リフォーム解体新書~既存キッチンの重みで下の床が傾いている?
リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書
第5回 キッチンリフォーム(前編)
ドキッとする“解体あるある”を集めました
「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。
そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。
キッチンリフォームでは、壁付けから対面にするなどレイアウト変更をする現場が増えています。レイアウト変更なら通常はキッチン交換と同時に床を新規にしますが、位置を変えずにキッチンのみ交換する場合は床を既存利用することも多いでしょう。そこで今回は、床を既存利用するキッチンリフォームの現場でありがちな「解体あるある」を集めてみました。
《事例 2》
既存キッチンの重みで下の床が傾いている?
このままでは新しいキッチンを設置できない!
「既存のキッチンが、大分傾いている」と現場から連絡が入りました。キッチンセットを撤去したあとに器具を使って床レベルを確認したところ、キッチンが置かれていた部分の床が傾斜していることが判明しました。部屋全体のレベルにも多少の歪みがありましたが、キッチンセット設置位置の床の傾斜が特に顕著です。新規のキッチンは引き出し式で、床が水平でなければ引き出しがガタガタになってしまうし、このままの状態ではキッチンを設置できないという話になってしまいました。メーカーの設置説明書にも「システムキッチン設置個所の水平・垂直・コーナーの直角を事前工事にて確認」と書かれています。
【解決策は?】調整用部材で調整できなければ床のレベル調整
まず、キッチンセットの下が顕著に下がっている原因が何か確認します。年数が経った建物は多少の歪みがあるもので、新規キッチンを設置する際には必要に応じてメーカーの調整用部材を使用し、水平に設置します。しかし顕著に不陸がある場合は、床が重さに耐えられなくなっていることも考えられます。床下を見て根太に亀裂がないか、また根太間の間隔が広くないかなどを確認して適切な処置をするようにしましょう。大抵既存のキッチンよりも新規キッチンの重量が重いので、さらに床の負担が大きくなることを前提に必要工事を行います。右のイラストのように根太工法※の場合、年数が経った建物では根太間のピッチが455mm(現在は303mm)なので、間に根太を追加することもあります。更に床下でレベルを調整した後に床材を張ります。
▲根太間が広い場合は根太を追加して重さに耐えられる床に
【どうすれば事前にわかる?】調査用の器具がなくても不陸(床の傾き)を確認できる方法
現場調査の時にレーザーや水平器で床の傾きを確認するのが一番ですが、器具を持ち合わせていなくても、キッチンの天板に水を垂らしてみる方法もあります。床に傾きがあれば低い方に向かって水が流れます。床下の問題点を着工前に把握するためにも、現場調査の際にキッチンの床下を確認することが大切です。
▲天板に水を垂らしてみる。水がスーっと流れるほど傾いていることもある
[用語解説]根太工法
「根太工法」は在来工法の床組みのひとつで、根太という水平材を大引きの上に303mmの間隔で組み、床材を支えます。近年はこの根太を使用せずに、厚みがある合板を大引きに直接貼って仕上げ用の床材を支えるという「剛床(ごうしょう)工法」が主流となっています。どちらにもメリットデメリットがありますが、地盤に多少の歪みがあっても調整しやすいのは根太工法です。
根太工法にも時代の流れにより施工方法に違いがあります。以前はイラスト左のように根太の上に直接床仕上げ材を貼っていました。根太の間隔は年代が古い建物では455mmでしたが、床強度を増すため303mm間隔になりました。更に床強度を増すため、イラスト右のように、床仕上げ材を貼る前に合板を貼る工法に変化しました。
リフォマガ2023年9月号掲載
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