第9話 医務室での一幕
「ハッ!」
起きたのはどこかの医務室だった。いや、この見覚えのある医務室の様子は……。
「中央学院」
『アルバス君!』
「ナイン?」
「アルバス君」
「よかった、無事だったんですね」
「マルクス、アクモシス」
「起きたみたいだね」
「広瀬先生」
「とりあえず、何処まで覚えている?」
「……魔力枯渇症を起こして、倒れた所までは」
「そうだね。じゃあ、エボルド先生よろしくお願いします」
広瀬先生が現れると、エボルド先生が入れ替わりに入って来る。そして。
「アルバス、歯を食いしばれよ」
パンッ、と思いっきりひっぱたかれる。
「ちょっと先生、ここ病室」
「おまえ何でドラゴンに向かって行った? 勝てる勝算があったとか言う訳じゃないよな?」
「……街がドラゴンに襲われているって聞いた時、いてもたってもいられなくなりました」
「短絡的過ぎ。それで今回は助かったが、もし負けていたらどうするつもりだったんだ。実際、これが帝都じゃなくって迷宮ダンジョンだったら誰も助けてくれる人はいない状態で魔力枯渇を起こしていたんだぞ」
「……」
「俺からは他にも色々言いたいことはあるけれど、そろそろ先生に引き継ぎます」
「え、もういいの?」
「これ以上言うと言いすぎる気がしますんで。先生お願いします」
「分かった。久しぶりだね、アルバン君」
「広瀬先生」
「とりあえず、俺から言いたいことは一つ」
「……」
「よく頑張った」
「え?」
「確かに君のやったことははっきり言えば危ないことかもしれない。けれど、それを讃える声は多い。実際俺も教師として俺の見ない間にこんなに成長してくれたことが嬉しい。そして、君を讃える声を代表してエボルド先生の代わりに言ってあげる。よくやった」
「先生」
「とりあえず明日から早速忙しくなるだろうけれど大丈夫かい。体が動きそうだたら早速竜の解体や処理にかかった費用と、色々なお肉やら臓器やらの売却額に関する査定の同意書なんかに署名してほしいんだけれど」
「え、あの、はい」
「とりあえず、ナイン、マルクス、アクモシス、帰るぞ。君たちは授業が午後からあるんだから」
『先生、もう少しいさせてください!』
「そうですよ、僕達話したの三日ぶりですよ」
「いくら何でも早すぎます」
「おい、俺三日も眠っていたのか?」
確認を取ろうとしたが、結局三人は広瀬先生に追い出される形で医務室を出てしまう。
そこで、ベッドに倒れこむともう一度深い眠りに落ちそうなくらいにまだちょっと疲れていることに気が付いた。それでも、眠りたい気分ではないので気になったことに施行を巡らせていた。
セレアハートは何で来てくれなかったのだろう。