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探花逢源

触診が上手いお医者さん

2026.06.04 04:48

見た目はすこし怖そうでした。先生はにこりともせずに「みせてごらん」といい、私はシャツを脱いで身を任せます。

わたしがまだ小学生くらいだったか。年配のお医者さんが目の前に座っていました。

聴診器を当てたり、背中をトントンと小気味よく叩いて調べていく。その手際の良さ、心地よさ。子供心にもなぜか、ホッとするというか、それだけで治ってしまいそうな気がしたものです。

この”怖そうな先生”とその手の心地よさのギャップ。そのことも相俟って、この記憶はいつまでも私の記憶の中に刻み付けられることとなりました。


当時、まさか自分が医療者になるなどとは露にも思いませんでしたが、いま振り返るとそういう”医の原風景”みたいなものが自分のなかにあって幸運でした。こういう感覚的な部分は今の医療からは排除されていく方向にあるからです。

医師ではない私は先生とは同じではありませんが、私は鍼灸師という立場から、当時の先生と似たようなことを生業としてしています。

誠花堂には、お母様のお腹の中にいる頃からも含めて、赤子の頃から継続して鍼をさせて頂いた子達が何人もいます。そんな子供たちの成長を見ながら、はたしてこの子たちから自分はどういう風に見えているのだろう等と考えることがあります。

いずれ、医療の大部分は機械がこなすようになるかもしれない。それはそれで素晴らしい世界かも知れない。でも、手仕事としての医療、手仕事としての鍼灸の良さ。その良い部分を後世に残したいものです。