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桑鷹三好の遊び場

第17話 屋敷に突入する

2024.03.16 05:45

「それで、場所は此処で良いのか」

「ああ、そうらしい」

 装備を揃えた俺達が向かったのはとある廃屋である。廃屋と言っても昔は名家が住んでいたのだろうと分かる屋敷で、緑色の草が蔓を伸ばしている姿から手入れがなされていないのはあるが敷地自体はかなりの広さがある。

「ボスのためにここにいる敵を倒せばいいんだよな」

「相手は事前情報によると淫魔のような種族であると情報が出回っていました」

 ナエシエの言葉に、守護獣の少女がそのように語る。

「それってさ、私達はともかく」

 海良は大丈夫なの? パムラは素直にそう聞いたが、そこはテノサが補足する。

「正直何もできないと思うぞ。仮に相手が女性に対して影響する淫魔なら私達を流石に差し向けないと思うし」

「それなら良いけれど」

「行こう、ここで立ち止まっていても仕方ない」

 そう言って、俺は屋敷の扉を開けた。閉まりが悪くなったのか、上手く開かない扉は中途半端な状態で完全には開かない状態になったので全員で何とか頑張りながら屋敷に入る。マニュエチなんか大きな体をどうにか通して大変そうだった。

 そして、全員が屋敷に入った時。

「ようこそー! ミルミちゃんのダンジョンに!」

 そんな陽気な声が空中から聞こえてきたという。

「おまえが淫魔の討伐対象」

「ちょっと? 淫魔じゃなくって『解読中』って言ってね? それじゃあ雄か雌か両性具有か分からないでしょ? 私はメスだから『解読中』なの!」

 性別として両性具有が選択肢にあるのは流石としか言いようがない。

「とりあえず、先制攻撃あるのみ!」

 ナエシエが空飛ぶ相手に攻撃しようとした。その強力な脚力からの勢いを利用したパンチは命中した……ようにみえたがそうではないらしい。

「幻覚……」

『ようこそ……私の幻覚の世界へ!』

 そう言って、敵が消えた瞬間に床が大きく開いて穴に皆が落ちて行く。

「きゃあああああああ!」

「おい! 別の穴に落ちて行くぞ!」

「後で合流ですね、守護番殿」

 奴隷たちの悲鳴、困惑、それが広がるとともに穴に吸い込まれた俺達は別々に道を探さざるを得なくなった。

【パムラの回想】

 少女が森を歩いていた。少女は当時とてもやんちゃで、村の衆を困らせていた。その日も、少女は森の中へ無断で入っていた。しかし、不運が襲った。

『いや、なに⁉』

『グゲエ』

『なんで⁉ なんで『チンチン』なんかだしているの⁉ イヤ』

『グゲエエエ!』

『いや! やだ! やだ!』

『離れろ! この化け物が!』

 村の男がやってきて化け物に武器を振るう。その男は少女の父親だった。

『パパ……パパ!』

『大丈夫か、パムラ。無事でよかった』

 少女が父親に強く抱かれる姿を、服が破かれボロボロになった幼女が父親に隠すように抱かれるのを当事者の少女は皆に見られていた。

「パムラ……あれは君なのか」

「うん。そうだよ」

「じゃあ、まさかあんな子供の時に魔物に」

「それは違う。処女は守っているよ。本当だよ……村の人はみんな信じてくれなかったけれど」

 彼女に村の人が優しくする理由、それは「彼女がかわいそうな子供」だから。小さいのに村の掟を破った結果、魔物に襲われて汚された子供。だからこそ彼女は「村人と距離をとり好きになれなくなった」のだ。だからこそ語った。

「海良には言わないで。このことを知らないから……もしかしたら私の事奇麗な目で見てくれる人かもしれないから」

「パムラさん……」

 魔法使いも、発明好きな少女も、高身長だが臆病な奴隷も、皆が皆その光景に何も言えなくなった。

【メルビー視点】

「事と次第によってはあなたを殺します……メルビー」

 少女は一人の少女に弓を向けていた。弓には魔法がかけられて、至近距離から放たれようものならまず間違いなく頭を貫通するのは容易だと予想される。だというのに、弓矢を向けられる少女は何も感じていなさそうである。

「何やこれ、どういう事や」

「王様……死んでいるのね?」

「そんな馬鹿な話ある訳ないじゃないですか。何せ、まだ『国王の死亡は公表されていない』のですよ?」

「その言い方は『死亡しているのは知っている』と捉えてよいのですか」

「はい、国王は既に『死亡しています』」

「じゃあ犯人は誰や! 明らかにそのベッドの上で短剣首に突き刺している犯人はあん……」

「しー。不用意な発言は不敬罪になりますよ、ベリメさん? どう見たって服装は国王様が何処かから連れて来た娼婦ではないですか?」

 少女は最後の一言を喋らせないようにする。しかし彼女たちは気がついていた。

「あの長い髪を、あの顔を見間違える訳がないね。あれは明らかに」

「私だと?」

 王女はそう確認した。だが、彼女はひたすらに冷徹だった。

「これ自体が相手の手の内だという可能性は? 記憶を改竄されている可能性は? いくらでも可能性はあります。何せ相手はこんな嫌な幻覚を見せる相手ですよ」

「違う! これは……」

「幻覚です。さあ、気にしないで進みましょう」

 何者かのベッドの上で倒れる死体と、見覚えのある黒とピンクの服装に着替えた少女が扉を開けて人を呼ぶ声。そんな「誰がどう見ても犯人は誰か分かる光景」を無視して、少女たちは先を急ぐのだった。

【海良視点】

 

「何しているんだろう俺」

 一人だけはぐれた彼は、おしっこをしていた。しかもその辺に。