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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

脳卒中リハビリの評価にバビンスキー反射は必要ないと思います④

2018.11.14 22:30

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


何回か、『脳卒中リハビリの評価にバビンスキー反射は必要ないと思います』ということに関して書いています。  

前回はバビンスキー反射の検査の性能に関して書きました。 


今日は意思決定に関して書きます。  


2.検査結果が意思決定に影響を及ぼすか? 

数年前に出版された書籍で、脳卒中の予後予測に関して非常によくまとまった書籍があります。 


また、当時これを読みながら、関連した周辺の論文を見てみましたが、 バビンスキー反射の所見によって、下記に関して何か影響があるという論文はありませんでした 


・麻痺の回復の程度 

・ADLの回復の程度 

・脳卒中の再発率や寿命 



 また、例えば「バビンスキー反射の所見が異常である患者は転倒しやすい」などのデータがあれば、リスクを予測するためにこの検査をしておく必要があります。 


→このようなデータもありませんでした。  


回復の程度にも今後の見通しにもバビンスキー反射の評価結果は影響を及ぼしません。  


また、よく聞く論調として、 


『バビンスキー反射を含む病的反射と抹消の反射(腱反射など)の所見と合わせて解釈することで、麻痺や筋力低下に影響している部位の推測が出来て、より適切なリハビリの立案に繋がる』 


というものがあります。私は、これに対しても懐疑的です。 

なぜかというと、 


①検査の性能 

きちんと調べていないので、断言はできませんが、おそらく抹消の反射検査の性能も病的反射の性能と大差ないでしょう。となると、現代の検査としては物足りない性能です。 ですので、仮に『麻痺や筋力低下に影響している部位の推測』が重要事項なのであれば、画像診断すると思います。もししないのであれば、部位の推測は画像診断に伴うコストと比較して臨床的意義がないのでしょう。 


②意思決定 

どこの部位に障害があっても、筋力強化のメニューにさほど影響しません。そもそも患者さんは、トレーニングをゴリゴリにやる若年健常者ではないので、バリエーションに富んだメニューはこなせないです。また、『麻痺や筋力低下に影響している部位によってメニューを調整することでより良い結果に繋がる』という仮説を支持するデータは見たことがありません。 

また、予後予測にも恐らく使えません。理由はバビンスキー反射の評価が予後予測に使えないのと同じです。 


このように、性能面においても、リハビリの意思決定に対するインパクトにおいてもバビンスキー反射の評価に意義を感じません。  


神経学的検査に関して

バビンスキー反射や抹消の反射や他の検査も含めて神経学的検査なんて言います。 神経学的検査は「ハンマーとともに発展してきた」なんて言いまして、様々な検査を打腱器などを使って行って脳のどこに損傷があるかを調べていくみたいな、高度なスキルが要求される時代がありました。神経内科の先生のこういったお話を聞くと『うわ~、なんてかっこいいんだ~』と憧れます。探偵の様に神経学的所見から病巣に迫っていく思考過程はワクワクするほど面白いです。 


CTやMRIのなかった時代や性能が不十分だった時代にはこれら一連の検査は超重要な検査であったはずです。ただ、テクノロジーが進歩して時代は変わります。 

医師の診断においても、恐らくこの検査の重要性は以前と比較して低下しているはずです。となると、もともと意義があるか不明瞭だったリハビリ分野においてはその役割はより低下していると考えて良いのではないかと思います。



長くなりましたので次回に続きます。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 


次回へのリンク






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