Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

しのろ駅前医院

赤字の介護施設、膨らむ自治体支援 せたな町5年で1.2億円、中頓別町は施設町営化

2024.03.12 21:56

2024年3月11日 11:32(3月12日 20:00更新)


 経営難に陥った特別養護老人ホームなどの介護施設に対し、多額の財政支援を講じる動きが道内市町村に広がっている。地域の高齢者福祉の拠点と雇用の受け皿を守るためで、1億円超の支援に踏み切った自治体のほか、赤字施設を町営化する全国的にまれなケースまで出ている。人手不足や物価高騰で地方の介護施設の経営は厳しさを増しており、自治体の財政負担はさらに膨らむ恐れがある。

 全国老人福祉施設協議会(東京)によると、全国の特養老人ホームのうち、2022年度収支で赤字だった施設は62%に達し、自治体からの補助金を算入しても51%が赤字だった。道内も同様の傾向とみられ、職員不足で入居者数を制限せざるを得ず、収入減に陥っている施設が目立つ。

 実際、檜山管内せたな町の特別養護老人ホーム「せたな雅荘」は人手不足で19年に休止に追い込まれた。町は22年度からの5年間で計1億2500万円の支援を決定。運営法人はこの資金などを活用し、外国人技能実習生らを採用して22年11月に運営再開にこぎ着けた。

 日高管内浦河町も昨年9月、町内唯一の特養老人ホーム「ちのみの杜(もり)」の運営法人に3年間で最大4500万円の支援を決めた。

 施設の定員は50人。昨春まで満床に近い状態だったが、人手不足のため入居者を35人に制限した。年換算で6千万円の減収が見込まれたため、法人が町に支援を求めた。

 これまで市町村による支援は、建設費や修繕費などへの助成が一般的だった。自治体が実質的な赤字補塡(ほてん)に踏み込むのは、施設廃止が地域の福祉サービス低下や人口流出に直結する深刻な問題だからだ。

 宗谷管内中頓別町は4月から特養老人ホームと養護老人ホームの「長寿園」を町営にする。運営法人が昨年6月、赤字続きの両施設の移管を町に求めていた。

 両施設への運営補助金は23年度に約7900万円まで膨らんでいた。小林生吉町長は「地域の医療と包括ケアの一体的な見直しを進めており、町主導で経営改善を図りたい」と語る。

 社会福祉法人栄和会(札幌)の常務理事で、全国老人福祉施設協議会の瀬戸雅嗣副会長は、高齢者人口が減り始めた地方の介護施設の経営環境は厳しさは増していると指摘。「町営化は珍しい取り組みで、地方の施設を残す一つの方法になり得る。人件費の一部補助など自治体による柔軟な支援も今後重要になる」と話す。



 宗谷管内中頓別町が4月1日から、経営不振にあえぐ介護施設の町営化に踏み切る。町財政の負担増や施設職員の確保など懸念も多いが、住民に老後不安を抱かせないためには地域唯一の介護施設の存続が不可欠だと判断した。社会福祉法人が運営する赤字施設を自治体が引き継ぐのは極めて珍しく、中頓別の取り組みは介護施設の存廃問題に苦悩する多くの市町村にとっても試金石になる。

 「介護施設がなくなれば、住民が最期まで地域で暮らすことが難しくなる。それは避けないといけない」。小林生吉町長は特別養護老人ホームと養護老人ホームの「長寿園」を町営化する理由をこう説明する。

 長寿園は職員不足などで稼働率が低下し、物価高騰の影響もあって約10年前から赤字が続く。町は運営する社会福祉法人「南宗谷福祉会」の求めに応じ、2021年度から施設運営の補助を開始した。

 町が23年度に施設に給付した補助金は約7900万円。同年度当初予算の一般会計が45億円の同町にとっては大きな支出だ。だが南宗谷福祉会は収支を改善できず、23年6月に運営継続は困難と判断。施設の町営化を町側に申し入れた。

 地方の介護施設の経営が行き詰まり、社会福祉法人や企業が運営から撤退する事例は後を絶たない。中頓別町に隣接する宗谷管内浜頓別町でも17年度に旭川市の法人が特養から撤退し、地元の法人が引き継いだ。

 留萌管内遠別町では本年度に旭川の法人が特養などからの撤退を表明。同町は後継を探しているが、依然見つかっていない。

 中頓別町も21年度以降、長寿園の立て直しに向け、福祉系専門学校や大手法人に経営手腕が期待できる人材の派遣を依頼したが、「そんな余裕はない」と一顧だにされなかった。施設を引き継ぐ法人探しも難航が予想される中、同町は施設を存続させるには町営化しかないと決断した。

 町が新年度予算に計上した両施設分の財政負担は約5900万円。職員配置の見直しや養護老人ホームの定員削減などで増収とコスト削減を進めることを想定し、23年度の補助金より約2千万円少なく見積もった。

 町営化に伴い施設で働く職員の大半は町職員となるため、町側は安定志向を持つ人材を確保しやすくなるとみる。実際、1月に派遣期間が満了した職員1人が町営化に魅力を感じて正職員になるなど、人材の定着効果も出始めたという。

 ただ施設運営が町側の想定通りに進むかは未知数だ。介護業界の人材争奪戦は激しさを増しており、大手事業者の介護施設が多い札幌でも人材不足は慢性化している。

 中頓別の施設が町営化後も人手不足が解消されず、施設の稼働率が上がらなければ町の財政負担は重みを増す。さらに町には施設運営のノウハウが蓄積されておらず、経営を主導できる人材の確保や離職防止も課題となる。

 「施設運営や財政負担への不安は正直ある。ただ、町民に広がりつつあった老後への不安は解消できたのではないか」。小林町長はそう本音を漏らす。

 日本医療大の忍正人准教授(地域福祉学)は、自治体の直営化は地域に介護施設を残す選択肢の一つとして注目すべきだとした上で「結果的に市町村の経費が増大しないよう注意が必要だ」とも指摘する。

 忍准教授は町営化に限らず、市町村に経営支援を求める施設は今後増えるとみており「自治体は事業所の経営状況を分析し、収支の見通しを立てた上で支援を講じることが重要」と訴える。


北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/985788/



介護人材確保など要望 高齢者福祉計画委 網走市に意見書提出


 【網走】網走市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定委員会(山崎徹委員長)は、意見書を水谷洋一市長に提出した。

 8日に市役所を訪れ手渡した。意見書は2024年度~26年度の網走市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定にあたり、委員の意見をまとめたもの。介護従事者の確保や地域包括ケアシステムの推進などを求めた。

 山崎委員長は「適切な対応をお願いしたい」と求め、水谷市長は、人手不足の問題を指摘した上で「市としてもしっかり対応する」と語った。

北海道新聞よりシェアしました https://www.hokkaido-np.co.jp/article/986480/