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賃貸仲介会社が忘れがちな一大イベント

2018.11.14 05:09

 日々の仲介会社の業務は、とても多岐に渡っている。広告の物件を探したり、また写真を撮りに行ったり、勿論物件の提案をしたり、案内をしたり、かなり忙しい。

  いろいろIT化で便利になったとしても、プレイヤーが多い業種のため、なかなか業務の軽減をするのは、一苦労だ。

 意外なところで時間を取られたり、また想定の予定が狂ったりするのは、日常茶飯事だ。


 このような仕事をしていると、どのようにタスクをこなしていくのかを考えることが増えていき、なかなかその日の余裕が無くなってしまう。今日1日が無事に終わった。しかし明日は果たして本当に時間内に終了することができるだろうか。そんなことばかり頭に浮かんでしまう。



 話は変わるが、最近、イヤホンを変えた。私は移動中、音楽を聞いたりするので、イヤホンを購入するのは、結構な一大イベントである。Amazonなどで商品を検索したり、また実際に電気量販店に行って、商品を確かめたり、どんな仕様のものを買うのかかなり悩んでいた。検討の結果、殆ど高価な買い物をしないが、イヤホンのなかでも、高い部類のイヤホンを購入した。 商品が届くまで、とても楽しみにしており、届いた瞬間にケースから取り出し、デザインや音質などを確かめた。至福の時間である。


 また、昔、車などを購入した時もそうだった。納車までの時間が一番楽しみだ。購入後、なぜかカレンダーを見て、あと何日と指折り数える。実際、納車されると、その日はとても幸せな気分になる。


 実際のところ、部屋を借りる当日も、ユーザーは上記のような気分になっているケースが多い。初めての街、初めての新生活。住まいを借りるだけでも、そのユーザーの生活スタイルが大きく変わる。鍵を不動産会社に貰った瞬間から、ユーザーの新しい生活が幕を開ける。それはイヤホンなどとは比べものにならない瞬間だろう。

 実際、鍵をもらい、1人で家具のない部屋に入った瞬間、ユーザーは様々な思いを巡らせるだろう。これからの仕事や生活のこと。そして家具や家電の置き場などなど。


 だが、不動産賃貸仲介を長年行なっていると、この物件の引き渡しというイベントを軽視しがちになる。売買の場合は、逆にとてもわかりやすく、住宅ローンを組み、購入するケースが多いので不動産会社もその重みを理解している。

 しかし賃貸だと、どうしても鍵渡しを軽視してしまう傾向にあるような気がする。その理由は様々あるが、ひとつは上記のような業務量などに追われて、あまり重きを置いていないのもひとつだし、また賃貸だと契約までが割と重要視されているのも原因のひとつではないかと思う。


 物件を申し込んだ後、審査は問題ないか、また契約日まで滞りなく進むことができるだろうか、と仲介会社の心配のタネは尽きない。


 実際のところ、年々都心部では物件の申込やキャンセルの動きが激しくなり、契約に至るまでは一苦労だ。しっかりと契約に対してナビゲートすることは、賃貸仲介業の重要なノウハウのひとつだ。


 しかし、それでもユーザーにとって、1番の楽しみの日は引き渡しである。有名店のラーメン屋に並んで食券を押す楽しみよりも、やはりラーメンが出されるのを待ってカウンターにいる時間のほうが楽しみであることが間違いないように。


 実際のところ、管理会社自身が鍵を渡すケースもあるが、もし仲介会社が鍵の引き渡しを行う場合は、もう少し重みを持たせる、もしくはユーザーに生活を後押しするような気分をプロデュースしてみるのも良いかもしれない。 


 通常だと、封筒を入れ替えて、簡単に注意点を伝えて、お店のエレベーターまで送って終了、なのだが、たとえば全スタッフが立って挨拶をしても良いのかもしれない。高級車のように花束を渡しても良いのかもしれない。また記念の写真をプレゼントしても良いのかもしれない。いろいろなアイデアが出せる。

 

 これからはフロービジネスではなく、仲介業もストックビジネスになっていく。

 その際に、顧客に商品を届けるというタイミングで、どのようなサービスを提供するかは、今後もしかしたら、非常に大事になってくるのかもしれない。

 他社との差別化は、ユーザーが検討段階の時期に対するサービスの差別化と同等に、引き渡し時でも充分効力を発揮できるものである。

 

 

 ユーザーが喜ぶ部屋とは?




営業の重要性