第15話 とある自宅警備員の話
「何かすごいことになっているな」
俺はネットサーフィンをしながら、情報を纏めていた。要約って感じだが、異世界に転移してから一週間ぐらいして倭国はようやく一般市民に倭国が国ごと転移したことを公表した。
「お兄さん、今日は何頼めばいいのです?」
「照り焼きビーフサンド」
「どれなのです……」
「今持っている奴の右上から下に三番目」
召使は困ったように注文書を見ながら何か言っている。それを聞きながら、俺は画面に向き直る。公表こそされていないが、この間に倭国は自衛隊を極秘裏に海外派遣しており、戦争に出している。あくまでも情報を見るに後方支援だけで戦争に全面から出たわけではないのでこのまま無かったことにするつもりだろうが、どうも異世界転移してはずれのような世界に来た可能性が高い。何せ何か友好的な種族が『神様! 我らはあなたをお守りいたします』みたいな話に行かなかったみたいだし。
「お兄さん、この電話って道具どうやったら使えるのです?」
「はあ。貸せ、俺がネット注文する」
「あくまでも電話は出来ないのですね……」
そう言われながら、俺は情報をまた見る。これ以外にも現在の倭国の位置から見て北西の位置にある大陸にあるオルギウス王国、というかこの国を守るために派兵したみたいだな。それに、エルフ、森の民とも書いてあるから何か呼び方に意味があるのかもしれない種族とも条約を結んだらしい。
そして、迎賓館にて後日他種族を招いて実務者協議を行うと。参列者は外交官や各国の国王水から来る国もあると。
「相当力が入っているな」
「あの、お兄さん」
「ん? もう届いたの?」
「はい。ですが、二つあるのですが」
「片方はおまえの分。いるだろう」
「ありがとうございます。ところで、出ない方が良いって言うのは」
「俺の親に見つかると厄介なことになる。だったらこの部屋にいてもらった方が良い……お前! 受け取りに行った時に見つかっていないだろうな!」
「そ、それは大丈夫だと思うのです」
「良かった。でも、翻訳用の指輪を持っていてよかったよ。お前に大切な話を伝えることが出来る」
「何です」
「お前の国に帰れるかもしれない」
「本当ですか!」
「今度の異世界の国と倭国の協議にお前の言っていた国の外交官も参加するらしい。よければ俺が知り合いに連絡して迎えに来てもらう様に伝えるけど」
「おい! うるせえぞ!」
「まずい、隠れて」
そう言って俺は召使をベッドの裏に隠した。
「何こそこそしているんだ」
「いや、なにも」
「お、何だ金あるじゃねえか」
「まって、それは今度ゲーム買うための」
「うるせえ!」
「うぐ!」
俺は父親の腕の一振りで吹き飛ばされる。
「金が無くなったら、お前に何が残るんだよ!」
「う、ぐあ、がっ」
「お前は俺のために金さえ稼いでればいいんだよ。だってお前は、超級の自宅警備員だからよ」
そう言って、あの男は俺の部屋を出て行って金を持ち去る。
「だ、大丈夫なのです?」
「大丈夫、ハンバーガーも咄嗟に隠しておいてよかった」
「でも、傷が」
「この位二日もすれば塞がるよ。それよりばれないように動こう。俺だってこれでも、天下原学園の生徒だからね」