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桑鷹三好の遊び場

第30話 議長との戦闘

2024.03.16 05:53

「あー嫌やな。なんでそんなに当たらんのや」

「あなたの動きは完全に『集団戦闘を想定されていない』動きです。出来るだけ一人で戦う事をお勧めいたします」

「何や。本当に見るだけで分かるみたいやな」

 ベリメとの戦闘をしながら、そんな風に議長は話をしていた。

「次にナエシエさん、そして番号の長い守護獣の方」

「何だ!」

「……」

「あなた方は特徴的に集団戦闘を想定された動きにとてもなっております。確かにナエシエさんは『解読中』の種族ですし狩りをするのに集団で魔物と戦う事も多かったでしょう。そして、守護獣の方はそもそも集団でないと守ることも出来ない物を守っていましたしね。ですが、まだまだ甘い。具体的には『海良さんとその仲間と戦う』様になっていない」

「五月蠅い!」

「こうして、あなたは素早さで翻弄をしようとしているのですが、おかげでベリメさんがナイフを投げるタイミングや守護獣の方が弓を射るタイミングが無くなっております」

「完全に弱点を読まれていますね」

「そして何よりひどいのは……メルビー王女とまだ戦闘に参加していない方!」

「……はい」

「なに?」

「何ね」

「は、はい」

「私もか」

「そりゃそうだな」

「はい」

「何じゃ」

 メルビー、ミルミ、エティエト、マニュエチ、テノサ、トプシュワ、アラエ、アレイン、この全員に対して話が飛躍する。

「まずメルビー王女の采配なのか知りませんが『私に対してどうしてそれだけの人数を使わないで戦う』のですか? そんなに他の人を巻き込んでしまうような戦闘しか出来ない人たちですか? そんなに集団戦闘が苦手な人たちばかりですか? 準備不足も良い所じゃないですか?」

「はい」

「そして、メルビー王女の攻撃は天秤が傾くことにより攻撃の頻度を可視化して傾いた分だけ攻撃を無効化する物でしたよね」

「はい」

「どうしてもっと有効活用をしないのです?」

「有効活用ですか?」

「私は今もこうして、戦闘をしながらでもあなた方と話を出来る程度に余裕のある状態です。そんな相手に出し惜しみをしているだけかなと思えばどうも違うらしい。あなたは単純にその道具の使い方、もっと有効的な使い方を知らないだけです」

「相手からの攻撃を受けないと天秤は傾きません。そんな使い方があるのですか」

 メルビーはこの問答の中で何を言われているのかよく分かっていなかった。攻撃を受けないと天秤は傾かないのに、天秤の使い方を分かっていないと言われる。その真意とはいったいどこにあるのか。

「仕方ないのう。儂も戦闘に混ぜさせてもらうぞ」

 そう言って、アレインが刀を抜刀する。

「居合、それも抜刀しながら斬るのですか」

「素晴らしいじゃろう、知っておるお主には効かなかったがこの国の者達はどうも知らぬ空け者ばかりじゃからとても効果的じゃったぞ」

 初めて見た。居合切り。それは、言葉に出せない程に美しかった。俺が言葉で無理やり封じたからこそ見ることが出来なかった。そしてその言葉を今敵によって封じられたからこそ、今仲間としてアレインの技を見ることが出来た。

「しかし惜しいですね。あなたの刀の技術は独学が過ぎる。確かに戦闘をメインに、それも多人数や魔物などの戦闘さえ念頭に置いた無数の構えと派生する数手先まで見通すその汎用性の高さは驚くべき境地に至ると言えるでしょう」

「ふふん。分かっているのう、雑魚にしては」

「私を雑魚と侮るのは良いですが」

「グフッ」

「このように、そもそも極端に人間との戦闘において刀を持たない相手、より正確にいえば刃物を持たない相手と盾を持つ相手もですかね。この辺への適性が極端に低い」

「何を知ったような口ぶりを」

「知っていますとも。あなたの友が帝国に囚われていることも。その友が案外種族総出で近くにいることも。そしてその手掛かりを持っているかもしれないと思って海良の街を訪れた事も」

 友? そして帝国に囚われている?

「何の話じゃ」

「本当に知らないのですか? そこのトプシュワは偽名。本名はメジョルメ・ジョルジュワですよ」

「メジョルメじゃと!」

 そこで、勝負さえ放棄してトプシュワ……いや、メジョルメにアレインは近寄って話を聞く。

「おい! メジョルメなのか。あの生意気だったが家族思いだったメジョルメなのか」

「……アレインって名前からまさかと思っていた。だけど、本当みたいだね」

「そうか……やっと会えた」

「え? 何この空気。突然訳わかんないこと始められても」

「しっ、今は黙っていて」

 ミルミが何か空気が読めなくてパムラに怒られる。しかし自分も正直な事を言えばそこは同じ思いだ。どうしてここでそんな何かよく分からないが大事なことを始めているみたいな雰囲気を出すのか。そして何より……。

「攻撃開始!」

「おい! 何してんだ!」

 イワミミ! そう言うより早くイワミミの操る機械が攻撃をしてビームのような何かがガーリッシュさんの額めがけて撃たれる。しかしそれを何時用意したのか魔法で弾かれる。

「何してんのお前! そして何時からそこにいた」

「よし、今ので完全に予測できたぞ」

「何がだよ!」

「あの議長の魔法のからくりだよ」

 何だって!

「何時までも俺達、正確には敵の動きを読み続ける、知っているかのように弱点を言い当てられ続ける事。そして俺達にもアレインが話していない秘密を知っている事。何より、敵は自然光による魔法じゃない光の攻撃を弾ききったことだ」

「どういう事でしょうか」

「お前達は知らないかもしれないが、光って本来滅茶苦茶早いんだ。光魔法が人間でも知覚できる速度で発射されるから違和感あるかもしれないが」

「いや、知覚できると言っても一番高速な魔法は雷魔法と光魔法どちらと言われるくらい速くて」

「そりゃそうだ。雷だって空から地上まで一瞬で動く速度で移動しているからな。だが光は私の計算が合っていれば『惑星を一瞬で何週も出来る』速度だ。体感では『目に見えるけれど両方速い』程度の違いだから分からなくても、光魔法に軍配が上がるはずだ」

 この時彼女はこのように発言したようである。どうして既にこの時に彼女はこの考察に行きついていたのかは、今でも議論に上がる話題である。

「だからこそ言える。光は『人間の目に見えた時にはとっくに到達している』はずなんだ、魔法ならな」

「魔法なら」

「じゃあお前は」

「ああ、自然光で失明を狙った。なのに失敗した。要するにその攻撃を事前に知っていたとしか思えない」

「じゃあその魔法は」

「予知魔法ですよ」

 まるで正解だと言わんばかりに議長が答えを言う。予め、こうなることが分かっていたかのように。

「その通り、私の魔法は予知魔法。死角を突いて移動することも、敵の弱点を予め知って対策することも容易です。例え、視覚阻害魔法を発生させる装置を使ったカモフラージュをしていたとしてもね」

「私の発明品をそうやって種明かしされるの不愉快ですわ」

 本当に不愉快なんだろうなって表情でイワミミが笑顔を張り付けて答える。

「でもどうしましょう。肝心の皆さんの弱点を既に知られていては……なんて言うと思いましたか」

「それは」

「私の役割はあなたの魔法を当てる事。これで良いのですよね。メルビーさん」

「はい。これで思う存分、まだ戦ってもらっていない他の人たちを使えます」

 そう言うと、まだ戦っていなかった人たちもアップを始める。

「良いでしょう。思う存分来てください。これでこそ、勇者に集う仲間たちの力と言える……」

「この馬鹿パパが!」

 ゴンッ!

「いたっ! え! なんでお前が」

「パパ! どうして戦っているの! 説明して」

 ええ……誰か入って来たけれど……誰? その時海良陣営の人たちは皆がそう思ったと言う。