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桑鷹三好の遊び場

第23話 最終試験前夜1

2024.03.15 17:51

「ああ、今日も疲れた」

「アルバン君なんだかおじさんみたいですよ。あと、体洗うのに使ったタオル湯船につけないでくださいよ」

「はあ、このお風呂も最後か」

 そう言って、アクモシスが風呂に入って来る。三人で使うにも十分すぎるほど大きな風呂は、時間ごとによって男女共用で使っている風呂だが個室にもシャワーがあるために実は普段使っていない。しかし、こんな豪勢なもの結局最後に使わないのはもったいないと男子で一緒に入ろうと呼んだのである。

「アクモシスは結構使っていたのか?」

「貧乏性かもしれないけれどさあ、風呂に入れるだけで時代を先取りした気分になっていたんだ。ゴドウィン先生によると、高位人間族ハイヒューマンは清潔にするために既に毎日風呂に入るのが当たり前の生活をしているみたいだけれど、帝都でさえもそんな文化ないし、正直一日中水をお湯にしていると考えたらエネルギーとか魔力がもったいないとか思うじゃん」

「まあなあ」

「貴族だって毎日こんな施設使っている人いませんよ」

「やっぱそうだよなあ」

 マルクスも入ってきて、男三人湯船でくつろぐ。

「だから、広瀬先生にこの風呂について聞いたら古代叡智で作られた古代遺物の一種で『尽きずの釜』っていう無限に水を貯めて、無限に水を出し続ける道具を使って運用しているらしいよ」

「それはまた贅沢な使い方ですね」

「水の無い国に売ればそれで大金手に入るのに、俺達の風呂に使う程度のそれでいいのか古代遺物アーティファクトって」

「まあ、個人的には調べさせてもらえるなら調べたい一品ではあるんですけれどね」

 アクモシスはそう言った。

「どういうことですか」

「そもそも、尽きずの釜から水がつきないで、僕達のお風呂に使われる程度の水を出し続ける仕組みってどうしてだと思う」

「ん? 仕組み?」

「古代遺物は仕掛けが分からないからこそ呼ばれるんじゃないんですか」

 マルクスがそう聞くと、アクモシスがニヒルに笑って答えた。

「これは僕の予想だしもう今は調べることは出来なくなっちゃったけど、きっとどこかの真水が溜まっている湖かはたまた海とかに釜の底が転移魔方で繋がっているんじゃないかな、だから釜に水を貯め続けることが出来る」

「その無限に転移魔法を起動し続ける仕掛けはどうやっているんだよ」

「そこが一番難しいんだけれど、可能性があるとしたら水や岩を魔力にしちゃう魔法だよね。つまり、転移魔法に触れている水を半分運ぶのと同時に、半分魔法の維持に使っているとか」

「理に適っているように一瞬聞こえるけれど」

「それどうやってやるんですか?」

「ナインちゃんにも聞いたけれど、途方もなく面倒な魔法式書かないといけないから実験には付き合わないよって言われちゃったんだ」

ナインが嫌がるなら俺達にはもう無理な話だ。

『何の話しているの?』

「あ、ナイン。今ちょうどお前、ってナイン⁉」

 裸のナインが風呂に入って来た。

「ナインさん! 今男湯の時間ですわよ!」

「セレアさんも! なんで男湯入って来るんですか⁉」

「私は不可抗力ですわ! それよりナインさんを止めてくださいまし!」

『嫌だ! 最後にアルバン君の背中流すの!』

「俺もう洗い終わっているよ! 背中流すのなんかとっくに終わっているわ!」

『じゃあ代わりに一緒に入る!』

「何を言っていますの⁉」

「一緒に入るじゃねえよ、出て行け!」