は本当に必要とされているのか、そのニーズはどれくらいの規模と強度をもっているのか、過去の事例を念頭に再考するべきだと考える。


参考

国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案 参議院

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/213/pdf/t0802130072130.pdf

二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100624098.pdf

横浜国際園芸博2027

https://expo2027yokohama.or.jp/

2027年国際園芸博覧会基本計画

https://expo2027yokohama.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/kihonkeikaku_2-2.pdf

官邸巻き込んだ「花博」、開発進むはずが…横浜市の誤算

https://www.asahi.com/articles/ASP845F6CP81ULOB002.html

令和4年3月9日衆議院国土交通委員会

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009920820220309003.htm

2027横浜国際園芸博覧会

https://ja.wikipedia.org/wiki/2027%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%9C%92%E8%8A%B8%E5%8D%9A%E8%A6%A7%E4%BC%9A