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桑鷹三好の遊び場

第24話 エルフとの交流の一幕

2024.03.13 12:50

ズバン!

「ストライク!」

「いやあ、お前の球はやっぱり滅茶苦茶で打てないから新鮮だな、軍」

「ふざけんな! 他の選手には普通に打たれるんだから、おかげでネットでは亮太特攻とか言われているんだぞ! いい加減超級の野球選手なら打てよ!」

「いやあ、どうもお前の球見るとい感覚が狂ってよ。本当に楽しいな」

 とあるスポーツ施設の野球場。そこで俺は、同級生と野球をしていた。

 ズバ!

「ストライク! チェンジ!」

「ちぇ、今回も駄目か」

 そう言って、超級の野球選手である御園亮太は交代して次のバッターが出る。

 ズバ!

 カキーン!

「ほらあ!」

 そう言って、俺は撃たれたボールが高い弾道を描き観客席に届くさまを見届けることしか出来なかった。

 試合終了後。

「この時だけは亮太に勝てるんだよな」

「普段はエースとしての実力をいかんなく発揮するのに、軍相手のボールだけは途端に亮太が弱くなるから不思議だよな」

「まあ、その代り軍のボール以外はどんな球でも打ってやれるから俺がいれば百人力よ」

 そう豪語しているのを聞きながら、俺は隣で野菜をもりもり食べているアルテアに話を振る。

「本当に平気なのか。ここ焼肉屋だけど」

「野菜だけで私は構わないよ。肉は文化的に食べないと理解は得られたしな」

「でも匂いとか」

「ああ、確かに最初に煙の臭いは嫌だと思ったが、それを言っては私に合わせてもらいすぎだしな」

 そう言っている彼女に、俺の方こそ申し訳なくなった。彼女たちの文化では、煙は不吉な事の前兆である。何せ、森が燃えるときには煙が必ず起きるからだ。だからこそ煙の臭いに極端に敏感な彼女たちに焼肉屋に招くのは申し訳ないのだが、それでも彼女たちが希望したのである。

「ソフトボールとの違いは何ですか」

「ソフトボールは投げ方も違うし、広さも違う。野球よりはグラウンドの狭いイメージかな。だからこそ野球では許されているルールが認められていないルールもあって、そこには注意が必要だと思う」

 そう言ってメモ帳にメモをしていくのは、エルフの少女たちである。彼女たちはエルフの中では倭国に対して興味が強い人たちの一部で、今回スポーツと言う文化に興味を持って親善大使としてやってきた人たちだ。先ほどの俺の参加した試合も、彼女たちにデモンストレーションとして見せられた試合である。何故プロ同士ではなく俺がやらされたのか理解不能だが。因みに興味を持たれた理由だが……。

「あの、これ私たちが作ってみたボールなんですが」

「うーん、木製か。どう思う」

「重さは良いけれど、感触が違うよな。バッドが完璧すぎただけにボールも拘りたいのは分かるけれど、そんなに拘ってどうするのとは思うよな」

「ですが、地に帰らない素材で出来ているものを扱うのは憚れるので、せめて木製で代用できないと」

「それって俺達に何か出来るのかなあ」

 そんな風に熱い議論が交わされていた。

 倭国が異世界転移したことを国民に公表して早一ヶ月程度、爆速的に倭国は各国の種族や民族との交易や交流などが盛んに行われていた。

「そう言えば、鳴滝の野郎はどうしたって言っていた」

「どっかに相撲について教えに行くって言っていたよな」

「申し上げにくいですが……鉱山の民ですね」

「おい、エルフと鉱山の民ことドワーフは仲悪いんだぞ」

「あ。ごめん」

 美園の謝罪に、俺がため息をつく。現在俺こと笠松軍はエルフたちを主な相手として外交的な橋渡しをしている。これは、一番最初に俺がアルテアと出会い現在の主な外交大使としてアルテアが活動していることに起因している。そして、俺は天下原学園の伝手を全力で利用して、御園とかに頼んでエルフが知りたがりそうな事を教えてもらっている。

「でも、正直良かったよ」

「え」

「俺さ、倭国に突然起きたら帰っていた時はびっくりしたんだ。俺が寝ていたのって米国じゃなかったのかって思ったのに、起きたら倭国にいるんだもの」

 そう言いながら、ウーロン茶をごくごく飲みながら御園は語る。

「だから、最初はチームのいる米国に帰ろうとしたのに、飛行機が出る予定が無いって言われて焦ったよ。それに、異世界に転移したって言われた時には絶望したね。ああ、俺のチームメイトの元に帰れるのが何時になるか分からなくなったって」

「御園」

「でもさ、倭国で昔のチームメイトが迎え入れてくれたおかげで、どうにか倭国のプロ野球チームで契約結べた。卒業後の道も何とか開けたよ」

 ありがとう、そう御園は頭を下げてきた。

「止めてくれよ。俺は兄貴に外務省に強制的に入れられたから仕事のことなんか何も手伝っていないのに突然頭下げられても困るって」

「でも、新しい国と関係を持とうとしている同級生たちと同様に俺も動けるって道を示してくれたのはお前達だ。今俺のいる球団も他国に新しい球団を作れないか模索しているところなんだ」

 俺も将来のコーチになるかもなって笑っていた。一時は混乱した異世界転移だったが、どうにか上手く行っているようだった。

「緊急のニュースですが入りました」

 そんな時だ、テレビからそんな声が聞こえたのは。

「倭国の観光客が大量に虐殺されるという、痛ましい事件が起きました」

 え?