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桑鷹三好の遊び場

第24話 工事の状況2

2024.03.16 05:50

「おい! 何をやっている!」

 俺が慌てて駆けつけると、そこでは男たちに囲まれながら争っている二人がいた。

「きゃはは! すごーい! あと少しで当たるね!」

「守護番殿を愚弄した罪は償わせます」

「いいぞ! もっとやれ!」

「おら! 淫魔ごときに逃げられてばかりだぞ!」

 囲う男たちは村に来ている人や、村で元々働いていた人を含めて多数の労働者たち。そんな人たちが仕事を昼からしないで飲み食いしながら二人の争いを見ていた。

「『服従』」

 そこで、俺は二人に対して魔法を使うとそこで動きの止まった二人に「どうした?」「まだ終わってないぞ!」なんてヤジを飛ばす奴らを振り切って二人の前に行く。

「何をやっている! 俺はお前達が争う様に言った覚えはないぞ」

「申し訳ありません。守護番殿に対して酷いことを言う彼女に対して怒りを覚えまして」

「だって、この人たちが精液くれるって言うんだもん。少しくらい酷いこと言っても良いじゃない」

 どういうことだ? そんな風に周囲の男たちに確認をすると、全員が俺達知らない、分からない。そんな風に視線を合わせようとしなかった。

「お前達、給料をちゃんと払っているのにどうして働かない、責任者は」

「俺だ」

 そう言って、一人の男性が前に出てくる。

「パパ!」

「え?」

「お前か。パムラと仲良くしている男でありながら沢山の女を囲っている不届き者は」

「パパ! そんな言い方ないでしょう!」

「事実だからか」

 開口一番そんな風に強い口調で敵対心を隠そうともしないで話してきたのはなんとパムラの父親だという男だった。そんな男に対してパムラは憤激しているがそれを見てミルミはおかしそうにしていた。

「ははーん、あんたがあのパムラちゃんのお父さんなんだ!」

「何だ、お前は」

「ミルミちゃんだよ。『解読中』って言う種族の魔族でーす」

「淫魔か」

「淫魔って言い方きらーい。男も女も区別しないじゃん」

「それでだ。お前はこいつを囲って何をする気だ。この俺達と仕事をする気のないこいつを」

「それは」

「はは! 言われてやんの!」

「黙れお前!」

 ナエシエが今にも怒りそうでいるため何とか落ち着かせようとしている間も、ミルミは一向に反省するそぶりを見せない。対立を煽るような様子をむしろ楽しんでいるようでさえあったという。

「お前は一体何をしているんだ。あちこちで女を捕まえて来て、それでいてこの半年の間に開拓ばかりさせられて、俺達は本来こんな仕事をしたくて村に戻ってきたわけではないぞ。何時になったら仕事は始まる」

「それはそもそもそれだけ大きな仕事だから!」

「パムラは黙っているんだ。今は工事を発案しているこいつと話をしている」

 領主を「こいつ」呼び、少なくとも悪徳領主の時でさえ村人たちも直接に言うのは絶対にしなかっただけにこの発言は相当相手に対して「敬意が無い」と言えるであろう。

「正直まだまだ開拓したい広さとしてはようやく『新しく雇い入れる商人や事業者』の居住区となる地域まで開拓できた程度だと言えます。これからは一旦家の建設に入ってもらうために出来る人はそちらに入ってもらいますが」

「出来ない奴はまだまだ開拓と」

 ふざけんなよー、どういうことだー、そんな憤懣が聞こえてくるのが正直村の工事について後回しにしていた付けであり、そして村人を襲う帝国の間者を招き入れてしまった失態の結果だと思うと甘んじて受け入れるにしても考えさせられるものだった。

「どうするの……」

「正直契約は時間給じゃないからこそ纏めて払うのは決まっている」

「ふん、しっかりやれよ」

 そう言って、男は働けお前達と号令をかけるのだった。

 それから1ヶ月が経った。

「どうするんだ。冒険者統治機構にも一向にミルミに関しての報告が出来ていないままだぞ」

「そうだよなあ。でも、せめてちゃんと働くという結果が伴うまでは下手に報告しようとするのは怖いんだよなあ」

「せやけれど、何時までもしないと依頼から生還はしたけれど失敗したって扱いになってしまうで。むしろ冒険者統治機構にしては生還したならいい加減報告上げろって」

「どうした……何の話をしている」

「皆さん辛気臭い顔をしていらっしゃいますわね。元気でないといけないだろーがよ」

 そこで、ワシュプトとイワミミが部屋に入って来る。

「ああ、実はミルミの方についてどうしようか困っていてな」

「ミルミ?」

「後は工事の人達についてもです」

「工事だ?」

 そう言って、勇者は一通りのことを話したという。すると……。

「そんなの、解決は簡単じゃないか」

「それ位任せろって!」

 ワシュプトとイワミミがそう言いだしたという。

「本当に方策があるのか?」

「あれ? あなた帝国の密偵だって人だよね?」

「良く知っているな……」

 ミルミとワシュプトはそう最初に切り出した。

「お前に確認したいことがある」

「何?」

「お前は何を隠している」

「ほぉん」

 その時の彼女は少しだけ面白そうに、その上で少しだけ興味ありげに口元をゆがめただろう。

「でもどうして思うのかな」

「まず……」

 それから、二人は何か話始めたという。

「そこまでばれるのキラーい。でもそうだよ。私は勇者が大っ嫌いなの」

「それでこそ、お前と協力をしたい」

「協力?」

「ああ、実はアラエに言われたんだ。あの男は特別な男だ、この世界には無い価値観を持っていてその上力もある、だからこそ服従を出来るだけして利用するのだと」

「ふうん。あんたはそれでいいの」

「ああ、帝国に対して復讐できるならなんでもな」

「良いよ。あの男に従うのは癪だけれど一緒にいてあげる」

 ここに、こうして最強のタッグが出来た。

「すげえじゃねえか! これがチェーンソーって言う魔道具か!」

 そう言いながら、木を切断するほどの風が発生する何か鉄の塊を抱えて木を切断する男たちは興奮していた。

「ふふふ、これは王国の都市部でも出回っていないような魔道具。何せイワミミ様の発明品だからな! ははは!」

 そんな様子を見ながら、女性陣たちは呆れ果てていた。

「あれが本当にちょっと前まで仕事をするのを嫌々だった者たちの姿かい?」

「どうしてあんな道具一つでコロコロ態度を変えられるのでしょう」

「多分自分達だけが知っている魔道具って響きが良いのだと思うね」

「でも、あれ一つで海良さんへの発言が直った訳にはならないですよね」

「多分そうだけどさあ、正直生産力は前より何倍も良くなったし、何でイワミミちゃんはあんな道具があることを黙っていたのか聞きたいよ」

 テノサ、アラエ、エティエト、マニュエチ、パムラがそれぞれそう語った。

 ちなみにイワミミの作ったチェーンソーだが、本来は金属製の刃で行うらしい道具だと海良は語っている。だが、それだと一番先端が物に当たると危険などの問題があるため、風魔法で先端も安全に配慮した工夫をするなどの対策をした特別性だという。

「工事は順調ですか」

「ああ、あのチェーンソーという道具は素晴らしいよ。他にも小型のチェーンソーなんかのおかげで木を切るのが簡単になって工事がしやすくなった」

 パムラのお父さんと話しながら、勇者はお茶を飲んでいた。

「ところで一つ聞いても良いですか」

「何だ」

「あなたが帝国のもう一人の密偵、正確には内通者という話は本当ですか」