Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

読書感想文 『二十二分間の予言』 笹帽子(著)

2018.11.15 13:57

 火星と地球の距離は約4億㎞(遠点)。光の速さでも22分かかる。すなわち通信は最大22分のタイムラグが発生する。火星に住み始めた人たちとの通信を円滑にするために、事前に通信内容を予言する情報予言知能ヨミが開発された。そのヨミが突如、火星が太陽系外の知性から攻撃を受けると予知した。

 日常生活ではほとんど意識することはありませんが、宇宙スケールでは情報通信の遅延が問題になります。本作では、ビッグデータから導かれる予知技術がその解決策になっています。これはとてもおもしろい発想だと思いました。

 実はわたしたち人間もごく短時間の予知をしながら行動をしています。予測と言ったほうがいいでしょうか。相手がどんな反応をするか予測しながら会話をしていることは実感としてあるでしょうし、動くものを見るときもその規則性を学習して次にどう動くか予測しているのも体験していることでしょう。ディープラーニングでもそれが再現され始めていて、ある画像がコンマ何秒後にはどんな画像になるか予測することができるという研究もあります。

 経験的な予測ではなく、数学的に正確に予測するためにはカオス理論が必要になりますが、将来カオス理論が確立されて膨大な情報が処理できるようになってくれば、この本が予言するように数十分後の正確な予知も可能になってくるのかもしれませんね。

 ストーリーは難しい理論説明などはない平易なもので、誰でもわかり易くて楽しめるSF小説でした。人工知能ヨミも美少女として描かれ、さらに冗談を言ってみたり道化たことをしてみたりと軽いノリもあって、ライトノベルのような気楽さで読めました。終盤は少しシリアスになってきますが、重くなりすぎずで良かったです。

 残念なのは短いこと。あっという間に読み終えてしまいました。次はもっと本格的な長編を読んでみたいです。