第15話 中間試験4
「お疲れ様、ナイン、アルバン」
「お疲れ様です先生」
『お疲れ様です』
「アルバンは負けたばっかりの所で申し訳ないが次早速試合だ。セレアが回復し終えたからミルミスに治療してもらえ」
そう言うと、一人の少女に回復魔法を施される。
「とりあえず回復魔法はこれで大丈夫でしょう。あとこれ、魔力を回復する丸薬。気持ち程度に食べておきなさい」
言われるままに俺はそれを口にす。
「あ、甘い! 甘すぎる……」
「何と、一応薬のつもりで作ったし、飲みやすさを重視したつもりだったのだが。そんなに甘かったか、人間の味覚に近づけるのは難しいな」
なんかまるで自分が人間じゃないみたいな言い方をしているが、甘いこと以外にさっきの薬に対する不満はなかった。魔力がどういう理屈かどんどん回復するのを感じる。
「じゃあ、とりあえず向かい合ってもらおうか。アルバン、セレア、準備を」
広瀬先生にそう促されて、俺達は向き合う。
『セレアハートさんは魔剣による遠距離魔法も剣術による攻撃も強力なオールラウンダーです。正直弱点と呼べる弱点はないですが、最近なぜか心を乱しているみたいなので剣に乱れがあるとエラ先生はおっしゃっていました。もし何とかするとしたらそこが勝機かもしれません』
それ、弱点かよと思ったが、そうは言っていられない。マルクスの持ってきてくれた重要なアドバイスだから。とにかくこの勝負で勝たないと勝ち星ゼロで終わってしまう。それはセレアハートも同じ条件かもしれないが、そんなこと言っていたら負けてしまう。
「行くぞ」
「……」
「はじめ」
その声が聞こえると同時に、セレアハートはまっすぐつっこんで来た。だからこそ俺は……。
「え?」
「は?」
剣をはじき返して、相手の剣を飛ばして、そのまま自分の剣をセレアハートの首筋に突き付けた。
「勝者、アルバン!」
広瀬先生の声が聞こえるが、俺はそのあっけない試合の終了に違和感を感じた。あんなにセレアの剣って軽かったっけ? これでは、俺が最初にセレアと戦った時より軽かった。
「ちょっと先生!」
そこでセレアは広瀬先生に詰め寄る。
「待ってください! まだ私は!」
「剣を落とした、首筋に剣を突き付けられた。次の攻撃が出来なくなった。これ以上の敗北があるか?」
「ですが!」
「見苦しいよ、セレアちゃんだっけ?」
「何ですの? これは大切な!」
「大切ならさあ、自分の中の雑念位何とかしてから来なよ。一番今回戦った中では良い装備持っているのに、もったいない」
「何ですって!」
「何より」
そこで、俺に治療をしてくれた人は目の前でセレアハートの腕をつかむとあっさりと目にもとまらぬ速さで地面に転がした。
「私より弱い。回復術師の私よりだ」
「ミルミス、止めてくれ」
「すまない、先生」
そう言うと、ミルミスと言う女性はおとなしく引き下がる。
「それじゃあ、今日の試験は終了だ。アクモシスはまた整地だけしてくれたら帰っていい。明日も試験はあるから頑張ってくれよ。明日は一番比重の高い任意科目だからな」
そう言って、俺達はこの日解散となり授業が終了したが、セレアだけは何時までもどこか上の空な表情をしていた。