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桑鷹三好の遊び場

第27話 9期生最終試験3

2024.03.15 17:55

時は少し戻り、アルバンがナインを救出して離脱したタイミング。

「大丈夫でしょうか」

「でも行くしかないですわ。この後何が起きるか分からないのですから」

「転移魔法石まで距離三キロまであと少しです。少しでも稼ぎましょう」

 二人なら飛べば距離を詰めることは簡単だ。問題は自分達が徒歩でしか移動できないために距離を詰めるのに時間がかかるのと、飛んでいる二人は魔術人形ゴーレムの光線から逃げながらなのでいつまでもつか不安な事。

「そうはいかないな」

 その時だ、後ろからそう声が聞こえたのは。

「エボルド先生⁉」

「ありゃりゃ、俺の弟子はいないのか。だから魔術人形ゴーレムが空に向かって光線撃っているんだな」

 

 剣を構えたエボルド先生が明らかに自分達を見据えているのが。

「頼むよ、剣闘士だから流石に戦闘苦手な奴と戦うと圧勝しちゃうからな」

 そう言いながら、こちらに向かってきた。そして、上段から剣を振り下ろす。俺は咄嗟に防御用に渡されていた道具を展開することで剣を受け止めることにする。

「へえ、それがゴドウィンの言っていたバリアとかいう防御魔法を展開する道具か」

「大丈夫、マルクス君」

「はい、ありがとうございます」

「初撃じゃ倒せなかった。なら、威力上げさせてもらうぜ」

 その宣言通り、剣から炎が巻き起こったかと思えばバリアを切り裂こうと攻撃してくる。しかし。

「ありゃ、これ貫けないや」

「え」

「これ一応今出せる最高威力だから」

 少し困ったようにエボルド先生は言っているが、それは助かったと思う。このままバリアの中にいれば。

「じゃあ、耐久勝負に行こうか」

「え?」

「このまま俺が付与魔法エンチャントで攻撃し続けて魔力が切れるのと、そっちの道具が壊れるのとどっちが先か、耐久しようじゃないか」

 不味い、動けなくなった。

 一方セレアハート。

「エラ先生、どうして」

「気が付かなかったのか? 今回の試験の敵役は我々だぞ」

「だからって、どうして私たちで戦わないといけないのですか」

「まさかと思うが、お前は負けることを受け入れているのか」

「そんなこと!」

 剣を弾く。そして、手を前に掲げるだけで周囲に浮遊していた四本の剣が一斉にエラ先生に集まる。

「素晴らしい。確かに私は魔法が使えない。あるのは己の剣一筋だけ。だからこそこのような周囲から同時に攻撃されるのにめっぽう弱い」

「じゃあどうして!」

 

 どうして剣が一本も届いていないのか。防御魔法で封じられているのか。

「私は魔力が多いわりに魔法を扱う技術は全くなかった。だから魔法は全て魔剣や魔装に頼らないといけないが、逆に自分の任意に使う事が出来る。それこそ、自分の魔力を分け与えてこのように任意のタイミングで手足のように魔法を鎧に使うよう指示することも出来る。言葉通りの意味で、この装備は私の相棒なんだ」

「その鎧が魔装で、その使える魔法は周囲に防御魔法を展開する。そう言う事ですの」

「ああ、本来はこんなに長時間使えないし、魔力も大食らいなんだがな」

 そして、四本の剣を全て封じながら彼女は前進する。

「もっと見せてくれ、それこそ剣技と魔法を同時に行使しないと私を倒すには届かないのではないかね」

「先生」

「剣一本で成り上がった私を倒すには少し足りないようだ。確かに私にないものを持っているが不足しているな。残念だ」

 攻撃が来る。そう思った時である。

『セレアちゃん後ろに逃げて!』

 空からテレパシーの声が聞こえたのは。そしてナインちゃんが何か魔法を使おうとしていたのは。

「!」

「逃げないでくれセレア! まだ私は……」

 その言葉は続かなかった。エラの剣を、鎧を、無数の鎖が巻き付いてからめとっていたためだ。防御魔法が切れた一瞬の隙をついた形だ。

「む、動けないな」

『セレアちゃん! 次その辺の石に魔力を乗せて魔術人形ゴーレムを攻撃して!』

「ですが! それではダメージなど」

『いいから!』

「どうなっても知りませんわよ!」

 そう言うと、セレアちゃんは魔剣の魔法を行使して後方で足止めを食らっていた魔術人形ゴーレムに攻撃する。正確には、魔剣の魔力を一部その辺の石に譲渡して攻撃した形だ。

『次。石を魔術人形ゴーレムの中心に集めて!』

「これでどうしますの」

『魔術人形ゴーレムがこれで同士討ちしてくれるなら』

その時だ、魔術人形ゴーレムたちが強力な光線を魔術人形ゴーレムたち同士に撃ち合ったのは。

「自滅しましたわ」

『次! アルバン君はアクモシス君たちの方に行って!』

「分かった」

『セレアちゃん! 二人でエラ先生を止めるよ』

「ええ、分かりましたわ」

「そうか、二人がかりか。さあ、止めて見せろ」