現代研究会

2018年度前期発表2 芸術療法におけるあいだの意味

2018.05.19 03:49

※前期の発表で順番が前後しますがご了承ください


発表2 芸術療法におけるあいだの意味

発表者:佐藤仁美

一介の臨床心理士として、日々、「あいだ」というものを考えざるを得ない。


そもそも、「あいだ」とは・・・?

「あいだ」を漢字で書くと「間」、むかしは、「閒」と書いていた。

会意文字「門+月(日)」、「欠けた月」の象形と「左右両開きになる戸」の象形から

門を閉じても月の光が漏れる、すなわち、「すきま」を意味している。

心理臨床の世界における「あいだ」とは・・・?

時間的にも空間的にも「あいだ」は、媒介(橋渡し・仲立ち)として重要な役割を果たす。

クライエントの抱える問題の多くは、「関係性(あいだ)」に起因する。

対象者との「あいだ」の改善により、問題解決につながることが少なくない。


「あいだを作ったり(はなす)」(距離や空間を作る)、

「あいだをつなぐ(とりもつ)」(間・間柄を縮める:距離間を近くしたり、橋渡しをする)

ことを援助していくのも、心理臨床における仕事のひとつである。

「あいだ」は、視覚的に表れやすいものもあれば、表されにくいものもある。


物理的距離間は確認し易いが、心理的距離間を確認することは容易くない。

その目視しづらい面を扱うのが心理臨床の世界であり、

「見えない」を「見える化」する試みの一つに、芸術表現があり、

それを媒介にした心理療法に、芸術療法がある。

芸術療法は、絵画や造形・音楽・ダンスなどを通してクライエントの問題解決に寄与する。

クライエントとセラピストの媒介的存在であるクライエントの表現をどのように扱うかは、

「視覚的コミュニケーション」(徳田,1971)として俯瞰することができる。


セラピストは、言葉に表現しづらいクライエントの芸術表現を、言葉をもって受容し、

この繰り返しによって、セラピーは進行していく。

クライエントが、内と外、思いと行動、・・・等々をバランスよく繋がりつけられるよう、

視覚的コミュニケーションを駆使した芸術療法を展開していく。

芸術療法は、ひとつの「あいだをつなぐもの」である。

「人と人、私と他者とが出会って、互いの『あいだ』を確認しあうのは、言葉によってである」

                                 (木村 敏、1988)

あいだをつなぐものの極限は言葉であり、

言葉の扱われ方によって、色々な意味での関係が成り立つ。

心理臨床における言葉の大切さが求められる。

そして、そっと大切に「あいだ」を扱えると、対人援助につながる。

セラピストは、クライエントのセラピー・やりとり・関わり合いにおいて、

「洗練された共鳴道具」(Bugental.J.F.T,1987)であることが必要である。