北九州 小倉・ジャズ喫茶オム ③18/11
北九州に定期便があるスターフライヤーさんのフリーペーパーでも紹介された北九州・小倉にあるジャズ喫茶オムさん。
マスターのいかにも職人といった風情のカッコいいこと!
でも確かに、このマスターのオーディオ道にかける情熱ぶりにはいつも感心させられます。
前回訪問した際にはオーディオ・システムそのものではなく、鳴らす空間側(部屋の天井等)に手を入れることで音質改良を図っておられましたし、今回も更にシステム改善を図っておられる等、色々あったのですが、一番面白かったのはお持ちのCDを処分され始めたことで生まれたというエピソード。
「聴いて良かったから買おうと思ったけど、どこにも売っていない」と言うお客さんが多いことから始められたそうなのですが、何とそれを買ったお客さんから結構クレームが入るのだとか。
曰く、試聴した時より音が悪い。。。でも、それは当然、そうなるでしょう!
そのラインナップがコアなので試聴出来ること自体はとてもありがたいのですが、自宅のシステムが余程のモノでない限り、このお店で聴いたとおりに鳴ることもないのは自明の理。もしご購入される際には、くれぐれもご注意を。笑
ちなみにこの陳列棚はギター修理等、木工細工のプロでもあるマスターが製作されたキレイな逸品で、どうせならこの棚も発売しませんか?とお願いしたほど。
また、この下の写真の「銀界」は、尺八とジャズとの競演や京都で発見された(?)ゲーリー・ピーコック(b)で知る人ぞ知る和ジャズの名盤。。。以前、長崎・波佐見のDOUGさんで聴いて以来だったのですが試聴したらやはり良くて、自宅でどう鳴るかも考えず、思わず購入してしまいました。
これは面白いというより驚いたことですが、マスターの理念「どんなジャンルの音楽でもありのまま鳴らせるよう、周波数特性はフラットであるべし」については以前から知っておりました。でも、オーディオ調整もそのお言葉どおりに行っておられるようで、通常よくあるレファレンスCDでの調整はされないとのこと。
それはあくまでチェック用として使うだけ(注1:オーディオ・マニアの方へ)で、基準は先入観なく、あくまで客観性を保てる物理的な指標=周波数特性。
複雑で奥の深いオーディオの世界において、客観性を保つ努力をしないといつの間にか自分の音を見失うという熊本・八代のファーストのマスターから教えていただいたオーディオ・マニアの王道を歩む方の見識を思い出し、とても印象的なお話でもありました。
さて、そんなマスターが今回改善された物理的なポイントは3点(内、1点は調整中)、見た目の変化が1点ありました。
①ウーハー前の2本の鉄のバーを縦に1本つないでその剛性を上げたこと、②ネットワークではうまく補正出来ないとのことで、ウーハーに続いてツィーターにもレゾネーターを追加されたこと、③バスレフ孔に棒を差し込み、その容量を調整中という3点と、計測された左右のスピーカーにその周波数特性を貼っておられたこと。
これらの改良はその理念に一歩でも近づくための工夫で、その結果ですが。。。定位感が以前より上がったような気がしましたが、これはあくまで私の印象。
先日の阿蘇・ウッドサイド・ベイシーさんでも感じたことですが、その場で聴き比べないと絶対という自信はありません。苦笑
今回は色んなCDとSACDの聴き比べをしたのですが、実は偶然の産物で、私の持って行ったSACDを試しにCDモードで鳴らしたら大きな違いがあり、他のを聴いてみるとどうなるんだろう?と面白くなってあれやこれやと聴き進めただけ。
ただ、このお店のスピーカーが入力された音のまま、味付けがないことを旨とするモニター・スピーカーなので、その音源の違いがよりわかりやすかったようにも思います。
その結果は、基本的にその空気感においてSACDの方が圧倒的で、ウッドサイド・ベイシーさんでのブルーレイ・オーディオとの聴き比べと同じような結論でした。
ただ、ジャンルや録音等によってその効果の大小があることもわかり、それはそれで面白い実験でもありました。
あと興味深かったのは最近、発売されたハイレゾCDという新たなフォーマット(注2)のサンプラー。
聴かせていただいた限り、良さそうに思えましたが、フォーマットが乱立したこのタイミングのことでもあり、世の中の動静を見守りたいと思います。
そんなことをしている間に今回もあっという間に時間が過ぎ去ってしまいましたが、また機会を作って伺いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【駐車場:お店の前に2台、喫煙:不可】
(注1:オーディオ・マニアの方へ)マスターのレファレンスCDは、ケニー・バレルのミッドナイト・ブルーですが、どのように聴いておられるかを聞いてみました。
①1曲目Chittlins Con Carneではボンゴの音のつながり具合をチェック、②ギター・ソロの時にアンプのサァーというノイズ音が聴こえるかどうかをチェック。レンジが狭いと聴こえない、③テナー・サックスのスタンレイ・タレンタインの音を聴く。昔、実際にPAをやってよく知っているから、④4曲目Midnight Blueは昔よく練習したから、だそうです。笑
ちなみにこれらのお話を聞いて思ったのですが、マスターがよくおっしゃる「オーディオはその音源のデータをそのまま取り出す道具」「スピーカーは楽器ではない」等のお考えは、マスターがギタリストを目指された過去やライブPAをご職業にされておられた経歴、また現在ギターの補修等をされておられる中で育まれてきたのではないでしょうか?
その方が目指しておられるオーディオの方向性からその方の人生が透けて見えるように思えるのも、オーディオ趣味の奥深い所です。
(注2)ハイレゾCDはMQA-CDという規格のようで、CDジャーナルによれば「CDなのに、MQA対応の機器をつないだり対応のソフトで再生するとハイレゾ音源として再生される。352.8kHz/24bit音源をMQA技術で記録したMQA-CD。従来のCDプレーヤーで再生しても、MQA-CDのほうが明確な音像感」とのことです。