第27話 超級のシャーマン1
「よろしいのでしょうか?」
「何度もしつこいぞ。我が国は貴様らに属国に下るよう何度も伝えたはずだ。しかしそれをはねのけたのは貴様ら。我らの意志は変わらん」
「我が国の観光客を不当に殺害した謝罪もないと」
「は。不当に殺したことなど、一度たりともないわ」
「兄貴からはこう聞いた。移動中だからこそ聞けなかったけれど、総理大臣も緊急事態宣言を発令して、自衛隊の海外派遣に俺達を送り出したことも伝えたらしい」
「越前や緑園は後方支援となりあくまでも前線には出ない。それどころか、輸送しといてなんだけれど送ったのは前面で戦う想定の落合君と宇治院君非常事態用の軍君あなたに私、そして伝達用の一宮ちゃんだけ」
「俺はまあ極秘とはいえ実績があるから仕方ないよね。ところで、アルテアたちは」
「手紙を預かっている」
後藤は一枚の手紙を差し出す。
『どうにかエルフの力で今回送り出す人員分の魔法の発現は可能とした。しかし皆戦略級かそれに劣らずとも十分な能力を発現するだけに倭国は異端な国だと思う。どうか力の使いどころを間違えないで欲しい』
その後は色々俺の身を案じてくれる内容が書いてある。そして、俺はその足で作戦会議室に通される。そして、現状の作戦を共有する。
「とりあえず、まずは落合君と宇治院君の護衛で軍君を今回衝突するとされる予定地の目前まで進行してもらったら、そこに前線基地を築くわ。場所はこの位置から三十キロメートル程度後方が希望ね。大体この辺」
「山の上に陣を構えるのか。ふふ、近代兵器の前では敵はなすすべもないだろう」
「宇治院君注意して。相手は魔法使いだっているかもしれない。全てが終わった後に火力を出しすぎたとか反省するのは良いけれど、始まる前にそんなことを話していたら足元をすくわれちゃう」
「陰陽道と魔法は違う力だが大変似ていた。その俺が保証する。この戦は勝ち戦だと。敵の力からして大したことは無い」
「怖いからやめて。でも、まずは三人で向かってもらうことになるから、お願いね」
「分かった」
そう言って、俺達は進路を南西に取る。
「あれがヲルーク平原」
「敵はあそこに篝火が見えるだろう? あれが敵の野営地だ」
「作戦決行は明日。それまでに、転移魔法を使っての物資の運搬に戦車なんかの配置も終えないといけない」
「それに、終わっただけではなくもう一度大きく移動もしなくてはいけないのだったか」
急ごう、その言葉に頷いて、俺と落合は転移魔法を使う。そして、そこから戦車や輸送車両が入って来るのを眺めるのだった。
「やっぱり精霊さんの言うとおりだったのです」
「これは、一体」
「自衛隊の隊長さん? 普段後藤ちゃんをその場の判断でとか、独断で動くだとか色々言っているなら、今ここで放置する決断するのです? 倭国に問い合わせるとか悠長な事言うのです? 分かっているのですよね? 傷はまだ新しいってことを?」
「……」
魔法で治療を行われる傷ついた大男を見ながら、自衛隊の隊長は思案した。現在国家要請で呼び出された自分達は、別勢力に攻められているのかもしれないことに。