dead law <追記>
昼間、テレビをつけたら、the Ravenmasterレイヴンマスターが新しい人になった旨が報道されていた。
レイヴンマスターというのは、ロンドン塔を警護する衛兵の中でカラス(ravenは、crowよりも一回り大きなカラス)の世話をする役職の人をいう。
昔、国王チャールズ2世(1630年5月29日 - 1685年2月6日)は、ロンドン塔に住み着いた野生のカラスを駆除しようとしたが、占い師が「カラスがいなくなるとロンドン塔が崩壊し、ロンドン塔を失えばブリテン王国が滅びる」と言うので、カラスを飼うことにし、「ロンドン塔のカラスの数を常に6羽以下にしてはならない」と命令し、ロンドン塔の警護にあたる衛兵が7 羽のカラス (王令による 6 羽と予備の 1 羽)を飼育することになったそうな。
カラスがいなくなれば、国が滅びるので、レイヴンマスターは極めて重要な職ということになる。
また、続けてイギリスには、今でもtown crierタウン・クライヤーがいると報じていた。かつてイギリスには文盲が多くいたので、法令等を公告するためのお触れ役がハンドベルを鳴らして、Oyez, Oyez, Oyez!(oyesは、古期フランス語に由来し、‘hear me '聞け、静粛にという意味)と3回叫んで知らせるそうだ。
これらは今でも行われている法だが、イギリスには、甲冑を着て議場に入ってはならないなど、死文化・空文化した法が817本もあるそうだ。
「条文だけあって、実際には効力のない法令や規則」を「死文」とか「空文」という(『精選版 日本国語大辞典』小学館)。英語では、dead lawという。
この点、学生時代の法哲学の講義を思い出した。法哲学の受講者は私一人で、テキストなしのソクラテス・メソッドだった。先生から「行われなくなった法は法なのか。」と訊かれたのだが、普段考えたことがなかったし、何か答えないと講義が進まないため、焦った。
法と道徳の違いは、強制力の有無だということを以前教えていただいていたので、「正式に廃止されていない以上、強制される余地がありますから、行われなくなった法も法だと考えます。」と咄嗟に答えた。
こんな調子で、法哲学の講義は、いつも冷や汗ものだった。
<追記>
今だったら何と回答するだろうか。
慣習法と制定法の平仄(ひょうそく)を合わせるかなぁ〜。
「慣習は、法であると確信されることにより、慣習法になる以上、慣習法は、その法的確信が失われることにより、法ではなくなります。そうであるとすれば、制定法も、正式に廃止されることにより、はじめて法的確信が失われたことが確証され、法ではなくなると考えられます。したがって、行われなくなった法は、正式に廃止されるまでは法であるということになります。」
間違っていても、責任を負いかねるので、悪しからず。
実際、死文化・空文化した法律が復活することもある。この点については、以前述べた。