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桑鷹三好の遊び場

第20話 実務者協議3

2024.03.13 12:43

それからというもの、弾丸的に行われた要人の倭国観光ツアーは大変なことになった。

「久しいな、お前達」

「精霊さんの導きに従って、お手伝いに来ました」

 超級の陰陽師、宇治院陽明。

 超級のシャーマン、榛葉朱美。

 二人が東京駅に現れたのはその時だった。

「何で昨日のタイミングでホテルに来なかった訳」

「昨日は会うには運気の流れが良くなかった。それだけだ」

「精霊さんは、電車の中で会うのが一番だって言っていたの」

「……」

「赤竜様、自分は雨林の民ウジャバナです」

「雪山の民のワバナ。お会いできて光栄です、氷竜様」

 離れた席では、赤竜及び氷竜に挨拶している二人が連れてきた人達がいた。どうやら、地域信仰の対象だった竜が目の前にいて大変なことになっているらしい。

「そうだ、私の占術とこいつの宣託で同じ話が出たから伝えておくぞ」

「これから沢山の同級生の人たちが、今回いる人達のお知り合いと一緒にいるみたいなの」

「はあ」

 という訳で、日本観光をしながらあちこちでラリーの如く今回の要人の人達の知り合いと、向かう先向かう先で出会うのだった。

 二日目、豊洲市場。

「ダーリン、これ食べちゃダメ?」

「姫! ダーリンなどと軽々しく言わないでくだされ!」

「やぁ! 私ダーリンと結ばれるの!」

「離れてくれ、仕事が出来ない」

「いやあ、お熱いねえ。あの駄々っ子の源勝が」

「うるせえおやじ!」

「……」

沖田源勝、超高校級の釣り人が海の民の族長の娘、レミーア・ミドガリスに好かれていた。

三日目、長野県某所。

「父上、これを見てくれ」

「これは中々の剣だな」

「ああ、しかもこれを魔法無しで作ったって言った。どう思う」

「そんなの不可能だろ、魔法無しで。こんなに強い剣を作るなど」

「……何度も言っている。剣じゃなくって刀。別の物だと。それに、俺は自分の惚れた刀の伝統引き継ぐためにやっているのであって、誰かとなれ合うつもりはないと」

「……」

 篝和音、超級の刀工。鉱山の民、ドワン・ウドーフの娘ドワン・レネスを感激させていた。

四日目、愛知県名古屋市。

 

「見てください! この車という物を! 魔法で動いていないのに時速は最高三百キロも出せる種類もあるという移動手段です! これが普及すれば、物流革命が起きますよ!」

「落ち着いてください、だとしても技術輸入に関しては慎重になるべきです」

「ですが、もしよいお返事が聞けそうであればぜひ私にお話しください」

「はい!」

「王子!」

「……」

 豊橋愛奈、超級の整備工が巨人族の皇子スルス・グランバを感動させていた。

五日目、岡山県某所。

「うん、美味い」

「海の民でも初めてですか」

「生では魚は足が速いから食べた事などないが、こんなに美味いとは」

「それはありがたいです」

「だから言っただろ親父。玉生はすげえんだ」

「……」

 越前玉生、超級の板前が魚料理を振舞い海の民の族長とその息子オリバス・オドンを喜ばせた。

六日目、鳥取県鳥取砂丘。

「似ているな。我が国に」

「本当にでしょうか、叔父様」

「いや、違うな。海が見える砂丘など、わが国でも考えたことはなかった」

「この倭国と言う国は地下資源、砂のずっと下に眠る資源にも価値を見出す国です。もしかしたら、わが国でも多数の交易品を見出してくれるかもしれません」

「そうか、そうだと嬉しいな」

「ありがとう牧夫、私たちの国に希望を持たせてくれて」

「いや、実際に見てみないと分からないし。まずはその後ですから」

「ですが、我が国はあなたのお力が必要です。もしこのような海の見える砂丘が観光地として出来るのであれば、我が国に大きな貢献がもたらされます」

「よろしくお願いいたします、牧夫」

「……」

 ネガジャ国第一王女、ネビルス・ネガジャと接触した緑園牧夫、超級の環境委員が何か希望を抱かせていた。

 七日目、赤坂離宮。

「皆さん、お待たせいたしました」

 ここにまた、全員が集まっていた。音頭を取るのは兄貴の笠松奥儀。

「これより、実務者会議を行いたいと思います」