第21話 悪魔契約5
「セレアちゃんは、大丈夫ですか?」
「ああ、意識を失っただけ。と言うより魔力枯渇を起こしただけだな」
「何だ、よかった」
「お嬢様! ご無事ですか!」
そこで、図書室に執事服の初老の男性が飛び込んでくる。
「先生、この人は?」
「セレアの家の執事長だそうだ。この間中間試験の成績の通知表を送ったら、それに不満があるとかで確認に来ていたんだ」
「え、それじゃあ」
「先生、今回のお嬢様の悪魔契約の件、お嬢様が一番悪いとはいえ学園を非難させていただきますよ」
「ええ、仕方ありません」
そう言うと、執事長は足早に図書室を後にした。
「ナインとセレアを医務室に運んでくれ。直ぐに俺も向かうが、ちょっとだけ待っていてくれ」
「分かりました、行きましょう。皆さん」
そう言って全員がいなくなった。その後、俺は一人長距離連絡用の魔法石を起動してとある生徒を呼び出した。
「どういうことだ、ユミルス?」
『お久しぶりですわ、先生』
吸血鬼族の事実上の若き女王。そして、現在の魔王の腹心と呼べる魔王四天王の一人。そして、俺の第3期生の生徒だ。
「契約で魔族領の全種族は人間族の支配地域に進出することは出来ないはずだが?」
「はい、だからあくまで私の独断です」
「進出しなければ、攻撃出来ると?」
「攻撃じゃありません。あくまでも強くなりたいと願う後輩に力を貸しただけですわ」
「その被害が生徒一人の怪我に、一人生徒の魔力枯渇と悪魔契約の存在の露呈。割に合わないのだが?」
「先生、私言ったはずですわ」
「どうしてそんな弱い生徒を抱えるようになりましたの?」
心の底から悲しそうに、ユミルスは語る。
「私の先輩などその学園の、先生の校舎より設備の整っていない場所でも私の洗脳魔法などものともしませんわよ?」
「だからと言って、やっていい理由になるとでも」
「先生。あまり時間はありませんわよ。悠長なことをしているようでしたら、これからも私はこうして介入しますわよ。あくまでも先生の手助けのために」
「分かった。俺はそうならないようにしてやるさ」
「はい、期待しておりますわよ。では良い夜を」
連絡が終わり、声が聞こえなくなる。
「そんなに時間が無いのか」
俺は静かに息を吐いた。