第4話 アルバンの授業風景1
セレアハートと決闘をしてから一ヶ月が経った。あれからあいつは俺に挨拶をすることはなくなったが、一緒に授業を受けている。
座学の授業は正直苦痛だった。どこかの国の歴史だとか、知らない名前の植物と水が融合した時にどうして空気中の温度が下がるのかを説明され、そしてそもそも剣士に必要なのか分からない魔法でしか使われないルーン文字を勉強させられて苦労している。
俺なんか毎日共通語だって覚えないといけないとか言われて、専用の課題リストを渡されているっていうのに、卑怯である。
同じく共通語の専用課題を渡されているはずのナインっていう女は課題を毎日苦労もせずに提出しているし何なんだと思う。
アクモシスは、共通課題は無いのかもしれないが、毎日なんか知らない道具を丁寧に磨いたり調節したりしているし、よく分からない。
マルクスは課題がある訳でもないのに先生に毎日課題を先生にもらいに行っては勉強していて、変な奴だなって思っている。
そしてセレアハート、あいつは苦労している様子もなく毎日課題を終えてはこっちを見て偉そうな顔をしてくる。むかつく奴だ。
「はい、これ、今週の小テストの結果ね」
そして、毎週理解度を図るためだとか言われてやらされるテストも苦痛だった。俺は100点満点中の30点。共通語を書くのだってまだ出来ないっていうのにどうしてやらなきゃいけないのか。でも温かい寝床と食事は捨てがたいし。
そして、座学が終わった後の授業は剣術や体術の授業だった。先生曰く、朝の脳が活発に動きやすい間に座学を終えて、昼間以降の脳が少し疲れてくる時間に合わせて体術や剣術、他に人によっては魔法の実戦練習をするようにしたんだって言っている。
だからこそ、俺は午後の授業からが本番だった。
「良い筋しているぞ、大分広く視野が見られるようになってきたなあ、アルバン」
「ありがとうございます!」
今教えてくれているのはエボルド先生。なんでも、北の国で今は剣闘士として働いている元奴隷だが、あまりのその強さから最近は嫁まであてがってもらう事を許されたらしい。ほとんどの剣闘士が過酷な環境で働いている中で考えると、とっても強くて尊敬に値する先生だ。
「よし、一度休憩挟もう」
「はい」
そして、俺は運動場のそばに置いてきた水を飲みに行く。
「アルバン、お前座学最近身が入っていないらしいな?」
「うぐっ」
なんでそれを知って。
「広瀬先生から聞いたんだ。他の先生からも座学の居眠りしている数がちょっと多いから注意してやってくれって」
「良いんですよ、どうせ俺剣術しか鍛えませんから。それさえできれば魔法なんか出来なくたって」
「そう思っていたよ、俺だって」
「え?」
「でもなあ、違った。俺は5期生、つまりアルバン君より4期生早く入学して、そして卒業したが、その間のスパン長く生き延びられたのは魔法のおかげなんだ。それも、このクラスで学んだな」
「……なんで、そんなことを」
「教えるからだよ。今日から付与魔法を」
「付与魔法?」
「確かエンチャントって言ったかな? とにかく、魔力を使って武器による相性とかを覆すための魔法を付与魔法って言うんだけれど、本来は立派な古代叡智エンシェントテクノロジーで、失われたはずだったんだ。なのに、このクラスではそれを出来るかもしれないってことで呼ばれたらしいのが俺だったみたいだ。そして、俺様は期待に応えて付与魔法の使用者としているんだ」
「つまり」
「君には付与魔法を教える。俺様位沢山使えるようになれとは言わないけれど、負けないでくれよ」